今年に入り、米国が金利を上げ、日米金利差拡大から急激に円安となり、ここへ来て想定外の1ドル150円を突破した。振り返ると1995年には79円の超円高になり、今回と同じように大騒ぎとなったことを思い出す。当時は輸出立国で貿易黒字が累積していた。自動車や電機産業など輸出産業は国際競争力が無くなると、乾いたぞうきんを更に絞るごとくコスト削減と海外への工場移転を進めた。当然賃金アップは低くなり、賞与も削られた。
反対に輸入品は安くなり、グレープフルーツなど食べたこともない食品が食卓にのぼり、牛肉も安い外国産が出回り、国産品が売れなくなると騒がれた。ブランド品も若い女性にも手が届くようになり、シャネルのバックなど人気だった。また、円が強くなることは海外旅行にも弾みがついた。
長い間、日本経済は低迷し、円は徐々に弱くなり、主要輸入品の石油やLNGがロシアのウクライナ侵攻で高くなり、日本経済への負担が大きくなった。さらに日米金利差が大きくなることをきっかけに1月の115円から150円に急落した。かつての1995年と逆のことが起こっている。輸出企業は海外生産比率を上げたことから円安の恩恵は小さいとは言え、1995年当時なかったユニクロなど海外での売上げが大きい企業は好決算だし、ドル資産を持っている企業は声を潜めているので報道されてないが、莫大な為替差益を抱えている。
1995年とは違い、スーパーでの食料品は輸入品が多くなり、牛肉、豚肉、鳥肉、野菜類など円安がひびく、また、電気、ガソリン、ガス代は円安の影響を受けざるを得ない。これらは消費者の節約行動を通して経済にマイナスの影響を与える。また、労働力不足を補う外国人労働者は今や不可欠、円安だと円での賃金がドル換算で下がるので魅力が無くなり、来てもらえなくなる。これは1995年と大きく違うマイナス現象だ。
1995年以来、円高抑制で米ドルを買い込んで、今回はそのドルを売って円安介入をしているので、膨大な為替差益が発生している。政府は口をつぐんでいるがそれを有効に活用すれば経済にはプラスになる。この10年、日本経済を支えてきた要素はインバウンド観光、消費で、円安はそれを促進するというプラス面がある。また円高対策で海外に投資した工場が国内に戻ってくれば地方経済にプラスになる。
年金生活者には残念だが、お楽しみの海外旅行は負担が大きくなっている。旅行者からのパンフが8月以来どっと来ているが、人気のイタリア、フランスなどユーロがドルほどではないが高くなっている。私が2020年2月にイタリアに旅行した時は1ユーロ120円だったが、今は145円ぐらいと2割は上がっている。旅行代金は10万円ぐらい増え、更に2万円ぐらいだった航空燃料チャージが10万円以上とられる。今や10日間ヨーロッパ旅行はエコノミークラス利用で50万から60万円時代になった。
専門家の間でもこの円安は日本経済復活になるという説と景気後退がくるという説に分かれている。前者の説を採りたいが・・・・