カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・秘密結社フリーメイソンの公式マニュアル「ソロモン王と追随する者たち」

2023-11-26 20:38:47 | 突発お題

 中世の時代に欧州の石工集団が創設したフリーメイソンは随分と長い間、謎の多い秘密結社として一般人から胡乱な眼を向けられ続けてきた。しかし結局は彼らも一般社会を構築する市民であり、また昨今の風潮から情報開示的な会報も発行されているらしい。そんな中に会員間の犬猫や家具の譲渡欄があったら面白いと思うののだが如何なものだろうか。
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骨董品に関する物語・小型の幻灯機

2023-11-18 22:56:00 | 突発お題

 父さんが買ってくれた幻灯機は暗い部屋で蝋燭を置いて照らすと奇麗な色付きの絵が映し出される。この絵が動いたり喋ったりしたらどんなに素敵だろうと夢見る僕に父さんはきっと実現するよと言ってくれた。勿論その時の僕は自分の曾孫が異国でアニメーターなる職に就く事を知らない。
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骨董品に関する物語・観劇用のイヴニングバッグ

2023-11-12 15:44:40 | 突発お題

 観劇中の彼女は必ず、バッグから取り出したオペラグラス越しでしか周囲を見ようとしない。ある日事情を尋ねると余計なモノを見たくないからだと答えが返ってきた。別に害はないが芝居に集中出来なくなるのが嫌なのだと。ちなみに、その無害なモノが一体『何』であるのかまでは教えてもらえなかった
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骨董品に関する物語・古い手廻しオルゴール

2023-11-12 15:41:46 | 突発お題

 古い手廻しオルゴールを手に入れたと自慢した途端に表情が曇る友人に理由を尋ねると、嘗て読んだ物語に登場したオルゴール機能付きの珈琲挽きに憧れて自作したまでは良かったが、ハンドルがとてつもなく重くなって豆を挽いただけで体力を使い果たして音楽を楽しむ余裕もなかったと言う。当人はメロディーを二重奏にしたからだろうかと悩んでいたが、明らかにそういう問題ではないと思う。
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晩秋の創作怪談・切り貼りされた手帳

2023-11-11 15:29:05 | 突発お題

 コラージュが趣味という彼が持つ小さな手帳は幾枚もの頁に様々なモチーフが貼り付けられ、既に完全には閉じられない扇状と化している。ただしその手帳が異様なのは外見ではなく、例えばアイスを表現する際の素材に決してアイスの画像を使用せずに見る者の視覚と味覚を刺激する事だ。
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骨董品に関する物語・ドイツ製天文古書「天空の驚異」

2023-10-28 20:36:03 | 突発お題

 とある物語に登場する彗星は、一人ぼっちで頭が変になっていて、尾を引きながら転げ回っている星だと称されていた。こういう存在は意思があろうが無かろうが、大概は周囲に無意味で甚大な被害を撒き散らし、人々に恐れられながら世界を行ったり来たりすることしか出来ないものだ。
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骨董品に関する物語・図説 フランス聖母巡礼の歴史

2023-10-28 20:34:12 | 突発お題

 一説によるとイエスの母マリアは普通の母親として息子の宗教的活動を快く思っていなかったという。だが、やがて教会は唯一神の男性原理だけでは信者を救済し切れないと聖母の概念を生み出し教義として広めていった。神が天に実在しないとしても地上の人々は神の存在を自ら育むのだ。
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骨董品に関する物語・1910年のミラスコープ

2023-10-28 20:32:22 | 突発お題

 その古い幻燈機はどの様な写真を設置しても画像の傍らに別の何かが映り込む。もちろん器内やレンズに異常が有るわけではないのだか、その何かは傍若無人に画像を移動しつつ声なき声を発しているように見える。それが祝福か、それとも呪いであるかは幸か不幸か読み取る事は出来ない。
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骨董品に関する物語・裁縫鋏のセット

2023-10-15 00:38:17 | 突発お題
 
 理髪店を営む叔父に言わせると、脂を含んだ細く柔らかい毛は鋏にとって非常に切りにくい材質なのだそうだ。故に研ぎ直しを含む定期的なメンテナンスは必須なのだが、その正しい扱い方を知らないと刃の裏面を研いで鋏そのものを完全に使いものにならなくしてしまう場合もあるという。
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骨董品に関する物語・イギリス製のモノクル

2023-10-15 00:36:35 | 突発お題

 子供の頃に暮らしていた屋敷で働く執事は片眼鏡を嵌めていた。その姿が不思議で何度も見詰めていた僕の視線を彼は極めて儀礼的に無視しながら職務を行っていた。だから僕の父が破産して屋敷を出て行く日、彼が最後にと外した片眼鏡を僕に手渡して元気でと微笑んだ時、初めて泣いた。
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