現在は、比較的大人しく問題行動もなく高齢者介護施設にて平穏に暮らしている郷里の実母だが…
施設入居前までは私が郷里の実家に帰省すると、必ずや開口一番私に遠慮なく投げかける言葉があった。
「また、そんな派手な格好で帰って来て! 恥ずかしからスカート丈をもっと長くして年相応の服装をしなさい!」
いきなり怒り心頭の私だが、いつもの決まり文句故に無視して聞き流す。
そんな口の悪い実母だが、実は娘のその派手な姿が母にとってまんざらではない事にも私は気付いている。 親の欲目には間違いなかろうが、自分の娘が何歳になってもスラリとした足をしてミニスカートがよく似合っている(??)事を決して悪くは思っておらず、実は肯定的に捉えている事も私は知っている。
それが証拠にこの悪口は帰省直後にただ一度発するのみで、その後はむしろ「いつまでもそんな格好が出来ていいねえ」と表現が軟化していくのだ。
私が一番ムカつくのは、母の発言内の「恥ずかしい」なるフレーズだ。
一体何に対して「恥ずかしい」と母は考えるのか?
それはおそらく世間体であろう。 だが、郷里に帰省したとて特段母にとっての重要人物と面会するでもない。 会うのはせいぜい親戚やご近所の皆さん程度だ。 その人達にとって、私が派手な格好をしている事実がどれ程までに「恥ずかしい」と母は言いたかったのか。 むしろ私の格好を肯定的に捉えて下さる方々が多数で、「やっぱり東京に住んでいる人は違うなあ」なる賞賛(?)の評価を少なからず頂いたものだ。
私の派手な格好のために実母がその後自分自身の評価を下げたとも、ただの一度も聞いた試しがない。
冒頭から私事が長引いたが、ここでテーマを大きく変えよう。
我が娘が私立高校生だった時に、学校から とある「外見」に関する“指導”を受けた事がある。
その真相とは、そもそも娘が持って生まれた若干の事情に基づく病変が原因だった。 若干の事情を抱えてこの世に生まれざるを得なかった娘は、幼少の頃より医学的にも説明が困難な“奇病”を幾つも発症する運命にあった。
その一つが、娘が小学校6年生時より眉部分に発症した「抜毛性脱毛症」だった。(正確には「抜」の字が異なるが。)
早々に専門皮膚科を受診したのだが、その原因も不明ならば、何時完治するかの予想もつきにくい奇病との専門医師の説明だった。(要するに本人が無意識のうちに抜いているとの事のようだが、本人に一切の自覚症状が無ければ、それを周囲が責め立てる事は大いなるマイナスとなるため、そのまま放置するしか方策が採れない奇病だ。) ただ医師の指導に我々親子は大いに安堵した。 医師先生曰く「眉に眉墨を塗ればOKですよ! 女性の皆さんは普通に眉墨を塗っています。 何も問題はありません。 もし学校から眉墨を使用する事を指摘されるようなことがあるのならば、私の方から『証明書』を発行します。」 とのご指導で、小学校、中学校には皮膚科医師が発行して下さった「抜毛性脱毛症証明書」を提出して事が済んだ。
我が娘の場合高校は内部進学のため、中学時代に提出した「医師による証明書類」の効力が持続するものと考えていたところ、我が考えが甘かったようだ。
高校の生活指導教員より、「眉墨を塗るのは禁止行為!」なる厳しい指摘を受けたと娘が私に訴える。
この事件は、母(サリバン)の私にとっては幾重にも悔しく愕然とさせられる大打撃だった。
誰も好んでこんな病気になど罹患していない! それでもやむを得ずその病状を隠すがために未だ少女段階の娘に眉墨を使用させている親の苦悩も分からずに、何故、学校側はこれ程までに否定的かつ攻撃的な仕打ちを我々母娘にして来るのだ!?? そもそも貴方達が学校の教員足り得るのならば、娘の日頃の姿をとくと見てごらん。 この子が、お洒落をして目立ちたいがために眉墨を塗る女生徒である訳も無いはずなのに‥‥
とのサリバンの激しい怒りの程は心中に抑え、私は再び娘が「抜毛性脱毛症」との奇病に罹患しているがために眉墨を使用せねばならない現状を高校へ冷静に訴え出た。 その後、高校側からは一切娘が眉墨を使用している件に関しての指摘は無かった。
(参考だが、娘の抜毛性脱毛症は社会人2年目に突入している未だ完治しておらず、眉墨を塗る日々だ。 もしかしたら、元々アトピー体質の娘にとって眉墨を塗る行為自体がその完治を阻止しているのかとも考えるサリバンだが…)
現在の学校現場では、「地毛証明書」なる代物を提出させている悲惨な現状と聞く。
これに関する某都立高校に於ける実態を、朝日新聞2017.8.21 朝刊記事より引用しよう。
都立高校全日制に通う約6割の生徒が髪の毛を染めたりパーマをかけていないかを見極めるため、一部の生徒から「地毛証明書」を提出させている。 裏付けのために幼少期の写真を求める高校もあり、専門家からは疑問視する声も出ている。 保護者が生徒の髪の特徴を記入して押印する形が多い。
(以下略するが、朝日新聞記事より引用したもの。)
これなどむしろ学校現場の指導のし易さこそが優先された挙句の果ての、人権無視にまで目的意識が履き違えられた結果の産物でしかないであろう。
朝日新聞記事によれば、各界の有識者達も様々なご意見を述べているようだ。
「学校側としては筋が通っていても、全体としての多様性を抑制している。」 「髪を染めた人が不良、不真面目との認識モデルを疑うべき」 等々…。
最後に、原左都子の結論でまとめよう。
我が娘が高校側から「眉墨を塗っている!」との生活指導教員に指摘された事実とは、上記の学校現場事態と比較して、おそらく例外中の例外だった事であろう。
ただその後も未だに抜毛性脱毛症が収まる気配がない娘は、毎朝丹念に眉毛を人工的に書き上げ、職場へ通う日々だ。 それを傍から見つつ、職場では眉墨を書いたからとて「指導」の対象とならぬ事態に心底安心しているサリバンの私だ。
「地毛証明書」提出ねえ。
そんな失礼な事態をたとえ相手が未成年の高校生とは言えども、何とも思わず実施しているのは世界広しと言えども、この島国 Japan のみではなかろうか??
それが発展する(後退すると)、この国では「還暦を過ぎたおばさんがミニスカを履くためには証明書提出が必要だ!」と言い出しかねない恐怖感すら私は抱かされる。
(え~~!? その姿を見せられる方こそが恐怖だから「ミニスカ証明書」提出に同感だって!!?!)
施設入居前までは私が郷里の実家に帰省すると、必ずや開口一番私に遠慮なく投げかける言葉があった。
「また、そんな派手な格好で帰って来て! 恥ずかしからスカート丈をもっと長くして年相応の服装をしなさい!」
いきなり怒り心頭の私だが、いつもの決まり文句故に無視して聞き流す。
そんな口の悪い実母だが、実は娘のその派手な姿が母にとってまんざらではない事にも私は気付いている。 親の欲目には間違いなかろうが、自分の娘が何歳になってもスラリとした足をしてミニスカートがよく似合っている(??)事を決して悪くは思っておらず、実は肯定的に捉えている事も私は知っている。
それが証拠にこの悪口は帰省直後にただ一度発するのみで、その後はむしろ「いつまでもそんな格好が出来ていいねえ」と表現が軟化していくのだ。
私が一番ムカつくのは、母の発言内の「恥ずかしい」なるフレーズだ。
一体何に対して「恥ずかしい」と母は考えるのか?
それはおそらく世間体であろう。 だが、郷里に帰省したとて特段母にとっての重要人物と面会するでもない。 会うのはせいぜい親戚やご近所の皆さん程度だ。 その人達にとって、私が派手な格好をしている事実がどれ程までに「恥ずかしい」と母は言いたかったのか。 むしろ私の格好を肯定的に捉えて下さる方々が多数で、「やっぱり東京に住んでいる人は違うなあ」なる賞賛(?)の評価を少なからず頂いたものだ。
私の派手な格好のために実母がその後自分自身の評価を下げたとも、ただの一度も聞いた試しがない。
冒頭から私事が長引いたが、ここでテーマを大きく変えよう。
我が娘が私立高校生だった時に、学校から とある「外見」に関する“指導”を受けた事がある。
その真相とは、そもそも娘が持って生まれた若干の事情に基づく病変が原因だった。 若干の事情を抱えてこの世に生まれざるを得なかった娘は、幼少の頃より医学的にも説明が困難な“奇病”を幾つも発症する運命にあった。
その一つが、娘が小学校6年生時より眉部分に発症した「抜毛性脱毛症」だった。(正確には「抜」の字が異なるが。)
早々に専門皮膚科を受診したのだが、その原因も不明ならば、何時完治するかの予想もつきにくい奇病との専門医師の説明だった。(要するに本人が無意識のうちに抜いているとの事のようだが、本人に一切の自覚症状が無ければ、それを周囲が責め立てる事は大いなるマイナスとなるため、そのまま放置するしか方策が採れない奇病だ。) ただ医師の指導に我々親子は大いに安堵した。 医師先生曰く「眉に眉墨を塗ればOKですよ! 女性の皆さんは普通に眉墨を塗っています。 何も問題はありません。 もし学校から眉墨を使用する事を指摘されるようなことがあるのならば、私の方から『証明書』を発行します。」 とのご指導で、小学校、中学校には皮膚科医師が発行して下さった「抜毛性脱毛症証明書」を提出して事が済んだ。
我が娘の場合高校は内部進学のため、中学時代に提出した「医師による証明書類」の効力が持続するものと考えていたところ、我が考えが甘かったようだ。
高校の生活指導教員より、「眉墨を塗るのは禁止行為!」なる厳しい指摘を受けたと娘が私に訴える。
この事件は、母(サリバン)の私にとっては幾重にも悔しく愕然とさせられる大打撃だった。
誰も好んでこんな病気になど罹患していない! それでもやむを得ずその病状を隠すがために未だ少女段階の娘に眉墨を使用させている親の苦悩も分からずに、何故、学校側はこれ程までに否定的かつ攻撃的な仕打ちを我々母娘にして来るのだ!?? そもそも貴方達が学校の教員足り得るのならば、娘の日頃の姿をとくと見てごらん。 この子が、お洒落をして目立ちたいがために眉墨を塗る女生徒である訳も無いはずなのに‥‥
とのサリバンの激しい怒りの程は心中に抑え、私は再び娘が「抜毛性脱毛症」との奇病に罹患しているがために眉墨を使用せねばならない現状を高校へ冷静に訴え出た。 その後、高校側からは一切娘が眉墨を使用している件に関しての指摘は無かった。
(参考だが、娘の抜毛性脱毛症は社会人2年目に突入している未だ完治しておらず、眉墨を塗る日々だ。 もしかしたら、元々アトピー体質の娘にとって眉墨を塗る行為自体がその完治を阻止しているのかとも考えるサリバンだが…)
現在の学校現場では、「地毛証明書」なる代物を提出させている悲惨な現状と聞く。
これに関する某都立高校に於ける実態を、朝日新聞2017.8.21 朝刊記事より引用しよう。
都立高校全日制に通う約6割の生徒が髪の毛を染めたりパーマをかけていないかを見極めるため、一部の生徒から「地毛証明書」を提出させている。 裏付けのために幼少期の写真を求める高校もあり、専門家からは疑問視する声も出ている。 保護者が生徒の髪の特徴を記入して押印する形が多い。
(以下略するが、朝日新聞記事より引用したもの。)
これなどむしろ学校現場の指導のし易さこそが優先された挙句の果ての、人権無視にまで目的意識が履き違えられた結果の産物でしかないであろう。
朝日新聞記事によれば、各界の有識者達も様々なご意見を述べているようだ。
「学校側としては筋が通っていても、全体としての多様性を抑制している。」 「髪を染めた人が不良、不真面目との認識モデルを疑うべき」 等々…。
最後に、原左都子の結論でまとめよう。
我が娘が高校側から「眉墨を塗っている!」との生活指導教員に指摘された事実とは、上記の学校現場事態と比較して、おそらく例外中の例外だった事であろう。
ただその後も未だに抜毛性脱毛症が収まる気配がない娘は、毎朝丹念に眉毛を人工的に書き上げ、職場へ通う日々だ。 それを傍から見つつ、職場では眉墨を書いたからとて「指導」の対象とならぬ事態に心底安心しているサリバンの私だ。
「地毛証明書」提出ねえ。
そんな失礼な事態をたとえ相手が未成年の高校生とは言えども、何とも思わず実施しているのは世界広しと言えども、この島国 Japan のみではなかろうか??
それが発展する(後退すると)、この国では「還暦を過ぎたおばさんがミニスカを履くためには証明書提出が必要だ!」と言い出しかねない恐怖感すら私は抱かされる。
(え~~!? その姿を見せられる方こそが恐怖だから「ミニスカ証明書」提出に同感だって!!?!)