礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

司法資料290号『原住民司法論集』(1945)

2014-08-17 04:01:05 | コラムと名言

◎司法資料290号『原住民司法論集』(1945)

 先日、神保町の古書展で、『原住民司法論集』(司法資料第二九〇号)という珍しい資料を掘り出した。二〇〇円だった。奥付はないが、表紙のタイトルの左に、「司法省秘書課」とあり、表紙右側の背表紙に近いところには、小さく、「【禁転載】 (昭和二十年十二月)」とあった。
 本日は、この資料の「序文」を紹介してみよう。なお、序文の最後には、「昭和十九年二月/司法大臣官房秘書課」という署名がある。すなわちこの資料は、今次大戦の末期に、その原稿が完成していたものが、敗戦後になって刊行されたことになる。

 序 文
 広大な南方諸地域を含む大東亜共栄圏の建説に関連して、原住民司法についての新なる関心が生じてゐる。本号には、現地軍政当局作成の若干の資料と比較的最近の独英比較法雑誌(Zeitschrift für vergleichende Rechtswissenschaft; Journal of Comparative Legislation and Internation Law)所載論文を中心として、原住民司法に関連する論文を収録した。概略的に分類すれば、本号に収めたものゝ内、一乃至三は夫々〈それぞれ〉ジャワ・スマトラ・マライに於ける戦前の司法概要に関する現地軍政司法当局作成の資料、四と五は旧蘭領印度に於ける司法の一般的問題に関する論述、六は原住民法及び植民地法に関しての比較法学の意義の略述、七乃至一二はアフリカに於ける独英仏の原住民司法に関するもの、一三は仏印其の他に於ける原住民基督教徒と適用法に関する論述である。
 これら諸編に取扱はれてゐる事項は多岐に亘るから、以下これらを列挙し其の出所を示すと共に取扱事項の概要を摘示する。
一、「ジャワに於ける司法」the Judicature in Djawa, by Raden Soepomo. スポモ氏はジャワ人・ライデン大学〔オランダ〕卒・元バタビヤ法科大学教授、皇軍進駐後我が軍政司法に協力活動中である。本編は同氏かジャワ軍政司法当局の為めに英文で記述したものゝ邦訳であつて、戦前に於けるジャワ司法制度の概要を知るに最も適切なものである。将来の司法についても若干の提言が為されてゐる。
二、「戦前に於けるスマトラの司法制度概要」、スマトラ司法資料第二九号。これは同じくスポモ氏の記述に係るNote about the judicature in Sumatra なる英文資料をスマトラ軍政司法当局に於て邦訳したものであり、旧蘭印外領の一つとしてのスマトラの司法制度を知るに好個の資料である。【以下、三~一三までの説明を略す。そのあとの結論部分の紹介は、次回】

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