原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

米国の甥がNASAに就職内定、喜ぶべきだろうが…

2018年05月27日 | 仕事・就職
 私には、米国在住の日米ハーフの甥がいる。
 何故ならば、実姉が米国男性と国際結婚にて米国に渡り、その地で甥を産んだからだ。

 ところが、私はこの甥に未だかつて会った事が無い。 
 実姉が大の日本嫌いを貫いているため、米国へ渡った切り一時帰国すら拒み続けている故だ。
 甥に日本語を使用させない教育も徹底していて、甥はせっかくの日米ハーフにもかかわらず日本語を露知らずして米国で育ってきている。


 私も高齢出産だったが、姉は私に輪をかけての超高齢出産、43歳時に甥を米国で産んだ。
 ただ、運命とは分からないものだ。 
 私が我が娘を“超難産”の末に仮死状態で産んだのに対し、姉は“超安産”にて軽々と甥を出産し、翌日には退院して普通に暮らし早期に職場(米国日本総領事館勤務だが)復帰した様子だ。 
 当時は未だ日米間で医療体制や出産に関する捉え方や措置も大きく異なったことだろう。

 いずれにせよ、出産時に“超難産”だったか “超安産”だったかの180度の差異により、その後の子育てに於いて、また我々姉妹はその後の人生に於いて大きく明暗を分ける運命を背負わされたようだ。


 我が娘に関する指導教育に関する詳細記述はここでは省略するが、母親である私が娘のサリバン先生として一生かけて二人三脚で娘と共に歩み続ける覚悟があることは、既に幾度もバックナンバーにて公開している。

 片や米国の甥だが、幼少の頃よりその“神童”ぶりに周囲親族皆が目を細めていた様子だ。
 しかもルックス抜群、17歳時既に身長が189cm(米国男性にしてはそう珍しくもないのだろうが)、その長身を生かしバスケットボールにも励んでいたらしい。
 末はプロバスケットボール選手でミリオネアかと思いきや、その傍ら高校生時代は理系進学を目指し勉学に励み、州立大学へ難なく合格。 
 そして大学にて更なる理系学問勉学に励んだ後の、今回の甥のNASA就職内定の快挙のようだ。


 私がこの速報を知ったのは、郷里高齢者自立支援施設に暮らす実母から本日午前中に電話が入ったことによる。
 それはそれは実母が電話口ではしゃぎつつ、それを私に伝えた。

 実母からの電話に関してだが、私の方から嘆願して決して真夜中の電話は避けて欲しい旨を先だって伝えたばかりだ。
 その案件があった後、しばらく実母からの電話着信を回避出来るものと安堵していたのだが…

 本日実母から掛かって来たのが、米国甥のNASA就職内定の電話……

 これを聞かされて、次女の私が心底喜ぶとでも思ったのだろうか………
 いやもちろん、全身全霊の演技力で「良かったね。〇〇くんがいい職場に就職出来て。」と開口一番実母に伝えたよ。
 そこまでで勘弁して欲しいサリバンの私が歩んで来た厳しい子育ての歴史が、アイツ(実母)には分からないのか??
 と思う暇もなく、実母が電話口ではしゃぎ続ける。 「〇〇くんは、小さい頃から頭のいい子だったのよ。私が米国に行った時にも私が教えた日本の歌を直ぐに覚えたし、その後も拙い日本語力で私に電話をかけて来て喜ばせてくれたのよ!」 「あの子はね。 その後も理系の勉強をとことん頑張ったんだよ。 だからこそ、こうやってNASAに就職出来るんだよ…」
 (それに引き換えあんたの娘は不甲斐ないねえ、とはさすがに実母も言わなかったが、私の耳にはその声が響き渡った…… )
 

 いくら老けたからといって、これだけ自分が産んだ娘の片方である次女の心理を完全無視する実母がこの世に存在して、許されるものなのだろうか??
 しかも、実母が日頃世話になっているのは一生に渡りその次女の私だ。 何か困惑した出来事があると、必ずや次女である私に電話を寄越す。 それは米国在住の長女に関する苦情とて然り!
 何度、米国に住む長女に関する苦悩の程を実母から聞かされ続けていることだろう。

 そこで私も勇気を持って、その思いを電話口の実母に少しだけ説教した。
 「人生って波があるものなのよ。 今は米国の姉も甥の就職内定に浮かれているのだろうが、そのうちまた貴方に電話口で泣きつく時期が訪れるよ。 次女の私としては既に米国の姉一族とは縁を切っている立場だ。 それなのに母の貴方は、いつまでも私に米国の姉の不祥事の際に私に泣きつく癖が治らない。 今後は私が現在置かれている立場にも、少しは配慮してくれないかなあ。」

 ところが、高齢者とは実に困難な相手だ。
 実母が聞いたのは、最後の「私が現在置かれている立場にも少しは配慮してくれないかなあ。」のみだった。
 それに関しては、「よ~~く分かっている。貴方が日々苦労していることは。」と応えるものの…。
 その後の実母からの話題は、すぐさま米国の孫の快挙に戻ってしまった。
 それを私がもう一度聞いてやった後。 「〇〇くんは凄い。私の誇りだ!」と実母からの電話は締めくくられた。


 そんなにも孫の快挙とは、高齢者にとって「誇り」となるものなのか??

 いえいえ、ご自身が直接孫の世話をしている身ならば、その孫の快挙を喜ぶ心理も分からなくはない…

 実母の場合、米国の孫に対しては実質面でも金銭的にも何らの支援もしていない立場。 しかも、その母親である実姉からは「葬式にも帰らない!」と直言されている身にして、何故、実母がこれ程までに孫の快挙を喜ぶのか!??
 実質問題、自分の血を受け継いでいる(だからこそ孫は優秀だ!と信じたい)との理由しか、私には見つからないのだが……

 おそらく「孫」とは一生に渡り縁が無いであろう私にとっては、空虚感漂う実母からの本日の電話だった。