のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

猫の名前 / 草野たき

2006年02月23日 23時23分58秒 | 読書歴
■ストーリ
 あなたに、味方は、いる?
 中三の佳苗は先生から不登校の春名に会いにいってほしいと頼まれる。
 春名は佳苗に復讐したいと言う。理由がわからない佳苗は
 とまどうばかりなのだが。
 「たとえばさ、もう生きるのがイヤになりました。
  私が死ぬのは奥村さんのせいですっていう遺書を残して
  ここの屋上から飛び降りれば、奥村さんの人生、変わっちゃうよね。」

■感想 ☆☆
 馬鹿なことを言い合える親友がいて、
 利用できる大人のお隣さんがいて
 テストもそこそこできて、たまにはちょっぴり夜遊びして
 いい子ちゃんもなく、劣等生でもない毎日を楽しんでいる佳苗。

 小器用に毎日を楽しむ佳苗は「今」の子たちの
 願望なのだと思う。とびっきりいい子はダサい。
 でも、先生から目をつけられるような「できない子」もダサい。
 そこそこ頭いいのに、ちゃんと悪いことして遊んでる。
 そんな生活を目指している佳苗。
 そのためにはお隣の大人も利用する。

 けれども、自分のせいで自殺したという同級生が現れて
 少しずつ少しずつ今の生活が、というよりも
 今まで築いてきた「自分らしい自分」が崩れていく。

 親友と思っていた子には
 「いても邪魔にならない子だと思っていたのに。」
 と言われ、距離を置かれるようになる。
 利用してきたはずのお隣さんは、佳苗を束縛しようと
 し始める。その上、自殺しようとした「いけてない」
 同級生と友達ごっこをしなければいけなくなる。

 少しずつ募るいらいら。
 少しずつ見えてくる「本当の自分」。
 寂しがりやで甘えんぼで自分を必要としてくれる
 存在が欲しくてたまらなかった自分。

 人は自分にとって都合の悪いことは
 あっさりと忘れることができる。
 自分が見たくない現実から簡単に目をそらすことができる。
 そうやって生きていかないと簡単に壊れてしまう。
 それぐらいもろいのが人間なんだろう。
 そして、男性より女性のほうが
 そういったエゴと戦う割合が多いのだと思う。
 女性のほうがそういったどろどろを内面に
 多く抱えているんだと思う。

 基本的に男性は自分のことが好きだから
 女性ほど「人からの評価」を気にしないし
 そういったどろどろを内側に溜め込むこともない。
 女性は「自分だけの評価」や「自分だけの世界」では不安なのだ。
 自分のことを無条件で好きにはなれないのだと思う。
 だから男性とは違った形で「親友」や「友達」を
 必要とするのだろう。

 なんだか主人公のずるさや甘えが
 ものすごく心当たりがあって気まずいような
 甘酸っぱいような気持ちになる物語だった。 

樹上のゆりかご / 荻原規子

2006年02月23日 22時53分22秒 | 読書歴
■ストーリ
 男子校のバンカラの伝統が残る都立辰川高校に入学した
 上田ヒロミは、女子を疎外する居心地の悪さを学校生活の中で
 感じるようになっていた。そんな折、合唱コンクールで
 指揮をしたカリスマ女生徒が出現し、次々と事件が。

■感想 ☆☆☆☆☆
 高校という特別な空間を懐かしく思い出した。
 卒業後、高校を訪れて初めて分かった
 あの部外者の存在を目立たせる高校特有の雰囲気。
 「うちら」という特別の空間。
 私にとってとても居心地がよかったあの空間。
 そういう独特の雰囲気にふわりと包み込まれるような感覚を
 味わいながら読み進めた。

 中心で騒ぐことも同級生の男子にオンナノコ扱いされることも
 まして、彼らと仲間のように仲良くしゃべることも
 どれも違和感を感じて素直にできず、
 自らの内面の世界に入りがちな少女ひろみ。
 彼女は様々なコンプレックスを感じていて
 自分自身を客観的に正当に評価できないでいる。
 だから「生徒会」という特別な空間で
 自分ひとりが浮いている、という思いを抱え、
 女性として褒められても嫌味と捉えてしまう。
 告白をされても、それを素直に受け止めることができない。
 ちょっぴり屈折しているオンナノコ。
 しかし、その屈折はあくまでも思春期特有のもので
 限りなく健全なオンナノコである。

 存在感が薄い彼女が抱える屈折がごくごく健全で
 誰もが一度は持ったことがあるに違いないものだから
 彼女の周囲の女性ふたりの正反対の壊れ方、こもりかたが際立つ。

 姿かたちも性格も少年らしさをかもし出す夢乃と
 年齢以上の妖艶さをかもしだす美少女有理。
 何もかもが正反対の彼女たちが同じ少年に惹かれ
 異なるアプローチでこちらを向いてもらおうともがく。
 仲間として傍にいるうちに自分を特別な女性として
 見てくれるようになるのではないか、と望む夢乃。
 あくまでも「女性として」自分だけを見てもらうために
 手段を選ばない有理。

 いや、「正反対」ではない。
 彼女たちはどこまでも女性らしく、したたかで強く、
 そしてもろい、という点でとてもよく似ているのだと思う。
 だから夢乃は有理が手段を選んでいないこと
 振り向いてもらうために精一杯もがいていることに
 誰よりも早く気がついた。

 彼女たちと対極にいたのは、やはり主人公ひろみなのだろう。
 もっとも影がうすい少女。
 主人公なのにも関わらず、常に蚊帳の外にいる少女。
 自分が女性であることに未だ戸惑い続け
 「少女」のゆりかごの中で揺られ続けている彼女は
 夢乃や有理と過ごし、話し、少しずつ自分自身の
 女性部分に気がつき始める。
 ゆりかごの中で背伸びをし始める。そこから抜け出るために。

 そもそも高校自体が大きな大きなゆりかごなのだろう。
 いずれは、社会に出ていかなければいけない子供たちを
 中にいれ、守ってくれ、甘やかしてくれる最後の入れ物。

 そこで私たちは少しずつ外の世界を覗き
 自分たちがそこから出て行くための心の準備をする。
 ひろみが今までの自分からほんの少し変わっていくことを
 予感させるラストは清清しく、微笑ましい。

 読み終わって知ったのだが、
 この作品は「これは王国のかぎ」という作品の続編なんだそう。
 前作は思いっきりファンタジーで
 まったくテイストが異なる作品のようだ。
 とはいえ、気になる。くっそう、図書館で探し出してやる。

サワコの和 / 阿川佐和子

2006年02月23日 22時17分52秒 | 読書歴
■内容
 まったく日本には腹が立つ。なのに歳を重ねるにつれて、
 じわじわ好きになる。日本の行事やアメリカ滞在を通じて感じた
 祖国への微妙な「愛」を綴るエッセイ。

■感想  ☆☆☆
 日本が好きだ。日本人も好き。
 外国への憧れは勿論ある。
 ドイツの環境保護に対する姿勢も
 イギリスの合理的な生活にも
 カナダのプリンスエドワード島の豊かな自然も
 どれも心から尊敬してるし、羨ましいと思うことも多い。

 けれども日本以外の国に住むつもりは毛頭ない。
 それぐらい日本が好きだ。
 勿論、佐和子さんがエッセイで語っているように
 「きーっ!」と苛苛することも多い。
 小さい頃、大人になっても絶対に口にするまいと決めていた
 「最近の日本ときたら」とか「近頃の若者は」
 と思うことも増えてきた。

 それでも日本が好きなのは
 私自身が典型的な日本人だからだろう。
 だから日本人の嫌なところ、ダメだと言われているところも
 ついつい「そこが日本人らしさだから。」と
 あまい目で見てしまう。

 だから、私はこれからも「日本人らしさ」にこだわりたい。
 日本の伝統行事や日本の文学を日本の食べ物
 様々な知識を吸収して、次世代に伝えられる人になりたい。

 そういう気持ちを佐和子さんは
 ユーモアと知性あふれる文章でまとめている。
 文章には人柄が表れるなぁとまたもやしみじみ思った。 

読書のスタイル

2006年02月23日 22時01分09秒 | 読書歴
立て続けに本を読み終えた。
高校時代からだろうか。
なぜか読む本を一冊に絞れずにいる。

小さい頃はその本の世界にどっぷりと浸って
息もつかずにはまりこんで読んでいたというのに。
今は常に数冊、読みかけの本がある状態である。

それは、読書の時間が限られているからかもしれない。
色々な本を読みたいから
たくさんの本を読みたいから
常に次に読む本のことを考えているから
だから、ついつい並行して読んでしまうのかもしれない。

かくも多く読みたい本がある、という状況は幸せだ。
けれど、やはりちびっ子時代の
あのどっぷりと本の世界に浸っていた時間を
懐かしく思い出すのだ。



というわけで、しばらく読書感想が続きます。