原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

帝王切開麻酔ミスで母娘植物状態ニュースに背筋が凍る…

2017年06月06日 | 医学・医療・介護
 いえいえ、私の23年半前の「帝王切開手術」の場合は決して「麻酔ミス」ではなかっただろう。

 私の事例は、行きつけの産婦人科医院より救急車にて大病院へ運ばれた後の緊急帝王切開手術だったため、むしろ麻酔が効かないまま手術に入った。
 
 手術室が切羽詰まった雰囲気の中、麻酔が効かず激しい陣痛の痛みが収まらず悪寒と全身の震えがガタガタと止まらない私はすぐさま手術台に寝かされ、何人かの看護師氏に押さえつけられた状態で腹部切開に入った。
 「痛い!やめてくれ!!」と何度大声で叫んだ事だろう。
 お腹の赤ちゃんが取り出される時に、腹部が陰圧状態になるのを実感した。 この時初めて、子どもが体内から外に出されたと一旦安堵出来た。
 その後直ぐに腹部縫合に入るのだが、この一針一針がグサリグサリと耐え難く痛い! 「もういい! やめて! 早く終わってくれ!」を何度か叫んでいるうち、手術は終了したようだ。
 憔悴し切っている私の耳に「脈拍はいくつ!」「血圧はいくつ!」等々の看護師氏の切羽詰まった声が響く。
 これで私の命は絶え果てるのか……  と覚悟を決めかけたところ、

 死にかけていたのは娘の方だった… 

 既に救急車の中で、連続した激しい陣痛と「いきみ」に襲われていた。 手術前に「いきみ」が抑えられずいきむと「いきむな! 我慢せよ!」の看護師氏のご指導。  
 体内で逆子だった娘を普通分娩で産んだのでは必ずや死に至ったであろう事を鑑み、生きさせるための緊急帝王切開手術だった。

 そうやって仮死状態で誕生せざるを得なかった娘とサリバン母である私との二人三脚の人生が、23年半前に開始し現在に至っている。


 本日(6月6日)午前中、帝王切開手術に関する悲劇のニュースを見た。

 以下に紹介しよう。
 帝王切開の際の麻酔のミスにより、妊婦だった女性(38)と生まれてきた長女(1)がともに寝たきりの植物状態になったとして、女性の夫(37)と両親らが、京都府京田辺市の医院を相手取り、損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こしたことが5日分かった。
 「1時間くらいで生まれてくるだろう」。 新たな家族と対面するうきうきとした気持ちは、一瞬で暗転した。 産科麻酔のミスで妻子ともに意識障害に陥ったとして、入院先を提訴した夫(37)が同日、取材に応じ「妻と娘に対する責任をとってほしい」と心境を明かした。
 無痛分娩が浸透している米国に夫婦で暮らしていた経験から、麻酔投与にもともと抵抗はなかった。 今回の医院を選んだのも自宅近くにあり、ホームページで無痛分娩の実績をアピールしていたからだ。
 長男(2)も同医院で無痛分娩により出産。それが「人生最良の日だった」という。長女も同じようにするつもりだったが、逆子のため帝王切開をすることに。 それでも夫妻に不安はなく、新たな最良の日を迎えるつもりだった。
 分娩当日、別室で待機していると、妻に呼びかける大きな声と、頬をたたく音が漏れ聞こえてきた。 室内に入ると、真っ青な唇で意識を失った妻がいた。 体も冷たくなっていた。
 そのとき医師からは「アレルギーショックだろう。大丈夫です」と説明を受けたという。 だが搬送先の総合病院では「全脊髄麻酔の影響だろう」と言われた。「麻酔方法、管理のミスがあった」との疑念が深まった。
 あれから1年余り。 入院を続ける妻のもとへ週4回は通っている。 長く植物状態だった妻は最近ようやく、目配せやうなずくことができるようになった。 だが、首から下は一切動かないまま。 別の病院にいる長女は自発呼吸ができない危険な状態が続く。 泣き声は一度も聞いたことがなく、対面するたび心の中で長女にわびているという。 夫は「長男も入れて家族4人で遊びたかった。今も絶望の中にいる」と話した。
 (以上、ネットニュースより引用したもの。)


 偶然ながら、上記の現在植物状態を余儀なくされている妊婦だった女性と私が娘を緊急帝王切開手術にて産んだ年齢が38歳と同一だ。
 私が出産してから既に23年の年月が流れ、現在に於いては30代後半以降の女性の高齢出産は珍しくもなくなっているのかもしれない。

 何が運命を分けたのか?


 私の場合も、出産直後はそれはそれは大変な目に遭った。

 手術後、担当医師より患者である私本人には何らの説明もなかった。 看護師氏等にそれとなく質問しても、「誕生後直ぐに保育器に入れた。当病院では帝王切開手術の場合いつもそうしている」と応えたのみで、後はノーコメントだった。 どうやら娘が「仮死状態」で誕生した事実は、病院の方針により伏せられていたようだ。
 出産に際し待合室にいた義母が手術を終えた医師を掴まえて、「手術はどうでしたか?」と一言聞いたところ、「赤ちゃんの頭部が圧迫状態だったため、もしかしたら後々脳に障害が出るかもしれません。」と応えたとのことだ。
 私が義母からその話を初めて聞いたのは、なんと!娘が2歳になった時だ。 その頃「2歳過ぎても発語が出ないし、誕生以来どうもすべてに於いて発育の遅れがあるような気がする。」と私が騒ぎ始めた時に、やっと亭主を通して私に告げたのだ。
 「何でそんな大事な事を医学関係者である私に今まで黙っていたの!!」と怒り心頭の私に対し、「〇子の産後の体調が良くなかったし、一見して娘は普通に見えるし、何も大騒ぎして〇子にさらなるダメージを与えるのはやめよう、との自分と義母との〇子に対する配慮だ。」との亭主の話だった。

 それからが大変。 直ぐに専門病院へ娘を同伴して詳細に及ぶ問診や諸検査等を実施した。 そうしたところ、医師の診断はやはり「発達に若干の遅れが見られる」との結論だった。
 その時点から私は「サリバン先生」と化し、本格的に娘との二人三脚の歴史を歩み始める。

 ただ後に考察するに、確かに義母と亭主の判断は正しかったとも思えるのだ。
 何らかの障害を抱えていようが、(特に脳の場合)それが顕著に表出し始めるのは2歳頃からかもしれない。 出産後の体調の悪い時期に、もしも「あなたが産んだ子は脳に障害があるかもしれないわよ」と義母に言われたものならば我が体調は悪化を辿り、もしかしたら産んだ我が子の子育てもままならなかった事態も考えられる。
 今となっては、よくぞまあ義母はそんな“医師からの衝撃発言”に2年間も一人で耐え忍んでいたものだと、感謝の念すら抱く。
  

 話題を、上記ネットニュースに戻そう。

 この事例の場合、明らかに帝王切開手術担当医師のミスが認められそうだ。 手術時の麻酔ミスを、「アレルギーショック」と医師が家族に告げている故だ。
 何故、麻酔ミスならそうと当初から告げなかったのだろうか???


 最後に、私論に入ろう。

 我が出産時の経験から考察して、赤ちゃんとは妊婦が普通分娩で産んでくれさえすれば、担当医師としては「頑張れ!」と声掛けだけすれば万々歳である事実も重々承知している。
 私が24年程前に通っていた産婦人科医院でも、医師があからさまに高齢妊婦である私に常に辛く当たっていた事実に鑑みて、マイナスイメージでそんな事は重々承知だ!

 我が記憶によれば、「普通分娩」で産もうが「帝王切開手術」で産もうが “保険点数”が同一との記憶があるのだが…
 これでは、担当医師が「帝王切開手術」に及ぶに当たり、「何で帝王切開が必要な鬱陶しい患者に当たってしまったのか!?!」と落胆するのが患者側の私にも目に見えてしまうのだ。

 ここは、健康保険制度の改革を要するのか、と考えたりする。
 母体から生まれ出る命に格差がないとしても‥…
 それを取り上げる医師側にその技術格差が現存しているとするのならば、医師側の意見を少しは聞いてみるのも良いかもしれない……
 むしろ、そうでもして貰わない事には、高齢にて出産したい女性達にとっては医師側の差別待遇に耐えられないと言いたくもある。
 高齢出産経験者としては、「自費でカネ出すから、万全を期した体制下でちゃんと産ませてよ!」 と主張したくもなる。