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トランプという人間(7)「炎と怒り」から①   文科系

2018年06月14日 06時59分29秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 今日は、昨日の本紹介の第一回目を再掲する。お望みなら4月13日まで毎日続くこの続きをお読み頂ければ嬉しい。掲載日が判っているエントリーの出し方は、こうする。右欄外の今月分カレンダー下にあるバックナンバーと書いた「年月欄」で、18年4月をクリックする。するとすぐ上の今月分カレンダーがその月のものに替わるから、そのカレンダーの9日をクリックすると、エントリー本欄がその日のエントリーだけに替わるので、お求めの「炎と怒り」第2回目エントリーをお読み願える。よろしく。


【 トランプという人間(7)「炎と怒り」から  文科系 2018年04月08日

 今年1月発刊なのに瞬く間に全米170万というベストセラー「炎と怒り」。それも、この日本語訳が出た2月下旬に既にこの数字! 読み進むうちに、それも当然と、どんどん感慨が深くなって行った。この本を読むと、何よりも、「今のアメリカ」が分かるのである。こういう人物が大統領選挙に勝ってしまったというアメリカの現状が常軌を逸しているというそのことが。そういう内容紹介を、ほぼ抜粋という形で始めていく。泡沫候補の時代からトランプ選挙陣営の取材を許可されていた著者は、何回か全米雑誌賞を取った著名なフリージャーナリスト。そんな彼が経過順に22の題名を付けて描いたこの本の紹介には、エピソード抜き出しというやり方が最も相応しいと考えた。

 さて初めは、既に有名になった大統領当選が分かった時のトランプの様子。
『勝利が確定するまでの一時間あまり、スティーブ・バノンは少なからず愉快な気持ちで、トランプの様子が七変化するのを観察していた。混乱したトランプから呆然としたトランプへ、さらに恐怖にかられたトランプへ。そして最後にもう一度、変化が待ち受けていた。突如としてドナルド・トランプは、自分は合衆国大統領にふさわしい器でその任務を完璧に遂行しうる能力の持ち主だ、と信じるようになったのである』(P43)


 次が、「トランプの会議のやり方」。「初めて出席した時には本当に面食らった」とこの著者に話したのは、ラインス・プリーバス。政治や選挙の素人ばかりが集まったトランプ選挙陣営に選挙終盤期に初めて入ってきた玄人、共和党の全国委員長だ。彼の協力もあって当選後は、大統領首席補佐官になったが、間もなく解任された人物でもある。
『プリーパス自身はトランプに望みはないと思っていたが、それでも万一の保険にトランプを完全には見捨てないことにした。結局は、プリーパスがトランプを見捨てなかったという事実がクリントンとの得票差となって表れたのかもしれない。・・・・それでもなお、トランプ陣営に入っていくプリーバスには不安や当惑があった。実際、トランプとの最初の会合を終えたプリーバスは呆然としていた。異様としかいいようのないひとときだった。トランプはノンストップで何度も何度も同じ話を繰り返していたのだ。
「いいか」トランプの側近がプリーバスに言った。「ミーティングは一時間だけだが、そのうち五四分間は彼の話を聞かされることになる。同じ話を何度も何度もね。だから、君は一つだけ言いたいことを用意しておけばいい。タイミングを見計らってその言葉を投げるんだ」』
(P67)

 さて、今回の最後は、トランプの性格。選挙中からトランプに張り付き、200以上の関係者取材を重ねて来た著者による、言わば「結論部分」に当たる箇所が初めの方にも出てくるのである。
『つまるところ、トランプにだまされまいと注意しながら付き合ってきた友人たちがよく言うように、トランプには良心のやましさという感覚がない。トランプは反逆者であり破壊者であり、無法の世界からルールというルールに軽蔑の眼差しを向けている。トランプの親しい友人でビル・クリントンのよき友でもあった人物によれば、二人は不気味なほど似ている。一つ違うのは、クリントンは表向きを取り繕っていたのに対して、トランプはそうではないことだ。
 トランプとクリントンのアウトローぶりは、二人とも女好きで、そしてもちろん二人ともセクハラの常習犯という烙印を押されている点にはっきりと見て取れる。ワールドクラスの女好き、セクハラ男たちのなかにあっても、この二人ほど躊躇も逡巡もなく大胆な行動に出る者はそうそういない。
 友人の女房を寝取ってこその人生だ、トランプはそううそぶく。・・・
 良心の欠如は、トランプやクリントンに始まったことではない。これまでの大統領たちにもいくらでも当てはまる。だがトランプは、誰が考えても大統領という仕事に必要と思われる能力、神経科学者なら「遂行機能」と呼ぶべき能力が全く欠けているにもかかわらず、この選挙を戦い抜き、究極の勝利を手にしてしまった。トランプをよく知る多くの者が頭を抱えていた。どうにか選挙には勝ったが、トランプの頭では新しい職場での任務に対応できるとはとても思えない。トランプには計画を立案する力もなければ、組織をまとめる力もない。集中力もなければ、頭を切り替えることもできない。当面の目標を達成するために自分の行動を制御するなどという芸当はとても無理だ。どんな基本的なことでも、トランプは原因と結果を結びつけることさえできなかった。』(P51~2) 】
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ニシノジャパン(19)改めて「コンパクト」の解説  文科系

2018年06月14日 06時22分25秒 | スポーツ
 パラグアイ戦において、代表がとうとう鮮やかな復活を遂げた。ロシア大会寸前にして、待ちに待った「自分らに最も合った戦い方」を見つけたのである。この「戦い方」のキー概念である標記の事を、今日、解説してみたい。W杯観戦をより面白くするために。
 ちなみに、サッカーが野球と一番違う点は、個人技能よりも組織の大切さ。組織が判らなければサッカーは理解できない。サッカーには、野球のように相手を1得点に抑えるエースや1人でホームラン得点を奪う4番バッターはいない。ロナウドでさえ、身方の助けがなければ1得点も挙げられないのである。


 さて、代表復活の内容は、第17回エントリーの「パラグアイ戦への希望」でここに書いた以下の箇条書きの通りのことが実現したということ。
【① 苦手な押し上げたコンパクト守備を必要な時に敷けることが、大前提。リトリート防御布陣を多くとっても、例えば後半の後半にこれができなければまた負けるだろう。・・・・
② 得点戦略については、ラインを上げたコンパクト・プレスを前提として、サイド攻撃や抜け出し狙いということになる。今の日本の実力では中央突破などは疲れるだけでなくカウンター失点の原因になるのだから、ライン押し上げができなくなる理屈。これがスイス戦の敗戦原因と観て良いほどだ。】
 これらが、18回で観た通りにパラグアイ戦で貫かれたからこそ、勝利を収められたのだった。キーワードはたった一言「コンパクト」の自分らに合った実践。

 コンパクトとは、コンパクトカーのコンパクトで、「小さい中に中身がぎっしり詰まっている」という意味。サッカー用語ではこれをこういう守備組織に遣う。ディフェンスがラインを上げてFWラインとの間を縦に詰めて狭くした空間に選手がぎっしり詰まった組織状態。そういう状態で、相手ボールに圧力(プレス、プレッシャー)をかけて、ボールを奪いやすくするという戦術である。よくコンパクト・プレスと語られるが、身方が狭い範囲に密集して敵ボールを奪うために圧力を掛けていく事を指している
 このやり方は、こんな目的、意味を持っている。身方陣地方面にこの陣を敷いて成功すれば、敵を身方ゴールに近づけないことになるのだし、敵陣地近くにこの陣を敷いて敵ボールを奪えれば得点に結びつきやすくなるなどである。だからこそ、現代サッカーの試合光景はこんな場面が多くなる。

①コンパクト陣形のボール奪取力に差があるチームが戦う時、片方が一方的に相手を押し込む場面も多くなる。一方がほとんど敵陣で戦っているように見えるゲーム、場合がそれであって、相手はカウンターを狙うしか無いという状態になっているわけだ。ただしこの場合でも、押し込まれたチームが弱いとか、必ず負けるということではない。モウリーニョのようにゴール前の守り方とカウンター戦法の指導に秀でた監督は、相手によってはわざと押し込ませてカウンター得点を狙う場合もあるからだ。このモウリーニョがインテル時代に、チャンピオンズリーグでバルサを負かした時、ボールキープ率2割などということもあった。

②コンパクト陣形作りで力量互角の両者が戦う時は、こんな場面も多くなる。中央のラインを挟んで敵味方が縦30メートルもない空間にひしめき合っている光景。熾烈なボール奪取闘争を繰り広げているわけだが、これが次第に一方に傾いていく時には、①の光景に近づいているわけだ。この変化はよく見ていれば誰にも判ることだから、面白い。一方が次第に優勢になっていることは、ボールへの寄せの速さ、その人数の多さ、キープ率の高さなどとなって顕れてくる。コンパクトプレス合戦で優勢なチームは、その密集陣形がそのままショートパスを繋いで敵ゴールに押し寄せる陣形にもなっていく
 ただし、このように優勢になっていくAチームの組織的優勢の原因が、組織的繫ぎと潰しのどちらで相手より上回ってきたからなのかを見抜くのは、意外に難しい。繫ぎが相手(の潰し)より強ければ当然前へ進める事になるが、潰しに自信が生まれればまた相手の繫ぎに対するコンパクトのゾーンをより前にできるようになっていくからだ。

③なお、DFラインを上げあう戦いでは、相手FWが抜けだしたカウンター得点狙いへの対策が必須事項になる。その1つが、オフサイドトラップ。横にダッシュして弾みを付けておいて瞬間的に縦に抜け出そうとする敵FWなどをオフサイドにかけるべく、身方DFラインが駆け引きするわけだ。敵が後方からパスを出す瞬間にラインをすーっと上げてFWを後ろに残したり、身方一人が後ろ目に残っていて、敵が彼を出し抜くそぶりを見せる寸前に上がるなど。
 そしてもう一つの対策がゴールキーパーの守備範囲の拡大。前に出て来て、敵の長いカウンターボールを奪い取る役割も生まれた。ブラジル大会のドイツが開催国を7対1で負かした場面を思い出して頂きたい。ドイツのキーパー、ノイアーのまるでフィールドの身方側半分を守っているような、あの光景!
なお、日本にもこういうキーパーが生まれている。一例が、横浜マリノスの飯倉だが、時にはセンターラインまで半分ほどの地点まで出ていることも多い。ここの監督ポステコグルーはオーストラリアをロシアに導いた前代表監督で、DFラインを非常に高く上げたコンパクトプレスの遣い手だ。

 さて、実際のゲーム中にフィールド真横に出た監督がよく、両手の平を広げて大きくふわふわの風船を抑えるような身振りをしたり、前にのばした片腕を敵ゴール側へと横に平行移動させたりなどしてなにか叫んでいることがあるが、あれは「もっとコンパクトにせんかい!」と命じているのである。ボール奪取に劣勢の自チームを叱咤激励しているわけだ。

『サッカーでは、ボールを持っていなければ得点できないから、ボール奪取に拘る。奪われたらまた奪い返せばよいという自信が持てる対戦相手に対しては、大胆な攻撃もできる』
『ボールを持ったそう多くない瞬間にだけ鋭い得点を狙うチームは、カウンターチームと言える』
『今の世界的強豪クラブは当然、この両作戦とも強い』
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