ホノルルに行った時、コピー屋が入っているビルのエレベーターに乗った。
6基あるエレベーターの一つが開いて、女の人が乗り込むところだったので私も後に続いた。
1基に二人なら、許容範囲だろうと思ったのだ。
女の人が5階を押し、私が腕を伸ばして2階を押したら、
「ちょっと!そっち側にも階数ボタンがあるんだけどッ?」
と、私をなじるように言った。
乗り込むときから、大きな荷物を抱えて不機嫌そうだった。見たら確かにこちら側にも階数ボタンがあった。
「オー、アイム ソー――リーー(あら、ごめんなさぁーーーい)」
カチンときたけど、わざとらしく明るく言ったら、
「もっとそっちの角に寄って離れてくれない?」
と、さらに眉間にシワを寄せて、きつい口調で言う。
「アーイム ソー―おおおリイ~♪」
私は距離を取りながら、わざとテンポをつけて謝り、降りるときに
「You have a Wonderful day♪♪♪」
ワンダフルを強調しつつ、歌うように言ったが、もちろんこちらも見ずにブスっとしたままだ。
私は悪意を感じる相手に対しては、嫌味なほど明るくふるまってしまうことがある。
私としては「あんたの悪意はこっちに届いてないよーだ」という嫌味のつもり。
しかし、エレベーターを降りた瞬間、その人がマスクをしていなかったことを思い出し、
「Why don't you wear a mask?(それじゃマスクすりゃぁいいのに)」
って言ってやればよかった、と地団太を踏んだ。
今すぐその人が降りる5階に行って、言ってやりたい気持ちに駆られた。
「そんな感染が心配なら手袋もすれば?」
そう付け加えて言ってやったら、どんなにスッキリしたか。
頭の回転の速さに問題があるばかりに、私にはこんな「言えばよかった」ということがたくさんある。(そんな過去記事はコチラ)
けれど、過去に夫が言ったように、
言えばよかったと思うことのほうが、言わなきゃよかったと思うよりずっといいんじゃないの
というのは真実だとは思う。
ネガティブにネガティブを返したら、それは増幅するだけで、その時はスッキリした気がするかもしれないが、受け取ってしまったネガティブは私の中でグレーのシミを作るだろう。
たとえ嫌味を込めてでも、やんわりとその人にネガティブを戻したほうがいい。
そうは思うけれど、会心の一撃をバーンと食らわせてやればよかった、と、まだ心のどこかでネチネチ思っている小さい私なのである。