木曽御嶽にアホ3人 ~1~
木曽御嶽にアホ3人 ~2~
私達の仕事は、掃除、配膳、布団を片づけること。
到着したその日は、旅館の人達に自己紹介し、大広間に配膳をする手伝いをしただけで
お風呂をもらい、調理場の隅にあるテーブルで夕食を食べた。
「明日から朝は早いから、今夜はもう寝ていいからね」
大女将さんにそう言われて、私達は部屋に戻った。
さて、この旅館には大旦那さんと大女将さん、二人の息子である旦那さんがいる。
旦那さんはまだ独身なので、女将さんと呼ぶ人はまだいないのである。
調理場は大旦那さんと旦那さんが仕切り、調理の手伝いをするおばさんが一人、
布団を敷く頃になるとどこからか現れる、木の枝のようにヒョロリとして背の高い男性がいた。
翌朝は4痔半起床。しかし起きられるか心配する必要はなかった。
ごオーー~ーン!!
というドラの大音響で飛び起きた。
泊まり客がいるのに、こんなドラを鳴らしていいのだろうか?
慌てて身支度を整え、調理場に向かっていると、
今度はカンカン、チンドンと鐘に合わせて、大勢の人の声が聞こえてくる。
声のする部屋を覗いてみて驚いた。
全身白装束の集団が、正座をして念仏を唱えていた。
それは何か見てはいけない儀式を見てしまったようでドキドキした。
後からわかったことだが、
御嶽山は富士山に並ぶ霊山で、頂上に御嶽神社奥社があり、
御嶽教の信者の方達が集団で登拝する。
つまりこの旅館は、そういう方達のための宿だったのである。
そんなことも何も知らず、温泉だピンポンだと騒いでいた私達はやっぱりアホだ。
白装束の集団は、ほぼ毎日のようにやって来た。
御嶽教ではこの時期に大事な意味があるのかもしれない。
念仏の間に布団を片づけ、朝食の配膳をしなくてはならない。
ヒョロリが「あーらよっと、ござんせんか」と妙なかけ声をかけながら布団をあげてゆく。
私達は遅れないようにシーツをはいでいく。
調理場では大女将さんとおばさんがてんてこ舞い。
白装束集団を無事に送り出すと、私達は空腹と疲れで倒れる寸前だった。
朝食を食べると、掃除をして、あとは夕方まで自由時間。
旅館の人達も、働いている人達も気さくだし、
巨大蛾は気持ち悪いけど、10日間なんとかやれそうだね、と3人で麦茶を飲みながら話していたところに、
アイツがやって来たのだった。
(続く)
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木曽御嶽にアホ3人 ~2~
私達の仕事は、掃除、配膳、布団を片づけること。
到着したその日は、旅館の人達に自己紹介し、大広間に配膳をする手伝いをしただけで
お風呂をもらい、調理場の隅にあるテーブルで夕食を食べた。
「明日から朝は早いから、今夜はもう寝ていいからね」
大女将さんにそう言われて、私達は部屋に戻った。
さて、この旅館には大旦那さんと大女将さん、二人の息子である旦那さんがいる。
旦那さんはまだ独身なので、女将さんと呼ぶ人はまだいないのである。
調理場は大旦那さんと旦那さんが仕切り、調理の手伝いをするおばさんが一人、
布団を敷く頃になるとどこからか現れる、木の枝のようにヒョロリとして背の高い男性がいた。
翌朝は4痔半起床。しかし起きられるか心配する必要はなかった。
ごオーー~ーン!!
というドラの大音響で飛び起きた。
泊まり客がいるのに、こんなドラを鳴らしていいのだろうか?
慌てて身支度を整え、調理場に向かっていると、
今度はカンカン、チンドンと鐘に合わせて、大勢の人の声が聞こえてくる。
声のする部屋を覗いてみて驚いた。
全身白装束の集団が、正座をして念仏を唱えていた。
それは何か見てはいけない儀式を見てしまったようでドキドキした。
後からわかったことだが、
御嶽山は富士山に並ぶ霊山で、頂上に御嶽神社奥社があり、
御嶽教の信者の方達が集団で登拝する。
つまりこの旅館は、そういう方達のための宿だったのである。
そんなことも何も知らず、温泉だピンポンだと騒いでいた私達はやっぱりアホだ。
白装束の集団は、ほぼ毎日のようにやって来た。
御嶽教ではこの時期に大事な意味があるのかもしれない。
念仏の間に布団を片づけ、朝食の配膳をしなくてはならない。
ヒョロリが「あーらよっと、ござんせんか」と妙なかけ声をかけながら布団をあげてゆく。
私達は遅れないようにシーツをはいでいく。
調理場では大女将さんとおばさんがてんてこ舞い。
白装束集団を無事に送り出すと、私達は空腹と疲れで倒れる寸前だった。
朝食を食べると、掃除をして、あとは夕方まで自由時間。
旅館の人達も、働いている人達も気さくだし、
巨大蛾は気持ち悪いけど、10日間なんとかやれそうだね、と3人で麦茶を飲みながら話していたところに、
アイツがやって来たのだった。
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