太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

日本むかしばなし

2014-05-09 07:33:21 | 日記
職場である本屋にいらした女性のお客様が、

孫に日本昔話のDVDを買いたいので、手伝ってほしいとおっしゃる。

女性は日本語を読めないし、日本の昔話については何も知らない。

私は、とりあえず無難なところで 桃太郎 を勧めてみた。

ピーチボーイはハワイでも有名だし。


「どんな話?」と言うので、かいつまんで説明した。

お供を連れたところまではよかったが、鬼と戦う場面になると

「ノー、ノー、暴力は見せたくないわ」

と若干眉をひそめておっしゃる。



その方が、次々に差し出す物語を、私は片っ端から

そのあらすじを説明させられることになった。

金太郎は、熊と戦うからダメ。

一寸ぼうし は針で戦うからダメ。

カチカチ山は、イジメを容認するようでダメ。

泣いた赤鬼も同上の理由でダメ。

さるカニ合戦は喧嘩とイジメのダブルで言語同断。

ごんぎつねは殺傷事件にいたるので、もってのほか。

舌切り雀は、動物をいじめるから絶対にダメ。

浦島太郎は、真似して海ガメに乗ると困るからダメ。

かぐや姫は、わがままを言うからダメ。

雪女はお化けだからダメ。

花咲かじいさんは、犬に言われたところを掘ったらお宝が出てきたのはいいが、

枯れ木に花を咲かせるまでの経緯が思い出せなかったので、

富を独り占めしたらいけないと思って、花を咲かせて人々を喜ばせた、ということにした。



…いい加減、疲れてきた。

日本語でだってけっこうな労力なのに、説明は英語だから激しく消耗。

だいたい、日本の昔話なんか、正義が悪を成敗したり

欲深の戒めみたいなのが多いんだから、

戦いもお化けもわがままもイジメもない話がいいなら

自分で作って聞かせたらどうでしょうか、と喉元まででかかった。

子供にそういうものを見せたくない気持ちは、どの親や祖父母にも共通なんだろうか。


「これは?」

そんな私の気持ちをヨソに、女性はにこやかに一休さんを出してきた。

面倒くさくなって、子供のプリーストが、ウィットで問題解決する話、と説明したら

女性の顔が明るくなった。


「ウィットで?ウィット坊やなの?」



食いついてきた!ここて是非ともフィニッシュにもっていきたいところだ。

まだまだ、こぶとりじいさん だとか、おむすびころりん なんかが控えている。

私は こぶ を英語で説明できないし、食べ物を粗末にするのはダメだとか言いそうじゃないか。



私は必死に一休さんの売り込みにかかった。


「そうです。非常に頭がいいんです。かつ性格も良くて、母親思い。

戦わないし、イジメもなし、わがままも言わないしお化けも出ません。

もちろん動物とも仲良し、いつもハッピーなんですよ。さらには実話ときています」



「ああ、それは素敵だわ。孫がウィット坊やになれるかもしれないわ」

「なれます、なれます。日本の子供はみんな一休さんでウィットを学ぶんです」


早く解放されたい一心で、いささか大げさなことを口走った。

女性は目を輝かせて私のホラを聞き、満足気に一休さんを

買って帰った。

ヨロヨロとしながら売り場に戻ると、仲間の同情と

自分じゃなくてよかった、の視線に迎えられた 。


「捕まってるなーと思ったけど、そんなことやらされてたのねー」

「全部で11話だよ。花咲かじいさんなんか、人をハッピーにするのはいいけど

そう簡単に富が手に入ると教えたくない、だってよ」

私が作ったわけじゃないのに、ダメ出しされるとなぜか凹むのは

愛国心だろうか、いや、違うな。






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