馬場あき子選
今ならば退職金の払へるとふ「八代目川甚」苦渋の閉店 国立市 高嶋肇
仕事なく家賃払えぬ身となりぬ路上生活送る寒さよ 調布市 豊宣光
一首目、先日、柴又の老舗「川甚」が閉店するというニュースを見ました。一度行ってみたいと思っていた鰻の店です。父はそこで仲人をしたのは遠い昔。残念ですが、従業員は家族同然、いまのうちにと思った店主の心遣いが泣けてきます。二首目、これを詠んだ方は、本当にホームレスなのでしょうか、気になります。コロナ禍でこのような状況になった人は多いと思います。国が弱者を救わなくて、どうする!
佐々木幸綱選
玄関の馬の置物両耳がマスク掛けとなり一年が来る 神戸市 石川佳世子
書店から消えた海外ガイド本空っぽの棚に表示残して 札幌市 はづきしおり
一首目、馬の置物の耳にマスクをかけるとは・・・。大きすぎても合わないし、小さければ役に立たない。さて、どの程度の大きさでしょうか。唐三彩の馬だといいなあ、と妄想しました。二首目、この状態がいつまで続くのか、旅ができないなんて、旅行好きには耐えられないでしょう。早く行き来できるようになってほしいです。ただ、コロナ禍前のガイドブックが、コロナ終息後にそのまま役に立つのかは、疑問です。
高野公彦選
フクシマを捨てて避難の転々と中野、杉並そして国立 国立市 半杭螢子
ホームレス雇用破壊の生き証人重き荷抱き公園に寝る 横須賀市 梅田悦子
一首目、作者自身が被災者だったのでしょうか。今住む国立は、過ごしやすいところでしょうか。帰りたくても帰れないという現実は、10年経っても変わらない。私たちは忘れてはいけないと思います。二首目、この冬の寒さで公園に寝るのはつらい!コロナ禍で正社員はいいけれど、非正規はすぐに解雇されてしまう。社会の中の差別や格差は、どうしてなくならないのか、悔しいですよね。
永田和宏選
その場では笑いをとって終わってた百二十一位この国の会議 相模原市 石井裕乃
十年と括りてはならずあの日から白梅十遍咲きしみちのく 久慈市 三船武子
10年かあ いろいろあったなあの日から避難したよな助けられたな 南相馬市 佐藤隆貴
一首目、悔しいけれど、この国の男社会はなかなか変わらない。あの女性蔑視発言がクレームもなくスルーされちゃうんだから。121位なんて、本当にひどいよ。女性活躍なんて言っておいて、サイテーじゃん!政策決定の場に女性がいないことが長く続いて、本当に歪んでいるよ、この国は。二首目、復興なんてまだまだなのに、国はひどい。原発政策をやめるべき。三首目、素直な歌に、とても惹かれます。
コロナ禍で人の移動もままならなくて、10年の追悼式もままならないのか、こんなことって、悲しいですよね。私はあの日を忘れません。職場の研修で地震が起き、そのまま帰宅となって家電量販店の大画面のテレビで津波の様子を見ました。この世のこととは思えなくて・・・。その後の風評被害でフクシマは大変な目にあっています。本来なら、応援しなくてはいけない筈なのに。そういう国民性って、コロナ感染者への差別でも明白。日本人って、卑怯ですよ。民度が高いなんて、とてもじゃないけど思えませんね。自分だけが特別なのか?同じ目に合うことを想像してみろってんだ。