のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

霧の橋 / 乙川優三郎

2005年07月05日 01時10分51秒 | 読書歴
■ストーリ
 刀を捨て、紅を扱う紅屋の主人となった
 惣兵衛だが、大店の陰謀、父親の仇の出現を
 契機に武士魂が蘇った。妻は夫が武士に
 戻ってしまうのではと不安を感じ、
 心のすれ違いに思い悩む。

■感想 ☆☆☆☆
 先日、読んだ「喜知次」を貸してくださった先輩に
 「最後が辛すぎました・・・。」
 と訴えたところ、
 「これは辛くないから。」
 と貸してくださった作品。ご配慮に感謝です。

 お勧めどおり、最後は爽やかな終わり方で
 人と人との関係の基盤はやはり「信頼」なのだと
 気持ちよく納得できる作品だった。
 江戸時代を舞台としていながら、現代に置き換えても
 通用するような手に汗を握る物語。スリリングな展開と
 ラストの爽快な終わり方に、日常の憂さを晴らすことが
 できた。また、お互いを必要としていながら
 心がすれちがっていく夫婦が、霧の晴れた朝に再び
 出会うラストシーンはしっとりとした情緒にあふれていて、
 日本人の「情愛」という感情を思い出させてくれた。

 夫婦に限らず、人間同士のつながりは
 すれ違ったりからまったりを繰り返しながら
 そのからまりをほぐしたり、見失ったものを探したりして
 何度も何度も構築することで強くしていくものなんだろう。

 疲れたときに読みたい作品。