ここのところ何かの会合があるとTPPのことが話題になるが、友人皆さんの感想はよく判らないねーだ。シンガポールが発案した自由経済圏構想で、見本はユーロゾーンだ。環太平洋の国々が対象だから、米国と日本が入らなければ成り立たない構想といえる。これから具体的なルールを作るわけだから今のところ海のものとも山のものとも言えないから「判らないねー」となる。
それでも反対論者と賛成論者が口角泡を飛ばす勢いで、互いに恐怖感を煽っているからお化け論が出て来る。先日のNHK日曜討論でも米の自由化で日本の農業は全滅するとか、地方経済は壊滅だとか反対論者の脅迫はすごい。賛成論者ではアジアの活力が取り込めるとか、参加しないと製造業が弱体し、雇用が減るという論拠が多い。
本日の朝日朝刊では、独自のブランド米をフランスに輸出している庄内の農民がカリフォルニア産あきたこまち(2.5キロ11ユーロ)に対し、17ユーロで競争可能と冷静そのもので、農業団体の幹部や反TPP国会議員の脅迫がでたらめで他に目的があるのではと疑いたくなる。
これまで、古くはバナナ、グレープフルーツの輸入拡大時に、ミカン、リンゴが全滅すると農業団体は主張したが、今では日本のリンゴは立派な輸出品だ。最近ではウルグアイラウンド対策で6兆円を農業に注ぎ込んだ。またもや、巨額の対策費を取ろうというのでは、6兆円の使い道を再吟味することが必要だ。
名だたる老有名人が身に染みこんだ米国アレルギーを発揮して噴飯ものの議論をしている。典型が「米国の意のままにされるので、国民健康保険が廃止される」とか「遺伝子組み換え食品が入ってくる」等と脅迫に近いことを言っている。
また既得権を守ろうとする医療業界も反対している。国民のことより自分たちの利益を先ず守ろうとし、新しい国際ルール作りには参加することさえ拒もうとする。
土俵に上がらなければ相撲は取れない、相手が強そうだから止めようでは不戦敗と同じだ。交渉というのはお互いの言い分を聞いて、妥協して初めて成立するものだ。初めから相手の言うことに従うのでは独立国家といえない。冒頭書いたように、TPPは米国と日本抜きでは実効性がないのだから、堂々と交渉すれば良い話だ。中身が判った段階で国会の批准が求められるので交渉内容が不充分であれば再交渉すれば良い。脅迫は止めて冷静な議論が必要だ。
親米、反米、親中、反中などといった背景も見え隠れする議論もあり、そうした政治的な意図にも要注意だ。少子高齢化で縮小しつつある日本にとって、環太平洋という貿易ゾーンは市場の拡大という面をとっても一つのチャンスだ。中国や韓国が入りたければ拒む理由はない。ユーロゾーンの例だと日本のように高付加価値の機械類を生産しているドイツにとってはプラスに作用している。