のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

雷桜/2010年日本

2010年11月02日 23時03分30秒 | 映画鑑賞
35.雷桜/2010年日本

■監督:廣木隆一
■脚本:田中幸子、加藤正人
■原作:宇江佐真理
■出演
 岡田将生、蒼井優、小出恵介、柄本明、時任三郎、宮崎美子、和田聰宏
 須藤理彩、若葉竜也、忍成修吾、池畑慎之介、坂東三津五郎
■ストーリ
徳川将軍・秀斉の十七男として生まれた清水斉道(なりみち)は
母の愛を知らずに育ち、心を病んでいた。一方、瀬田村の山で
生まれ育った野性の娘・雷(らい)は、豊かな自然の中で自由奔放に
生きていた。静養のため、瀬田村に向かった斉道は、落雷で根元から
折れてしまった銀杏に桜が芽をつけた奇妙な巨木「雷桜」の下で、
雷と運命的な出会いを果たす。

■感想 ☆☆☆☆
予告で蒼井優さんの熱演を見て以来、「これ見たい!」と思っていた作品。
蒼井さんは予告通りの熱演でした。かっこよかった!
いつものほんわかした雰囲気とまるで異なる野性児、雷を鮮やかに
魅力的に演じられていました。普段の穏やかな語り口から一変、
腹から発生できている感じのやや野太いすごみのある声にもびっくり。

人里離れた山の奥で親父様とふたりだけで暮らす雷。
山や自然が好きで、楽しそうにのびのびと野山を駆け巡る彼女が
とてもキュート。化粧っ気をまったく感じさせないし、馬を自由自在に
乗りこなしたりのしのしと歩いたりする動作はすべて女らしさと無縁。
その「飾らない」様子がとにかく魅力的です。

だからこそ、両親の愛情に触れられず、周囲にいる家臣も自分には
本音を言うわけもなく、孤独と共に育った斉道が彼女の本音に
安らぎ、彼女と一緒に過ごしたいと思った気持ち、彼女と過ごすことで
安心して自分を解放できた気持ち、彼女との時間を心地よいと感じた
気持ちに共感できました。
身分があるために自分が自由に人を好きになれないことをきちんと
認識している斉道と、そういった「政治的な理由」や「建前」を
まったく理解できない雷。
自分の感情だけに心を傾け、自分の感情に素直に動く雷と、自分の
感情よりも家臣や主君、国の民の幸せを追い求めなければならない斉道。
その対比がしっかりと描かれていて、だからこそ、お互いを必要と
しているにも関わらず、正反対の境遇、正反対の育てられ方をしたために
どうしても分かり合えない、未来が交じり合わないふたりの様子が
もどかしかったものの、どちらの気持ちも理解できてしまいました。

クライマックスでふたりが選択した行動も、やはり対照的。
どこまでも自分らしく、自分の感情の赴くままに行動する雷の
まっすぐな瞳と力強い声。そんな雷を誰よりも必要としている斉道の
言葉にならない、言葉にできない心からの叫び声。
ふたりの叫び声に胸をつかれました。

周囲の人たちの感情、行動も丁寧に描かれていて、主人公たちだけでなく
色々な人の想いに共感できる映画でした。
その中でも雷の母親を演じた宮崎美子さん、斉道のお目付け役を演じた
柄本明さん、このおふたりが特に印象的。
ふたりとも静かに主人公たちを見守り続ける役です。
柄本さんの画面いっぱいに迫ってくるような熱演に圧倒されました。
そして、宮崎さんの穏やかな笑顔、ぬくもりあふれる声が役と見事に
シンクロしていて、愛情の大きさ、深さがしみじみと伝わって来ました。

全体的にとてもとても好きな雰囲気の映画だったのですが。
唯一、ふたりの再会場面で突如流れたバラード調の洋楽ポップスには
少し、・・・いえ、かなり大きな違和感を抱きました。
流しかけていた涙が思わずぴたりと止まりました。
あの場面であの曲を選んだのはおそらく「時代劇の型にはまらない作風」
を体現するためかなー、とは思うのですが、それにしたって、
あそこまでの「バラード」を持ってこなくたって・・・。
音楽は入れず、祭りのお囃子だけにしたほうがよかったんじゃないかなー
いやいや、いっそ無音でふたりのアップだけを大写しにするぐらいの
ほうが私は好みだわー!と思いました。
ふたりが再会できた素敵な場面だったはずなのに、集中してなさすぎ。