AIJ投資顧問の問題では、資金運用を委託していた74の厚生年金基金のうち、31の基金で、国に代わって運用している公的年金を支給するのに必要な分まで積み立て金が不足しているほか、AIJ投資顧問に委託した資金が戻らなければ、さらに21の基金が積み立て不足におちいるとして、国会でも取り上げられ、いずれは司直の手に掛かるだろう。
しかし、ここへ来て厚生年金の代行部分の給付に必要な分まで積み立てが足りなくなる「代行割れ」が表に出てきた。厚生労働省の調査では、昨年3月末時点で全国578基金の4割近い212基金が代行割れに陥っていて不足額は総計6000億円に上る。国の厚生年金代行部分は予定利率5.5%という現実離れした運用が要求されてることが主因だ。
格付け投資情報センター(R&I)の調査でも、2009年3月末時点で78.2%の基金が積立不足とのこと。代行部分の積立不足を一括払いで解消しなければ基金の解散は認められず、穴埋めの資金がないために解散できず、年を追うごとに資産の劣化が進む悪循環に陥る基金が増加している。大手企業は代行部分返上をして厚生年金基金を解散し、企業基金へ移行しているが中小企業ではそうすれば倒産が続出するのでだまっている。しかし、年金受給者や従業員は知らないケースが多い。
AIJ問題を契機に、代行部分問題を徹底的に再検討する必要がある。事実上返上できなく積立不足に陥っている基金はいずれ企業の倒産を通じて厚生年金全体の負担になることは明らかだ。倒産企業の受給者から代行部分(2階建て部分)の年金を召し上げても本体の厚生年金を削ることはできない。あぶり出された問題は高齢社会の特徴の一つだ。
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