岸田政権は所得増を狙い、労働分配率に切り込んで今春闘に大幅な賃上げ税控除を掲げ、3%以上の賃金引き上げを打ち出した。賃金引き上げは最低賃金の引き上げに連動し、低所得者の底上げとなり、GDPの6割を占める消費喚起につなげられれば、成長復活となる。安倍政権が何年もできなかったことが可能となれば幸いで、かつて「国民春闘」なる言葉があったが、是非復活させてもらいたい。
人口減、高齢化でかつての高度成長時代に戻ることはできないが、欧州並みの成長を目指してもらいたい。何が欠けているのか?賃金の停滞だけではない。もう一つの成長の原動力である投資の20年間停滞がここへ来て明確になってきた。その一つが半導体部門だろう。台湾のTSMCに補助金を与えてまで投資をしてもらうとは1980年代には想像すら出来なかった。
5日の日経は一面で2000~21年の投資の伸び率を報じていいるが、トップはかつて老大国と揶揄された英国で59%、次いで米国48%、フランス44%、はるか下がってドイツ17%、日本は更に一桁の9%となっている。かつて毎年争って投資をして毎日の新聞に増産投資が報じられていた1970~80年代からどうしてこんなじり貧になったのだろう?経済史的にも不思議な現象だ。日本の投資が急激に落ちたのはバブルが弾けた90年以降で、成長率も2000年~21年実質平均0.5%に留まっている。
欧米はイノベーションで成長してきた。日本の企業はバブル後、経常利益は倍増しているが、内部留保を貯め込むことに専念してしまい、賃金や投資への配分を怠った。新しい資本主義を唱える前にどうしてこんなことが起きたのか分析してもらいたい。