原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

健康とは “病気が無い” ことか??

2022年05月13日 | 医学・医療・介護
 久しぶりに、朝日新聞「書評」ページよりエッセイの題材を得よう。


 朝日新聞2022.05.07付「書評」のひとつは、西平等著「グローバル・ヘルス法」に対する 法政大学教授・政治思想 犬塚元氏による「『健康』めぐり二つの理念が対抗」だった。
 早速以下に、その書評の一部を要約引用しよう。

 当書は、国境を超える保健協力の歴史をたどった傑作だ。
 健康とはどんな状態かをめぐる、二つの考えの対抗に注目して歴史を読み解いた著者の視点が、叙述に迫力を与えている。 
 健康とは病気がないこと。 保健は医学や化学の課題であり、ワクチンや殺虫剤散布のような技術的手段で感染症を制する。 こうした一方の考え方に対して、他方には、病原体を防ぐだけでなく、衛生的で豊かな社会を目指す考えがある。 生活環境、栄養や知識の状態、労働条件や貧富によって感染しやすさは変わるからだ。
 世界保健機構(WHO)の憲章は、後者の包括的な考えを採用して、「健康とは身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態のことであって、単に病気や虚弱が存在しないことではない」と定めた。 (中略)
 (感染症等が世界規模で流行すると)、各国が過剰な入国制限をしがちなので、合理的な合理的な検疫隔離体制をつくる。 これが19世紀における国際協力の出発点だったが、既視感があろう。(中略)
 感染症対策は医学者に任せて、その社会的悪影響を経済学者が是正する。 この分業では駄目だろうか。 本書が示唆するのは、感染症対策そのものに、社会と人間をめぐる学問(人文社会科学)が積極的に関わる必要である。 対応するべきはウィルスだけではない。 感染リスクやその格差を減らすために、メスを入れるべき社会の歪みがないだろうか。

 (以上、朝日新聞「書評」ページより一部を引用したもの。)




 原左都子の私事及び私見に入ろう。

 つい先だって、高齢者介護施設に暮らす義母と面会して来たばかりだが。
 その義母の「健康」ポリシーとは、まさに「病気で無いこと」それのみである。
 これは今に始まったことではなく、亭主と晩婚当初(当時の義母は現在の私よりずっと若い未だ60代前半期だったが)より、そのポリシーに固執している人物だった。
 とにかく何らかの身体の異変があれば「すぐにお医者さまに診ていただく」、これを有言実行する人物だった。

 まあこれが功を奏して我が晩婚早期に“妊娠の兆候”が表れた時には、自ら優先して自分が通っている産婦人科へ連れて行ってくれたのだが。
 あの時は嬉しかった。 元医学関係者であるこの私とて、初めての妊娠に当然ながら不安があった。 しかも我が妊娠は「〇高」。(高齢者妊娠に対して、当時このようなレッテルが貼られたものだ。 今の時代にはまったく聞かなくなったが。)
 参考だが、義母が連れて行ってくれた産婦人科の医師は、「〇高」女性に対する理解・応援度が高い人物で、当時私が現役の高校教師であることを告げると、「全く大丈夫です、今まで通り普通に仕事に励んで下さい」とのエールを送って下さったものだ。

  
 話題がずれたが、元医学関係者であるこの私も当然ながら、そもそも義母とは健康・医療に関する考え方が大きく食い違っていて。
 要するに上記引用文中にある通り、「病原体を防ぐだけでなく、衛生的で豊かな社会を目指す」ことこそが健康の定義であると心得ていた。

 義母のように、自身の体内に何らかの不都合が発生するとすぐさま主治医を訪ね、診察・検査を実施し疾患名を明らかにして、その結果の対応策として投薬をする。 これぞ健康でいられる鉄則と考えるその単純さを、正直言ってずっと軽蔑し続けている。
 その私の考えを一度義母に持ち出したことがあるような気もするが、義母から一蹴されてしまった記憶もある。 「駄目よ、医者に診てもらわなくちゃ!」と。
 それ以降は、一切義母へのご意見は遠慮している。😷 

  

 さて、上記引用文章の結論とは。
 「感染症対策は医学者に任せて、その社会的悪影響を経済学者が是正する」この部分にあるようだが。

 現在既に2年半に渡り世界規模で大流行中の「新型コロナウィルス感染症」だが。
 これに関してはまさに日々メディアを通して、種々の学問分野からの専門家が様々なご意見を述べておられる印象がある。

 そのような議論がなされること自体は有益、と私も捉えている。


 ただし、やはり医学医療の要である医学者・医療関係者の指示・指導こそが最優先されるべきと私は考える。

 学生時代及び現役時代には、他の学問分野に於いては想像がつかない程の実験・研究・実習に励み、自分の医学分野を極めてきているのが医学者の特徴であろう。
 そんな経験に基づきメディアに登場する医学関係者の皆様も、ものを言っておられると想像する。

 いやもちろん、「感染症対策は医学者に任せて、その社会的悪影響を経済学者が是正する。」その思いの程は理解申しあげたい。


 ただし、今回の新型コロナウィルス感染症のように、次から次へと新型が出現して、その対策を医療現場でも手を焼いている真っただ中で。
 
 「社会的悪影響」自体も、感染症の実態と共に浮き沈みする運命にあるのではなかろうか??
 それを経済学者が是正するには、その是正の程も浮き沈みする運命にあるであろうとすれば。

 世の人民をこれまた更なる不安定感に晒さざるを得ないかと、結論申し上げたい。
  

この記事についてブログを書く
« 今年も長野県伊那市より初夏... | TOP | 早く話し始める子と遅い子の... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 医学・医療・介護