たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

絵本の力、生きる力~子どもと大人が共に育つこの世界へ- デジタル文明の中で

2025年03月04日 14時04分58秒 | グリーフケア

(乳幼児精神保健学会誌Vol.7  2014年より)

「絵本の力、生きる力~子どもと大人が共に育つこの世界へ~柳田邦男

デジタル文明の中で

 この話をしたのは、今の時代の状況と比べて環境が著しく大変だったけれど、心の成長のためにはむしろプラスだった。子どもたちが多いから子どもたち同士でいろんなことを学び合う。それから私自身の家庭環境も大変プラスに働いたと思います。いろいろ振り返って子どもたちが、子どものことから本に親しむ、絵本に親しむ、しかも親が読み聞かせをする。読み聞かせというのは一緒に並んだり、ベッドで添い寝をしながら読むことですから、スキンシップがある。親の感情をこめた肉声が耳からズンズン入ってくる。聴覚はとても心の発達に大事で、絵本を読み聞かせている時、子どもは絵のすみずみまで見ています。耳で言葉を聞いています。さらに母親なりお父さんなりの感情をこめて物語を辿っていく。その起伏。これが子どもにとって心の中の感情や感性、それが細やかに発達していく上でともて大きな意味を持っていると思うんです。そして、絵本であっても物語性を持っています。4歳5歳になるとその物語の文脈をたどる力がついてくる。これが非常に大きな意味を持っているんですね。物語の文脈をたどれるということは、人間関係や自分の生き方の文脈を考える上でとても大きな意味を持ちます。物語の文脈が1つのモデルやパターンとなって頭の中にたくさん入っているといっぱい引き出しをもった子どもができる、成長する、そういうことになるだろうと思うんですね。子どもは大好きな絵本、感動した絵本は10回でも20回でも注文します。これに答えるとその絵本の絵や言葉や物語が子どもの心の中や全身に染みわたります。頭の中だけではない、全身に染みわたることによってその子のパーソナリティ形成、人格形成に大きな役割を果たすわけです。

その全体的なコミュニケーションを今のデジタル文明は言葉に100%依存していて、相手の細やかな感情を読み取ったり、文脈を読み取ったりすることが本当に難しくなってきている。デジタルなコミュニケーションは言葉の世界だけでその言葉もだんだん断片的、省略的になってくる。年中メールでやりとりしていると、簡単な1行、3行ぐらいでぱぱっとやりとりしたりしている。そうするとその中における言葉で表情されない部分が伝わらないし、理解もできない。人間は言葉だけでコミュニケーションしているんじゃない。赤ちゃんが生まれたときになぜ抱っこが必要なのか、その原点にかえって考えてみるとわかります。赤ちゃんは言葉を理解できないけれど、自分は全面的に守られている、愛されているということは言葉がなくてもスキンシップや抱きしめることやしぐさによって感じって、その中で赤ちゃんの心がだんだん発達してくるわけですよね。しかも安定的に発達してくる。そこが今おかしくなりつつあるという認識なんです。

絵本の読み聞かせは、デジタルなコミュニケーションの中でもう一度人間らしいコミュニケーションを考えたり、感じたり、感性を豊かにしたりするメディアとしてあらためて見直す必要がある。今の時代、新しい意味を持って子育ての中で絵本を取り上げられなければいけないんじゃないかと思うんです。これは私が抽象的に一般論して言うだけでは、みなさんにとってなんのことがわからないと思うので、今日は具体的なエピソードを交えがからお話をしてみたいと思うんです。」


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