のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

オチケン!/大倉崇裕

2008年06月26日 00時00分38秒 | 読書歴
47.オチケン/大倉崇裕
■ストーリ
 大学に入学して早々、廃部の危機に瀕した落語研究会に入部する
 はめになった越智健一。勝手な先輩たちに振り回され、ろくに
 授業も出られず、そのうえキャンパスで奇妙な事件が起きて。
 中篇2篇を収録した連作落語ミステリー。

■感想 ☆☆☆
 小学校時代、何を思ったのか「日本の落語集」や「日本の笑い話」
 を借りては読んでいたものの、最近は北村薫さんの「円紫師匠と
 私」シリーズ以外では、めっきり落語に触れることがなくなった。
 そんな状況だからこそ、最近の落語ブームは、落語に触れる
 機会を増やしてくれて、素直に嬉しい。

 大倉さんは北村さんと同じく、最近の落語ブームの前から
 落語とミステリーを関連付けた作品を書き続けていた作家さんだ。
 そんな大倉さんが「ヤングアダルトミステリー」として
 若者向け、そして落語初心者向けに出した作品。
 落語の入門書も兼ねているらしく、登場する落語は「寿限無」や
 「時そば」「長屋の花見」「どうらんの幸助」など、有名どころ
 ばかり。タイトルを聞いて知らないと思った人も、話を聞くと
 「聞いたことがある。」と思う人が多いのではないかと
 思われるセレクトだ。
 そんな「聞いたことがある」落語と、日常のちょっとした謎を
 絡めて、落語をより一層身近なものにしていく。

 頭が疲れて、小難しいものは読みたくないな、というときに
 お勧め。さくさく読めて、くすりと笑えて、読み終わった後に
 元気になる。そんな作品だ。
 正体不明の岸先輩は、倉知淳さんの猫丸先輩を思い出させる
 飄々とした人柄で魅力的。けれども、猫丸先輩ほど常識がない
 人物ではなく、人間味や温かみを感じさせる。
 ぜひ、シリーズ化してほしい。

 巻末の落語とミステリーに関するエッセイも面白かった。