◎日本経済新聞の「春秋」欄に知性を見る
一昨日(二五日)の日本経済新聞のコラム「春秋」は、アメリカの写真家ジョー・オダネルさんのことを紹介していた。
昭和20年の夏も盛りを過ぎたころ。占領軍の一員として日本に上陸した米国の従軍写真家ジョー・オダネルさんは福岡の農村で、ある墓を見る。木で手作りした十字架に、「米機搭乗員之墓」とある。墜落した米軍機の搭乗員を、地主夫妻が手厚く葬ったものだと知る。
▼「墜落した飛行士も気の毒な死者のひとりですよ」と地主の妻は語った。別の日、ある市の市長宅でごちそうを振る舞われる。奥さんが作ったのだと考え「奥様にお会いしたい」と請うと、市長は穏やかに答えた。「ーカ月前の爆撃で亡くなりました」。オダネルさんは動揺し、おわびを述べ、逃げるように宿舎に帰った。【中略】
春秋子は、このコラムを、次のような言葉で締めくくっている。
▼日本の最大の資産は誠意、寛容、潔さを備えた日本人だとの説がある。戦後、政府と占領軍の交渉でも日本側の誠意が米側の好意を引き出したと、五百旗頭真〈イオキベ・マコト〉氏は「占領期」に書いている。オダネルさんの場合も市井の日本人が元敵兵の価値観を変えた例だ。毎年この時期、混乱の中で礼節を失わなかった先人たちを思う。
なかなか良い話だと思う。日経新聞の「春秋」欄、あるいは「大機小機」欄には、ときどき、ジャーナリストの知性・理性を感じさせる文章が載る。もちろん、上記のコラムもそのうちのひとつである。
しかし、不満がないわけではない。もし、これをいうならば、今日、一部民衆、一部政治指導者のなかに、日本の最大の資産である「誠意、寛容、潔さ」を欠落させている者があらわれており、しかもその傾向が、一部ジャーナリズムによって煽られている事実を、春秋子は、ハッキリと指摘すべきであったと思う。
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