パリには当分行けないので、気楽にパリの風景を楽しもうと久しぶりに昭島MOVIXへ、ところが「パリタクシー」は重い映画だった。
終活へ郊外の施設に移ろうと92歳のマドレーヌはタクシーを呼ぶ、運転手は無愛想なシャルル、マドレーヌは彼女が人生を過ごしたパリの街の思い出の地を寄るように指示をする。期待どおりにシャンゼリゼ、オペラ座、修復中のノートルダム、凱旋門など美しいパリの街が背景に流れるが、マドレーヌの思い出の街では彼女の重い人生の場面が回想され、意外な過去が明らかになる。運転手シャルルは最初はめんどうと渋い顔をしていたが、彼女の人生劇場にひきこまれ、共感して親子のようなほっこりとした関係になり、やがて食事まで一緒するようになる。
マドレーヌの人生には家庭内暴力、女性差別、一人息子の悲劇など現代でも抱える問題が明らかになり、背景の美しいパリの景色とは反対に暗い部分が淡々とタクシーの中で語られる。アドレースを演じるのは94歳のフランスの国民的シャンソン歌手リーヌ・ルノー、衰えを見せない演技力には驚かされる。タクシー運転手・シャルル役を演じたダニー・ブーンは代表的な喜劇役者で、普段から親子のようにルノーと付き合っているとのことで、たった二人の人物の映画だが、渋面が最後は笑い顔になり、息の合ったところを見せた。
余聞だが、監督のクリスチャン・カリオンは94歳という高齢の主演女優の体力を考慮し、実際にタクシーを渋滞のパリ市内に乗り入れることは止めてタクシーの背景に映像を流す選択をしたが、見てる方は全くわからなかった。
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