上京して間もない頃の、若気の至りの出来事である。
その彼との出逢いは池袋駅周辺の若者の待ち合わせスポットとして当時有名なある場所であった。
その日、別の友人と会う約束をしていてその待ち合わせ場所で待っていた。
当時は携帯電話なるものが出現するずーっと以前の頃で、外出先での状況確認には公衆電話を使用するしか手段がなかった時代である。
30分程待っていたのだがその友人は現れない。元々待つことが苦手な私としては待ち合わせ時間を15分程経過した頃からイラつき始めていたのであるが、もう限界に近い。
公衆電話で確認する気さえせずただイラついていると、シンガーソングライターの原田真二の身長をずっと高くした風の、ベビーフェイス系の男の子(男性というよりも男の子と表現した方が適切だ。)がこちらに近づいてくる。
「彼女、お茶しない?」
「えっ、私、人と待ち合わせ中なんです。」
「ちょっとでもいいから。」
大顰蹙かもしれないが、待たされることが限界に達していた私は30分限定でその原田真二風とお茶をすることにした。
そして、30分後に待ち合わせ場所に戻ると友人は来ていた。
「ごめん、ごめん、遅くなって。」と演技派の私。
「大丈夫だよ。ボクも遅かったから。」と友人。
(知ってるよ…。)
さて原田真二風の方に話を戻すが、あちらの一目惚れに近い形で私は相当気に入られた。こちらとしてもまんざらではない。(実は元々原田真二のファンでもあったし、当時ベビーフェイス系は結構私の好みだった。)30分間の内にあちらから付き合いたい意思を表明されて、私は電話番号を教えた。
そして間もなく電話がかかって来て、何度かデートをした。
原田真二風の彼は見た目はバッチリなんだが、どうも性格が私とは噛み合わない。お互いに自己主張が強いタイプのようだ。早いうちから私の方は、これは長続きしないであろう感覚を抱いていた。
ところがあちらはまだまだ積極的だ。少し敬遠し始めた私がデートの約束を断るのだが、めげずにアタックしてくる。
そんなこんなで、こちらとしてはやや義務的に時間つぶし程度に会い初めていた頃の出来事だ。
無言電話が2、3回続いた。
無言電話というのはいたずら電話の中でも一番不気味である。何だか嫌な予感を引きずっていたある日のことだ。
また電話がかかってきた。
女性の声で「○○さんですか?」と私の名前を言う。見知らぬ女性の声である。
「はい、そうです。」と私。 そうするとすかさず返ってきた言葉は、
「あなたですね! うちの主人を誘惑しているのは!!」 物凄い剣幕だ。
きつねにつままれる私…。実はこの電話は原田真二風の奥方からの電話であり、原田真二風には何と妻子がいたのだ!!
まったくの初耳で、唖然としている私に、
「主人の手帳からあなたの電話番号を発見したんです!泥棒猫のようなまねはやめて下さい!小さい子どももいるんです。主人とは今すぐ別れて下さい!!」と、奥方。
「そのお話は今初めてお聞きしました。そういう事情はまったく本人から聞いておりませんが、いずれにしましても私の方はもうお付き合いするつもりはありませんので…。」 しどろもどろに応える私…。
「主人を誘惑しておいて、いい加減な言い方はやめて下さい!!」奥方の怒りは収まらない様子だ。
「誘惑したのはご主人の方ですし、とにかく私の方はもう会うつもりはありませんので、ご主人にもそうお伝え下さい。」そう言って、私は電話を切った。
その後、原田真二風からもう一度電話があった。私は奥方からのその電話の事を伝え、もう会う意思は一切ないことをきっぱりと伝えた。
そして短い出逢いは終焉した。
いや~。危ない危ない。 それにしてもあのベビーフェイスで子持ちだったとは超びっくり……。 まだまだ若かりし私にはアッと驚くばかりの出来事であった。
それ以来当時妙齢の私は、彼氏と付き合う時には最初に必ず確認する事にした。
「まさか、妻子いないよね??」
その彼との出逢いは池袋駅周辺の若者の待ち合わせスポットとして当時有名なある場所であった。
その日、別の友人と会う約束をしていてその待ち合わせ場所で待っていた。
当時は携帯電話なるものが出現するずーっと以前の頃で、外出先での状況確認には公衆電話を使用するしか手段がなかった時代である。
30分程待っていたのだがその友人は現れない。元々待つことが苦手な私としては待ち合わせ時間を15分程経過した頃からイラつき始めていたのであるが、もう限界に近い。
公衆電話で確認する気さえせずただイラついていると、シンガーソングライターの原田真二の身長をずっと高くした風の、ベビーフェイス系の男の子(男性というよりも男の子と表現した方が適切だ。)がこちらに近づいてくる。
「彼女、お茶しない?」
「えっ、私、人と待ち合わせ中なんです。」
「ちょっとでもいいから。」
大顰蹙かもしれないが、待たされることが限界に達していた私は30分限定でその原田真二風とお茶をすることにした。
そして、30分後に待ち合わせ場所に戻ると友人は来ていた。
「ごめん、ごめん、遅くなって。」と演技派の私。
「大丈夫だよ。ボクも遅かったから。」と友人。
(知ってるよ…。)
さて原田真二風の方に話を戻すが、あちらの一目惚れに近い形で私は相当気に入られた。こちらとしてもまんざらではない。(実は元々原田真二のファンでもあったし、当時ベビーフェイス系は結構私の好みだった。)30分間の内にあちらから付き合いたい意思を表明されて、私は電話番号を教えた。
そして間もなく電話がかかって来て、何度かデートをした。
原田真二風の彼は見た目はバッチリなんだが、どうも性格が私とは噛み合わない。お互いに自己主張が強いタイプのようだ。早いうちから私の方は、これは長続きしないであろう感覚を抱いていた。
ところがあちらはまだまだ積極的だ。少し敬遠し始めた私がデートの約束を断るのだが、めげずにアタックしてくる。
そんなこんなで、こちらとしてはやや義務的に時間つぶし程度に会い初めていた頃の出来事だ。
無言電話が2、3回続いた。
無言電話というのはいたずら電話の中でも一番不気味である。何だか嫌な予感を引きずっていたある日のことだ。
また電話がかかってきた。
女性の声で「○○さんですか?」と私の名前を言う。見知らぬ女性の声である。
「はい、そうです。」と私。 そうするとすかさず返ってきた言葉は、
「あなたですね! うちの主人を誘惑しているのは!!」 物凄い剣幕だ。
きつねにつままれる私…。実はこの電話は原田真二風の奥方からの電話であり、原田真二風には何と妻子がいたのだ!!
まったくの初耳で、唖然としている私に、
「主人の手帳からあなたの電話番号を発見したんです!泥棒猫のようなまねはやめて下さい!小さい子どももいるんです。主人とは今すぐ別れて下さい!!」と、奥方。
「そのお話は今初めてお聞きしました。そういう事情はまったく本人から聞いておりませんが、いずれにしましても私の方はもうお付き合いするつもりはありませんので…。」 しどろもどろに応える私…。
「主人を誘惑しておいて、いい加減な言い方はやめて下さい!!」奥方の怒りは収まらない様子だ。
「誘惑したのはご主人の方ですし、とにかく私の方はもう会うつもりはありませんので、ご主人にもそうお伝え下さい。」そう言って、私は電話を切った。
その後、原田真二風からもう一度電話があった。私は奥方からのその電話の事を伝え、もう会う意思は一切ないことをきっぱりと伝えた。
そして短い出逢いは終焉した。
いや~。危ない危ない。 それにしてもあのベビーフェイスで子持ちだったとは超びっくり……。 まだまだ若かりし私にはアッと驚くばかりの出来事であった。
それ以来当時妙齢の私は、彼氏と付き合う時には最初に必ず確認する事にした。
「まさか、妻子いないよね??」