のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

セーラー服と機関銃・その後~卒業~

2006年12月16日 23時47分58秒 | 読書歴
■ストーリ
 18歳、高校三年生になった星泉。高校卒業を間近に備え、
 できるだけ普通の女子高生として生活したいと願っている。
 しかし、星泉の名を騙る「偽者」が現れたり、強引な
 地上げに苦しむ街から「街を救ってほしい」と頼まれたり
 周囲が落ち着かない日々を送っている。
 「セーラー服と機関銃」の続編。

■感想 ☆☆*
 長澤まさみ版のドラマを見、薬師丸博子版の映画を見、
 残るは赤川次郎版の原作を読むだけだ、と思い
 図書館で探したところ、続編しか見つけることができず
 手に取った。
 毎度毎度の赤川節でさっくりと読める作品だ。

 しかし、意外にもドラマ版との違和感はあまりなかった。
 私の頭の中では、ドラマ版の武さんや星泉で、
 このお話も再現されていたが、ぴったりと
 合っていたように思う。ドラマ版はコミカルな部分も
 多かったため、赤川作品と似通っている部分があるのかも
 しれない。そういう意味では、映画版は小説の設定を
 借りているものの、まったく異なる作品と
 言い切っていいのだと思う。

 組をたたんで、普通の女子高生に戻った星泉だが
 生まれついての気質なのか、親分を経験したためなのか
 常に「他人のために」動く。
 困っている人を放っておくことができない。
 自分よりも周囲を優先し、腹にぐっと力を入れて
 ひとりで困難に立ち向かっていく。
 しびれるようなかっこよさだった。
 単純でいつも似たような話ばかりの赤川作品だけれど
 常にヒロインは「正しいこと」「人の道をはずれないこと」
 を追い求める。自分にとっての損得では動かない。
 その明るさ、まっすぐさが、多くの人に
 読み継がれている赤川作品の魅力の真髄なのだと思う。
 水戸黄門のように安心して読むことができる作品。
 だから疲れると、私は赤川作品に戻ってくるのだ。

ピアノ調律師/ゴフスタイン

2006年12月16日 23時30分58秒 | 読書歴
■ストーリ
 デビー・ワインストックは、活発でがんばり屋さんの女の子。
 彼女にとって、おじいさんがピアノを調律する音は、他の
 どんな音楽よりも最高に美しい音楽。デビーのおじいさん
 ルーベン・ワインストックは世界一のピアノ調律師。
 仕事に厳しく、そしてデビーをとても愛している
 素晴らしい人だ。デビーは、おじいさんのような調律師に
 なりたいのだ。

■感想 ☆☆☆☆
 M.B.ゴフスタインの絵が好きだ。シンプルな線、陰影がまったく
 ない童話のような作風は見るたびに心がほっこりと暖かくなる。
 彼の作品は絵もお話もごくごくシンプルだ。くどくどと
 語りすぎるということがない。それはこの作品も同じだ。
 しかし、そのシンプルで空白の多い絵の中に、
 子どもならではの純粋な喜びや大人にとっての幸福
 そして子どもだからという理由で叶わないことに対する哀しみ
 子どもを思うが故の焦燥がきちんと描かれている。
 どの感情も愛情の上に成立していて、だから
 彼の絵を見ていると、彼の言葉を読んでいると
 それだけで穏やかな気持ちになるのだ。

 ちびっこに読んで聞かせたい作品のひとつだ。

魔法があるなら/アレックス・シアラー

2006年12月16日 23時24分16秒 | 読書歴
■ストーリ
 世界でいちばん素敵な「スコットレーズ・デパート」の時計が
 6時をさしたとき、だれも想像できない冒険がはじまる。
 スコットレーズ・デパートは、歩いても歩いても終わりがないほど
 巨大な高級デパート。お菓子も飲み物も、ダイヤモンドも玩具も
 何だって揃っている。主人公リビーも妹もママもスコットレーズで
 何も買ったことはない。たった一本の鉛筆さえも。スコットレーズ
 で1本鉛筆を買ったら、他のお店では10本は買えるから。
 リビーたちはお金がないのだ。そして、ある日、住むところも
 なくなってしまって、ママは「今日はここに泊まりましょう」
 と宣言する。なんとスコットレーズに!

■感想 ☆☆☆*
 小さい頃、NHKのみんなの歌で流れていて好きだった歌に
 「メトロポリタン美術館」というものがある。大貫妙子さんの
 やわらかい声と童話のような人形劇風アニメーションが
 曲調と合っていて、未だにふと口ずさむことがある。
 この曲は児童文学の古典「クローディアの家出」を
 思いながら作られた歌だということを後から知った。
 それ以来、その「クローディアの家出」は読んでみたいと
 思いつつ、手がつけられていないままでいる。
 「お勧めの児童書」特集があると必ず誰かが挙げているため
 あらすじもほとんど知っているにも関わらず、だ。

 今回、アレックス・シアラーの本を読んで、すぐに
 「クローディアの家出」を思い出した。
 美術館ではなく、デパートだが、生活に困らない家出、
 というテーマに似たものを感じたからだ。
 しかし、リビーたちは「家出」ではない。自分たちが望んで
 飛び出してきたわけではなく、追い出されたのだ。
 すむところがなくて、デパートに逃げ込んできたのだ。
 よって、母親も一緒。なのに、悲壮感がまったくない。
 妹はデパート生活を楽しんでいるし、母親も「悪いことは
 していない。」と開き直っている。あまつさえ、デパート内で
 友人まで作ってしまう。 
 たったひとり、心配性のリビーだけが将来を憂い
 明日のことを考え、心臓に悪い毎日を送る。

 少し考えなしで、でも子供たちへの愛情はたっぷりと
 ある母親と、そんな母親の欠点を認めながらも
 信頼と愛情を寄せている娘。この構造がとても暖かい。

 デパート生活は長くは続かない。
 思わぬ理由でその生活にピリオドが打たれる。
 その結末に心が温かくなることうけあいだ。
 原題は「世界で一番素敵な場所」だそう。
 そちらの題名のほうがこの作品にぴったりだと思う。