原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

引越しは好きですか?

2011年04月16日 | 時事論評
 避難所生活自体も大変だが、各地の避難所を転々と移動させられる避難者の皆さんの心労は多大なものであろう。

 本エッセイ集のバックナンバー「今年の桜は何色に咲き誇るのだろう?」において紹介したが、取り崩しが予定されている“赤プリ”(現グランドプリンスホテル赤坂)がその客室約700室を東日本大震災被災者のために現在開放している。 ただし、6月30日までの期間限定開放の予定であるとのことだ。 “赤プリ”取り崩し跡地の買い手との売買契約の制限もあろうが、ここは何とか被災者の皆さんに配慮して開放期限に融通を持たせられないものであろうか?
 埼玉県の大規模アリーナに於いても一時避難者を受け入れていた。 当該施設の場合3月末日までの短期間の被災者受入れだったと記憶しているが、移転後半月もたたないうちにまた別の避難所への移転を余儀なくされる被災者の皆さんの苦悩を思うと、いたたまれない思いであった。
 大震災被災地から遠方の地域の施設が被災者を受け入れようとする意向は評価したいのだが、施設の都合により短期間で避難所を閉鎖するのではなく、被災者の皆さんの心痛等を配慮してもう少し長期展望で受け入れる体制が整わないものなのか?

 ましてや家が大津波で流された訳でもないのに、福島第一原発放射能汚染圏内に居住していたばかりに、大震災発生直後に強制避難させられた避難者の方々の心の痛みを慮って余りある。
 東電は賠償金の仮払いに関して今月中には支払える体制を整えたようだ。 住民の方々がおっしゃるように、今回の福島原発“レベル7”事故の被害とは決して“カネ”で解決できる程容易い問題ではないのは明白である。 それでもせめても仮払いが実行されることに、一国民としては一応安堵するというものだ。
 今後は汚染地域への一時帰宅に関しても、東電や政府は積極的に対策を練って欲しいものである。 被災者の皆さんの安全を確保するべく防護服着用の上時間を限り、順番制で自宅に案内するべく方策を練って欲しいものだ。


 何故に原左都子が上記のごとく避難者の皆さんを慮るのかと言うと、それは私自身が避難生活に耐えられる人格を備えていない故であることは、当エッセイ集のバックナンバー「避難生活能力のない私」においても綴っている。

 それに加えて、原左都子は“引越し”が大の苦手でもあるためだ。

 今回の記事の表題は朝日新聞3月26日「be」“between"よりそのまま引用させていただいたたのであるが、 「引越しは好きですか?」 の原左都子の回答とは即座に「NO!」である。

 基本的に引越しが嫌いなはずの私であるが、今までの人生において繰り返した引越しの回数は、実に17回! にも上るのだ。
 郷里に於いて両親の下で過ごした間に引越した回数は、既に7回に達していた。 特に親が転勤族であったという訳でもないのだが、父の“家屋新築引越し好き趣味”も含めて何度も新たな地に家を建て替えて引っ越している。
 そして単身で上京して以降、どうも父の趣味を引きずっている私であったようだ。 我が長き独身時代においては家財道具も少なかったため、引越しが容易であったという背景もあろう。 自分自身の社会人としての成長に伴い、都内におけるより便利な地域に住む地を替えつつ生活をグレードアップしていったとも言える。 独身30歳にして独力で購入した自己所有マンションには7年間居住したのであるが、これは我が独身時代における最長期間の居住記録である。

 その後結婚して子どもを設けて以降も、我が家は自宅の買い替え転居を繰り返す運命にあったものだ。 
 この度重なる引越しは、原左都子にとって大いに大変だった。 何分、子どもを抱える一家は家財道具が数多い。そしてその子どもは未だ小さい。(加えて我が亭主とは“人はいい”のだが、この種の力仕事においては使い物にならない…) 
 という訳で、引越しの一切合財のすべてが私の“細腕”に任せられるのであるが、体力面では自信のない私としては「引越しすべてお任せパック」に頼るしかないのだ。 ところがこの「お任せパック」も至ってクセもので、派遣されてくるパートの荷造りおばさんが私相手に苦情を露にしようとするのである。 その苦情の雰囲気を察知して、結局は私も一日中梱包開梱作業に加わり“細腕”で重い荷物を持たざるを得ないのである…  子どもの世話と同時に、パートのおばさん達に配慮して苦悩し、後々疲れ果てて寝込んでしまいそうな私であったものだ。 (結論として、引越しとは気心知れた家族内で喧嘩しつつも行った方がいいと感じる我が人生における失敗談である。)

 そんな原左都子も、引越しの利点は大いに享受しているのだ。
 そもそも、何故我が家が幾度にも及んで住居買い替えを繰り返さざるを得なかったのかの第一の理由とは、我が子が多少の事情を抱えて生まれて来ているからに他ならない。 所属学校で我が子がいじめに遭遇してまったり、担任が許容できない人物であった場合、その場を逃れる事こそが一番手っ取り早い方策であろう。 引越しという手段により、娘が逃れようがないその種の難関をクリアしてきている我が家とも考察できるのである。

 それはそうとして、実際問題一般人にとって引越しとは、これまでの人生を“リセット”して新たに出発できるまたとない手段なのではなかろうか?
 我が家の引越し理由の一つに関して子どもの“いじめ対策”をその理由として語ったが、それは我が子が苦悩を余儀なくされる環境から親である私自身が気持ちを切り替えられる、大いなる再出発地点であったとも考察できるのだ。


 それにしても、福島第一原発のトレンチ内の水位は上昇を続けるばかりである。 4基の原子炉冷却目的で巨量の真水を注入し続けねばならぬ現状において、それは致し方ない事であろう。  
 一方、海面への汚染水の出口を塞いだという報道にもかかわらず、どうやら放射能高汚染水が相変わらず海水中に紛れ込み、そして地下水を通じて土壌を汚染し続けている模様である。
 今後しばらくは真水による冷却により4基から放射能高度汚染水を排出し続ける現状において、その汚染水を保存する手段を早急に検討して欲しいものであるが、これに難儀しているのが東電の実態のようだ。
 このような“レベル7”の現状においては、原発近隣地域の住民の皆さんは避難所生活をいつまで余儀なくされ続けるのかの見通しもたたないという事であろう。

 この期に及んで原左都子の“引越し嫌い”など、まさに我がままの範疇であることを思い知らされると言うものである。
 そんな私は、せめても福島原発避難者の皆さんの一時帰宅がたとえ短時間であろうと安全性を確保した上で早急に実行されることを願いたい思いだ。
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