木曽御嶽にアホ3人 ~1~
不動産屋の広告じゃあるまいし、徒歩10分なんてのは嘘で、たっぷり20分は歩いた。
最初は涼しかった山の空気だったが、荷物を持って歩くうちに汗だくになった。
行けども旅館街の代わりに、生い茂る草木ばかり。
「疲れたよぅ、休みたいよぅ」
と弱音を吐くうちに、ボーッと建物がかすんで見えた。
「あー、幻までみえる…」
するとその幻の建物から誰かが出てきた。
「あれあれ、迎えにも行けずに悪かったねえ」
2階建てのその旅館は、そう新しくはないが、きれいに手を入れてあって清潔だった。
私達は踏むと音が鳴る廊下を案内されて、私達が寝起きする部屋に通された。
そこは薄暗い北向きの8畳程の部屋で、2方向に窓があり、古い布団の匂いがした。
旅館の人が出て行ってしまうと、窓をあけて空気を入れ替えようと、窓に手をかけた友人Hが
「ぎゃっ!」
と叫んで後ずさった。
「蛾がいる!」
「んもう、東京もんはこれだからね。蛾ぐらいいるだろうさ」
と言いつつ、新潟出身のKが窓に近寄り、
「ぎえっ!」
と尻もちをついた。
窓のガラスというガラスに、掌サイズの蛾が、みっしりと止まっていた。
北向きだからというより、蛾のせいで薄暗いのだ。
幸い、蛾は外側にいた。
山に住む虫はなぜだか巨大だ。
高校の時、合宿先のトイレに、10センチはあるバッタもどきがいで
怖くて用が足せなかったと私が言えば、
バッタは悪さをしないが、山のアリは何でも食いちぎる、と誰かかが言い、
しばし巨大虫の話題で盛り上がったあと、ふと蛾の密集する窓を見やって無口になった。
とんでもない所に来たかもしれない。
アホ3人も、ようやく自分達の浮かれ具合を後悔しつつあった。
(続く)
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不動産屋の広告じゃあるまいし、徒歩10分なんてのは嘘で、たっぷり20分は歩いた。
最初は涼しかった山の空気だったが、荷物を持って歩くうちに汗だくになった。
行けども旅館街の代わりに、生い茂る草木ばかり。
「疲れたよぅ、休みたいよぅ」
と弱音を吐くうちに、ボーッと建物がかすんで見えた。
「あー、幻までみえる…」
するとその幻の建物から誰かが出てきた。
「あれあれ、迎えにも行けずに悪かったねえ」
2階建てのその旅館は、そう新しくはないが、きれいに手を入れてあって清潔だった。
私達は踏むと音が鳴る廊下を案内されて、私達が寝起きする部屋に通された。
そこは薄暗い北向きの8畳程の部屋で、2方向に窓があり、古い布団の匂いがした。
旅館の人が出て行ってしまうと、窓をあけて空気を入れ替えようと、窓に手をかけた友人Hが
「ぎゃっ!」
と叫んで後ずさった。
「蛾がいる!」
「んもう、東京もんはこれだからね。蛾ぐらいいるだろうさ」
と言いつつ、新潟出身のKが窓に近寄り、
「ぎえっ!」
と尻もちをついた。
窓のガラスというガラスに、掌サイズの蛾が、みっしりと止まっていた。
北向きだからというより、蛾のせいで薄暗いのだ。
幸い、蛾は外側にいた。
山に住む虫はなぜだか巨大だ。
高校の時、合宿先のトイレに、10センチはあるバッタもどきがいで
怖くて用が足せなかったと私が言えば、
バッタは悪さをしないが、山のアリは何でも食いちぎる、と誰かかが言い、
しばし巨大虫の話題で盛り上がったあと、ふと蛾の密集する窓を見やって無口になった。
とんでもない所に来たかもしれない。
アホ3人も、ようやく自分達の浮かれ具合を後悔しつつあった。
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