23日の毎日新聞の政治コラムにこんな記事があった。「モンスターゆえに」と題され、日銀総裁選出を民主党など参院野党に拒否された元大蔵事務次官・武藤敏郎氏にかかわる記者の思い出を述べている。
まずその書き出しからして、大蔵次官が政治記者に与えている圧倒的な威圧感というものが伝わってくる。
「旧大蔵省担当だったころ、武藤敏郎官房長に何度か説諭された。時あたかも財政金融分離や日銀法改正の論議まっ盛り。役所の司令塔である武藤氏にすれば、門外漢の政治記者が政治家の『大蔵たたき』にあおられ、聞きかじりの議論を書き散らして、とさぞいまいましかったのであろう」
さて、この文章が、次にこう続いていく。
「金融庁創設も日銀の独立強化も反対論を懇々と説かれたが、あまり正面切った物言いに、しばしばあっけにとられた。
たとえば、『大蔵省が金融機関への監督権を失えば、税金を集める税務署職員5万人の再就職先が確保できず、安定的に予算が組めなくなる。国の根幹にかかわるんだ』。確かにそう言った。『主計こそ国家なり』の強烈な自負心に、威圧感すら覚えたものだ」
大蔵省の「国の根幹」が予算を組むことだという命題はよしとしよう。しかしながら、安定的な予算編成の根幹が「税務署職員5万人の再就職先」確保だとは初耳であるし、元主計局長の言葉とは思えないものだ。そもそもこんなことは一体誰が決めたというのか? どこかに書いてあるとでも言うのか? そして、この政治記者も僕と同様にこの言葉を聞きとがめたに違いないのだ。この言葉の直後で「確かにそう言った」とあえて請負っているのであるから。
こうしてこのコラムは次のようなモチーフに発したものとなる。官僚の中で日本全体を最も大所高所から考えているはずの大権力者が、そういえば実は税務署員の再就職に最も熱を入れていたんだったなーと。だからなのだろう、このコラムは、こう結ばれていくことになる。
「首相も与党も経済界も新聞も、こぞって総裁候補に推したのは、その『政治モンスター』ぶりに恐れ入ったからではなかったか。さすれば今回、政治に翻弄されたとの批判は、お門違いというものであろう」
政財界が認める国の最高権力者の1人が本当の大所高所に立っていたならば、これはモンスターとは呼ばれまい。そういう存在が実は、「税務署職員5万人の再就職先」を第一に考え、押し通していたと思い出したからこそ、いかにもモンスターだったと目が点になるというわけだ。こうして、このコラムの題名「モンスターゆえに」が思いつかれたというわけだ。民主党、野党はこの人物を正しくも否決したと、この記者も認めているということになる。
さてここから、僕は考え込んでしまった。
「官僚中の官僚」がこういう人物であって、こういう人物に時の首相が国の財政ばかりか日銀までも委ねようと決めた。とすると、50年単位ほどのこの世界経済大困難真っ只中において、日本全体のことは一体誰が考えているのだ!!? 長期的全体方針がいいかげんな所は、会社でも明日が危ぶまれるはずなのだけれど。
まずその書き出しからして、大蔵次官が政治記者に与えている圧倒的な威圧感というものが伝わってくる。
「旧大蔵省担当だったころ、武藤敏郎官房長に何度か説諭された。時あたかも財政金融分離や日銀法改正の論議まっ盛り。役所の司令塔である武藤氏にすれば、門外漢の政治記者が政治家の『大蔵たたき』にあおられ、聞きかじりの議論を書き散らして、とさぞいまいましかったのであろう」
さて、この文章が、次にこう続いていく。
「金融庁創設も日銀の独立強化も反対論を懇々と説かれたが、あまり正面切った物言いに、しばしばあっけにとられた。
たとえば、『大蔵省が金融機関への監督権を失えば、税金を集める税務署職員5万人の再就職先が確保できず、安定的に予算が組めなくなる。国の根幹にかかわるんだ』。確かにそう言った。『主計こそ国家なり』の強烈な自負心に、威圧感すら覚えたものだ」
大蔵省の「国の根幹」が予算を組むことだという命題はよしとしよう。しかしながら、安定的な予算編成の根幹が「税務署職員5万人の再就職先」確保だとは初耳であるし、元主計局長の言葉とは思えないものだ。そもそもこんなことは一体誰が決めたというのか? どこかに書いてあるとでも言うのか? そして、この政治記者も僕と同様にこの言葉を聞きとがめたに違いないのだ。この言葉の直後で「確かにそう言った」とあえて請負っているのであるから。
こうしてこのコラムは次のようなモチーフに発したものとなる。官僚の中で日本全体を最も大所高所から考えているはずの大権力者が、そういえば実は税務署員の再就職に最も熱を入れていたんだったなーと。だからなのだろう、このコラムは、こう結ばれていくことになる。
「首相も与党も経済界も新聞も、こぞって総裁候補に推したのは、その『政治モンスター』ぶりに恐れ入ったからではなかったか。さすれば今回、政治に翻弄されたとの批判は、お門違いというものであろう」
政財界が認める国の最高権力者の1人が本当の大所高所に立っていたならば、これはモンスターとは呼ばれまい。そういう存在が実は、「税務署職員5万人の再就職先」を第一に考え、押し通していたと思い出したからこそ、いかにもモンスターだったと目が点になるというわけだ。こうして、このコラムの題名「モンスターゆえに」が思いつかれたというわけだ。民主党、野党はこの人物を正しくも否決したと、この記者も認めているということになる。
さてここから、僕は考え込んでしまった。
「官僚中の官僚」がこういう人物であって、こういう人物に時の首相が国の財政ばかりか日銀までも委ねようと決めた。とすると、50年単位ほどのこの世界経済大困難真っ只中において、日本全体のことは一体誰が考えているのだ!!? 長期的全体方針がいいかげんな所は、会社でも明日が危ぶまれるはずなのだけれど。