原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

手の平返した行政指導

2009年05月21日 | 時事論評
 昨夜、東京都と神奈川県においても、ニューヨーク渡航直後の女子高生2名の新型インフルエンザ感染が確認された。

 テレビのニュース速報よりも30分も早い時間に、我が子の学校からこの件に関する緊急連絡FAXが送信されてきたのだが、“八王子において女子高生の感染確認…”の文面を見た時には、時間の問題かとは思っていたものの首都圏においてもついに新型インフルエンザ感染が蔓延する時が来たのか?!と驚かされたものだ。

 本ブログの時事論評カテゴリーのバックナンバー記事「何ゆえ渦中に身を投じた?」においても既述しているのだが、新型インフルエンザが世界的広がりを見せていて日本国内で大騒ぎしている真っ只中のこの時期に、あえて感染者の多い地域へ、高校生である未成年者グループに重要性の乏しい団体旅行を決行させる決断を下す指導者に対し、私はやはり首を傾げざるを得ないでいる。

 その一方で私は、今回の新型インフルエンザの病状の重篤性の軽さにそぐわないちぐはぐな日本政府の対応の仰々しさ、それに平行したマスメディア報道の騒々しさに関して、連休前より“騒ぎ過ぎ”の感が否めないでいると同時に、この不況の時期にあってこの大騒ぎによる更なる経済的大損失を憂えていた。

 米国では、表向きに報道されている感染者数(今現在数千人?)の舞台裏で、実は既に10万人を超える実質感染者が存在すると専門家の間で言われている。
 私事になるが、先だって米国在住の我が姉と電話で話した母の話によると、米国では誰も新型インフルエンザの話題など口に出す人はおらず、文化的歴史的にもマスクなど着用する慣習も元々なく、皆がまったく通常通りに暮らしているらしいのだ。 そして、姉がテレビ等で新型インフルエンザに関する日本の報道を垣間見ると、日本国民皆がマスクで顔を覆って大騒ぎしている影像が、かえって不気味で滑稽でさえある印象を受けているようだ。

 日本においても神戸、大阪での感染の広がりを受けて、数日前に大阪の橋下知事が「今回の新型インフルエンザの症状が重篤でないことを鑑みて、通常のインフルエンザ対応に行政指導を切り替えるべき、云々…」と発言したのだが、私もまったく同感であった。

 神戸・大阪の感染の広がりに伴う医療機関等のパンク状態解消や、国民の経済活動の正常化のために、政府や地方自治体はどうやら今回新型インフルエンザ対策行政を大幅に見直したようだ。
 東京、神奈川においては、学校の休校措置を基本的には一切取らない方針を各学校に指導した様子だ。
 また、例えば神戸市においては、専門の「発熱外来」以外の一般診療機関で受診した患者については、一律に新型インフルエンザの遺伝子検査を実施しない方針を決めたとのことである。 これには私も同意する。この遺伝子検査実施を大幅に減少させるということは、日本においても今後は正確な新型インフルエンザ患者数を把握しないということにもつながる。
 元々、発熱があるからと言って必ずしも全国民が医療機関を受診する訳ではない。 なぜ関西地方における国内感染の感染源が未だに特定できないのかと言うと、新型インフルエンザ感染源の人物が医療機関を受診していないためであると私は推測する。かく言うこの私も基本的に医療機関は受診しない人間であるし、その理由の程はともかく、そういう人種は日本にも多く存在する事であろう。少し論点がずれるが、発熱があるからと言って発熱相談窓口への電話を暗に強要されたり安易な医療機関の受診を強制されることは、個人的には迷惑な話でもある。


 昨夜の東京・神奈川での新型インフルエンザ感染のニュースを受けて、首都圏でもマスクが売り切れ寸前だそうである。(マスクの新型インフルエンザ感染予防の効果の信憑性とて疑わしいのが実情なのだが…)
 国民の皆さんには「風説の流布」に惑わされることなく、信頼できる情報を入手しつつ、今後も自らの健康を守って欲しいものである。


 それはそうとしても、今回の手の平を返したような新型インフルエンザ対策に対する政府の対応には呆れるばかりである。 そして、政府が自信を持っていたはずの“水際対策”をすり抜けた人ばかりから国内感染が広がった(広がりそうな)実態は否めない事実であろう。

 メキシコや米国の感染を受けた4月下旬に、政府は何故に“成田空港”の影像ばかりをテレビで流して、国民に対しあれ程仰々しいがまでの「ここまで頑張っています!」とでも言いたげな、マスメディアを通してのパフォーマンスをする必要があったのか?(選挙対策、あるいは医療業界との癒着と国民から勘ぐられても致し方ないであろう。)
 そうではなくて、当初より政府が専門機関との連結の下冷静沈着な対応を取っていたならば、このような国民の茶番劇に近い大騒ぎは避けられ、日本国民ももう少し余裕を持って新型インフルエンザ対策に臨めたであろうに。

 今回の新型インフルエンザ対策の緩和への方向転換に関しては同意できるのであるが、国は国民に対して、その突然の方向転換の理由やいきさつ、また今までの厳格体制の反省点等を分かりやすく弁明する義務があるのではないかと考える。


 何はともあれ首都圏での新型インフルエンザの蔓延、そしてまたもや国民の大騒ぎを煽って空回りし経済的大損失を積み重ねる事態は、行政の責任において是非共避けて欲しいものである。  
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