太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

水の泡

2015-10-11 09:42:50 | 食べ物とか
ズッキーニは日本では食べたことがなかったけれど、ハワイに来て食べるようになった。

私にとって普通のキュウリが、日本ほど美味しくないというのもあるし、

ズッキーニが意外と美味しかったというのもある。

ズッキーニはキュウリのでかいやつだという認識を持っていた時は、美味しいとは思えなかったけれど

キュウリとは別物だと気づいた時点で、ズッキーニは美味しいかも、と思うようになった。

火を通すと、あまくとろけて、ほんの少し冬瓜のような。

トマトソースにもよくあうし、てんぷらにしてもいい。



休日、ちょっと凝った料理をしようと思い立った。

ここでいう「凝った料理」は私を基準としているので、

たぶん一般の人にとっては、なんでもない料理である。



イタリアンの料理本をめくっていて目がとまったのはズッキーニ料理。

ズッキーニの種の部分をスプーンでこそげとり、

そこに、ハンバーグ種を詰めて焼き、トマトソースで食べるというもの。



買ってきたのは25センチぐらいの、まるまるとしたズッキーニ2本。

縦に切って、スプーンで中身をこそげる。

大量に出た中身の部分は、フライパンで乾煎りして水気を飛ばし、ハンバーグ種に混ぜた。

ボート状になったズッキーニには塩を振っておき、水分をふき取る。

そこに小麦粉をまぶしてから、ハンバーグ種をこんもりと詰める。

詰め終わった上に、さらに小麦粉をまぶしてフライパンで肉側から焼く。

トマトソースを入れ、白ワインを注いでフライパンごとオーブンに入れる。


盛り付けるときに、フライパンに残ったソースにブイヨンなどを加える。



そこに夫が帰宅した。

こんな緻密な(だから私的には、だけど)料理をしたという達成感があり、

「今日はごちそうだよ」と鼻の穴を膨らませた。



フライパンの中のズッキーニはしっかりとしていたのに、

盛り付けようと取り出したとたん、それはナヨナヨと膝から崩れるような感じで

皿の上に乗ったときには、もうアラレもない姿であった。

ズッキーニとひき肉は完全に関係を絶ち、まるで他人同士のように横たわっている。

なんとかハンバーグ状のものをズッキーニに戻そうとするが不自然で、

それを隠すようにトマトソースをドボドボとかけた。


「わー。ミートボールとズッキーニのシチュウだ!」


シチュウではない。

ミートボールでもない。

これはズッキーニにひき肉を詰めて焼いた料理なのだ。

しかし現実に皿の上にあるのは、焼きものというよりは煮物である。

それもやけに長いズッキーニと、細長いままのミートボールの・・・


味は悪くない。

ズッキーニの種部分を混ぜたからか、ハンバーグはしっとりとしていたし、

美味しいトマトソースを使ったから(そう、出来合いの瓶入りのやつ)。

ズッキーニはとろりとして、ソースによくあっていた。


「元の形を生かしたシチュウも新鮮でいいね」


ああそうだね。

私もそう思う。



2本も使ったので、翌日の夕飯もズッキーニを食べることになった。

翌日、私が帰宅すると既に夫がそれを温めなおしてくれていた。

深めの鍋の中で、一口大になったズッキーニとハンバーグが、ぐつぐつと煮えている。

「オリーブが残っていたから足してみた」


これが焼き物だということを知らない夫を責められまいよ。


何が悪かったのだろう。

さっぱりわからないまま、数々の手間隙の行程だけがむなしく脳裏によみがえるのであった。










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