カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・ドイツ製のビスクドール

2023-08-11 20:48:30 | 突発お題

 とある人形師は、正しい人形の姿を自身の魂は死んでいる状態と言った。また別の人形師は、神に死を捧げるのと引換に永遠を生きるのが人形だと信じていた。つまり人形は本来、人間からの愛と奉仕を一身に受けながらも決して自ら人間を愛したりはしないのが正しい姿なのかもしれない。
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骨董品に関する物語・ケチな老商人パンタローネの仮面

2023-08-11 20:47:03 | 突発お題

 私の暮らす屋敷で執事を勤めていた男は常に顔の上半分を仮面で覆っていた。何でも酷い傷を隠しているらしく、この屋敷で働いているのも他に行く場所が無いからだと父は言う。やがて私は男と死んだ母が嘗ては恋人同士で、男の傷は父に拠って負わされたのだと知ることになるのだった。
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骨董品に関する物語・イタリアの道化師アルレッキーノの仮面

2023-08-11 10:02:16 | 突発お題

 その宮廷道化は派手な衣装に鈴付き帽子を纏った姿で尖った靴を履き、その姿故に埒外の存在として侮られ嘲笑われ、同時に主君に対して際どい冗談を装った諫言を行うことを許されていた。人々はそんな哀れで愚かな道化の仮面の下に隠された素顔を知らず、むしろ知ろうともしなかった。
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骨董品に関する物語・三日月の振り子

2023-08-04 23:20:55 | 突発お題

 呆れる程に多情な月は常に目移りしながら恋する相手を探していて、新しい相手に対して一方的に抱いた恋心に身を焦がして痩せ細り、やがて破れた恋を忘れようと肥え太る。ちなみにこの間、恋心を抱かれた相手は全く月からの思いに気づいていないというから目も当てられないのだった。
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骨董品に関する物語・ドイツのラウシャ村で作られた義眼

2023-07-29 06:40:37 | 突発お題

 義眼が生まれ持った眼を失った人の為に造られるのなら、この瞳の色彩も誰かが失った瞳の色彩で、この義眼も誰かの失われた眼の代わりとして使われたのだろうかと夢想する友人に、残念だがそれはサンプル品で恐らく実際に使用された義眼は使用者の葬式で共に埋葬されたとは言い難い。
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骨董品に関する物語・モーゼルのガラス器

2023-07-23 09:42:48 | 突発お題
 枯れた色彩が嘘吐きだというのはガラス職人である師匠の口癖だった。万物が最初に持ち合わせていた筈の瑞々しさと引換えに、耐え難い程の痛みや悲しみさえ曖昧な感覚に変えてしまうのだと。そして、それ故に枯れた色彩はとても優しく人々の抱いた傷を静かに癒やしてくれるのだと。
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骨董品に関する物語・遺髪入りブローチ

2023-07-19 21:19:10 | 突発お題
 また会えるわと彼女は誓い、また会おうねと彼は答えた。生者を容赦なく蝕む病にその身を食い荒らされた姉弟が遺した髪は残された両親によって同じブローチに収められ、末永く観る者の紅涙を絞る事になったが、魂となった二人は約束通りに再会を果たし今度こそ幸せになれただろうか。
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骨董品に関する物語・ブリキ缶に古いものを詰められるだけ詰めてみました

2023-07-19 21:12:04 | 突発お題

 くすんだ色彩のブリキ缶に詰められた小物は古いもの、用途の判らない不思議なもの、そして何より日常では何の役にも立たないもの。隙間なく収められた有用なものに囲まれて窒息しそうな日常を送る、無用なものの中でようやく安らぐことが出来る疲れた人の為だけに贈り物を厳選する。
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骨董品に関する物語・ダルメシアンの陶器のペン立て

2023-07-09 07:43:32 | 突発お題

 これって百一匹のアレだよなと陶器製の犬を手にした友人が呟く。実は近所で散歩している犬がこの犬種っぽいんだが身体に殆ど黒斑が無くて、額を除くと白犬にしか見えないんだと続けた後、映画だと毛皮商人に狙われていたが黒班が無いと価値的にどうなんだろうと物騒なことをぬかす。
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骨董品に関する物語・カモメのバングル

2023-07-09 07:36:46 | 突発お題
 先輩の故郷は昔から鴎の玉子を模した菓子が土産物の人気商品なのだと言う。黄金餡をカステラ生地で包み、ホワイトチョコレートでコーティングしたその菓子は、今では故郷以外の各地でも広く販売されるようになった。ちなみに昔は今と違って鶏卵くらいの大きさがあったとは先輩の談。
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