カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・テナーサックスのアクセサリー

2023-10-09 17:24:04 | 突発お題
 流石にこれだけ小型だと操演に依る音声は望めないので直接に音楽精霊を憑依させたと奴は得意げに言う。しかしそれでは万が一に制御術式が外れたら延々と音楽が止まらなくなるのではと突っ込みを入れると、まあ百年くらいで止まるからいいだろと無責任極まりない事をぬかしやがった。
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骨董品に関する物語・葡萄色の祈祷書

2023-10-09 17:22:14 | 突発お題
 江戸時代に大流行した変わり咲き朝顔は、花が咲いた大量の鉢を一箇所に集めて受粉後に採れた種子から発生した変種を更に掛け合わせるという実に気の長い方法が行われていたが、遺伝法則も不明確な時代の、結果は神のみぞ知る方法で、何と現代でも幻とされる金色の朝顔が存在した。
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骨董品に関する物語・メカニカルペンシルと芯のセット

2023-09-22 21:58:48 | 突発お題

 エンゼルヘアーなる希少物質から福音をもたらすアイテムを錬成したと自慢する学友から借りた金属製の繰り出し鉛筆で描いた絵が自分史上最高の出来に仕上がったので、拝み倒して売ってもらった。やがて奇跡の御業は失われ、文句を言うと福音アイテムは本体ではなく芯だと答えられた。
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骨董品に関する物語・スペイン製の天文チャート

2023-09-21 21:59:58 | 突発お題

 星の狭間を走る列車に乗り合わせた少年の物語を愛読する友人がいい買い物をしたと見せてくれたのは、物語の冒頭に授業で登場した天文図だった。異国の言葉で書かれたその図を僕に向かって示しつつ、このぼんやりと白いものは本当は何かご承知ですかと教師の言葉を真似た彼は笑う。
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骨董品に関する物語・旧東ドイツの星空カルテット

2023-09-21 21:58:24 | 突発お題

 部屋を掃除していたら棚の裏からゲームに使うカードが何枚か出て来た。子供の頃、長期休暇にいとこや親戚が遊びに来た際に遊んだのが楽しくて、だから皆が帰った後も一人でカードを広げて、その時感じた寂しさと虚しさに任せて部屋中にばら撒いて捨ててしまった時の残りらしかった。
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骨董品に関する物語・19世紀フランス製の獅子座図

2023-09-08 20:14:43 | 突発お題

 漆黒の空間に何の関わりもないまま輝くばかりの星星を繋ぎ合わせ、輪郭すらも存在しない獣や神話に思いを馳せながら物語を紡いだ古代の人間が理解出来ないとぼやく奴と、全く同じ理由から古代人の考えを推し量れる気がする俺は、お互い相容れないままに黙って同じ星空を見上げる。
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骨董品に関する物語・20世紀初頭の星座早見盤

2023-09-07 20:57:53 | 突発お題

 紙で出来た学習教材から鉱石製の希少品まで、星座盤であれば見境なく蒐集している友人がまた一つコレクションを増やしたらしいので見に行くと、いつものようにコレは自分が求めていた星座盤ではないと落ち込んでいたので、それならまだ探す余地があるじゃないかと投げやりに慰める。
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骨董品に関する物語・十九世紀のステレオビューワ

2023-09-03 00:49:59 | 突発お題

 僅かに画像内容の異なる二枚の平面図から立体が浮き上がって見えるのは、人間の脳が眼球から伝えられた情報を正確に処理した結果だ。俺たちは本来なら自分すら気付いていない沢山の事を最初から知っているが、それを知るのは大概が失った後になると左眼を覆う眼帯を押えた彼は言う。
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骨董品に関する物語・ドイツはラウシャ製のアンティーク義眼

2023-08-26 01:00:51 | 突発お題

 昔、奇妙な懐かしさを感じさせる瞳を持つ少女の存在が周囲の人間を徐々に狂わせていくが、実は彼らが見ていたのは少女の瞳に映る己自身の惨めな姿に他ならなかったという物語を読んだことがある。果たして本当に自分が見ているのは眼前に存在する相手の瞳そのものなのか、或いは。
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骨董品に関する物語・青いモーニングロケット

2023-08-18 21:16:47 | 突発お題

 病床の母から形見分けだと青いロケットを渡された。何が入っているのかと尋ねると、お前が入れたいものを見つけた時に開けなさいとだけ言われた。やがて亡くなった母の遺髪を入れようとロケットの蓋を開くと、そこから母の瞳と同じ青い色をした蝶が舞い上がり宙に飛び去っていった。
 
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