のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

サンタクロースが歌ってくれた/2010年クリスマス公演

2010年11月17日 00時18分00秒 | 舞台(キャラメルボックス)
■キャラメルボックス2010年クリスマス公演
■サンタクロースが歌ってくれた
■出演
 西川浩幸、上川隆也、近江谷太朗
 大森美紀子、坂口理恵、岡田さつき、前田綾、温井摩耶
 三浦剛、筒井俊作、實川貴美子、渡邊安理

■ストーリ
 クリスマスイブの東京。彼氏のいないゆきみ(温井摩耶)は、池袋の
 映画館で友人のすずこ(前田綾)と待ち合わせしていたが、すずこが
 約束の時間に来なかったため、一人で中へ入った。映画のタイトルは
 『ハイカラ探偵物語』。大正5年の東京で芥川龍之介(西川浩幸)と
 平井太郎(後の江戸川乱歩 上川隆也)が怪盗黒蜥蜴と戦う話だった。
 ところが、 芥川が黒蜥蜴を追い詰めた場面で、黒蜥蜴が映画の外に
 逃げ出した!芥川と太郎、そして警視庁の菊池警部まで映画の外に
 飛び出して、ゆきみと現代の東京を駆け回る。一方、遅刻したすずこは
 「映画の中から逃げ出した」というメイド服の女に出会って・・・。

■感想 ☆☆☆☆☆☆
 私が初めてキャラメルボックスを知ったのは、大学2年。
 NHKさんで放送されていたこの舞台を見たのがきっかけでした。
 けれど、この作品を知ったのは、そこから更に遡ること4年。
 高校時代、試験勉強中に聴いていたラジオドラマ「青春アドベンチャー」
 でこの作品を知り、「面白いなぁ」と心に残っていたため、
 深夜に放送されていたNHKさんの舞台にも気付き、ビデオ録画して
 ドラマの中の上川さんとまったく違う踊り、突っ込む上川さんに
 衝撃を受け、脚本の面白さを再確認し、何よりもキャラメルさんの
 舞台の熱さ、まっすぐさ、力強さに元気をもらい、大好きになりました。
 つまるところ、舞台を録画しようと思ったきっかけも、キャラメルボックス
 という劇団を認識したきっかけもすべてが「サンタクロースが歌ってくれた」。
 私にとっては、とてもとても特別な作品です。

 そんな特別大切な作品を生で鑑賞できる機会がもらえるなんて。
 しかも主要人物3名のうち、2名も退団しているというのに
 私が見たときのまま、オリジナルキャストで鑑賞できるなんて。
 喜びいっぱい、胸いっぱいの2時間でした。
 オリジナルキャストだけでなく、今回の上演メンバーは、私にとって
 夢のような組み合わせで、本当に苦手な人がまったく出ていないどころか
 キャラメルさんを知って、色々な作品を見てきた中で、
 「この人の演技、好きだなー。」と思っていた人ばかり。
 しかもヒロインは私の最も好きな女優さん、岡田さつきさんで
 もうひたすらひたすら感動しっぱなしの2時間でした。
 あまりに胸がいっぱいになりすぎて、前半は作品に、というよりは
 この状況に感動して涙が浮かぶ始末。とはいえ、あっという間に
 作品世界に引き込まれ、後半はこの作品の持つ力に、この作品の中の
 言葉のきらめきに感動しっぱなし、涙腺を刺激されっぱなし。
 今、思い返してもまた胸が熱くなる。それぐらい素敵な時間を
 キャラメルさんにいただきました。

 基本はハートフルコメディ。テーマは友情。
 キャラメルボックスの基本精神「人が人を思う気持ち」がふんだんに
 盛り込まれています。けれど、いつものキャラメルさんと少し違うのは
 「人が人を思う気持ち」だけではなく、「人が人をうらやんでしまう気持ち」
 「大好きな人をねたんでしまう気持ち」「大好きだと思っているのに、
  大好きだからこそ、大好きな人と自分を比べて、なんで自分は
  こんななんだろう、とコンプレックスを抱いてしまう気持ち」といった
 人の根底に潜んでいるどろどろとした気持ちにも目を向けているところ。
 大好きで大好きでたまらない大切な友人だという気持ちと
 その友人と自分を比べて現在の自分の状況に焦燥感を抱いてしまう気持ち。
 俺だって、俺だって!というどうしようもない気持ち。
 そういった気持ちをもてあましている平井太郎を上川さんが真摯に、
 そして鬼気迫る表情で演じていました。

 でも、今回の舞台を見て、この舞台は男性たちの描く「男の友情」が
 大きく取り上げられているけれど、彼らを見守る女性たちの姿、
 そして彼らに関わる女性たちの友情も「男の友情」以上に深く
 描かれていた作品だったんだな、と今更ながらに気付きました。
 主要人物は男性3人組だけれど、ポイントポイントで重要な役割を
 果たしていたのは、女性陣。今回は彼女たちの熱演に涙腺を刺激
 されっぱなしだった気がします。

 それにしても見事にこの作品をコメディに仕上げてくれていた
 近江谷さん。テレビドラマでは悪役とかシリアスな役柄で見かけることが
 多いというのに、この作品では最初から最後まで盛り上げ役に徹して
 います。ひたすら走って走って暴走して。あんなに真面目に一生懸命に
 作品の最初から最後まで走っているというのに、そのどれもがひたすら
 おかしいってすごい。彼を見ているだけで幸せな気持ちになりました。

 でもって、押しも押されぬキャラメルさんの中心。西川さん。
 「全然25歳に見えない」といじられていましたが、そんなことない!
 初演時からまったく変わらず若々しい。かわいらしい。キャラメル
 ボックスの持っている温かい雰囲気と彼の醸し出すぬくもりと
 二アリーイコールです。まさにキャラメルさん。

 そして、キャラメルの突っ込み隊長、上川さん。久しぶりのキャラメル
 ボックスの舞台を楽しんでいる様子がひしひしと伝わってきました。
 シリアスな役柄だけれど、コメディ部分も担っていて、と
 緩急多い役柄なのに、その役を全力で演じている様子が印象的でした。
 西川さんと近江谷さんのボケも的確に正確に拾っていて、その様子が
 なんだかとても楽しそうで、幸せそうで、私まで幸せ気分に。
 上川さんの超高速突っ込みを久しぶりに思う存分、堪能。

 女優陣もみんなみんなかわいくてかわいくて。
 どっしりとした存在感で少女探偵団をかきまわしにかきまわしていた
 坂口さん。女心を切なく演じていた岡田さん。正反対の役柄だった
 けれど、どちらも見所たっぷりで、その存在感と演技力に感嘆。
 温井まーやさんはいつも割ときつめの悪役が多い気がするのですが
 今回は天然さんの役で「こんな役もぴったりじゃん!!」と目から
 鱗でした。まーやさんはかわいい子を演じたら、本当に本当に
 かわいいなぁ、とひたすらにそのかわいらしさを堪能。
 いつもは役柄に合わせてメイクもきつめだったのねー、と彼女の
 美人ぶりに改めて気付かされました。

 その他の役者陣もみんなキュートで楽しくて面白くて。
 久しぶりにこの作品を見て、この作品の持つハッピー感は
 「誰かひとりが目立つ作品じゃないから」なんだろうな、
 としみじみ思いました。芥川龍之介と平井太郎が作品の核になっては
 いるけれど、彼ら二人だけが目立つ作品ではない。
 みんなが活躍し、みんなが輝いていて、みんなが幸せになる作品です。
 クリスマス公演らしく、ラストは見事な大円団。
 「クリスマスは奇跡が起きる日なんだから。」
 この科白が全編を通して実現されている作品で、
 舞台終了時、周りの人みんなが涙目で、そしてみんなが心からの笑顔でした。