カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

百物語・その1

2007-08-05 18:04:29 | 百物語
 その壱 浩二君の話

え、と。ボクから話すの?
でも、ボクお化けに会ったことないよ。へんなひとなら会ったことあるけど、それでいい?

んとね、ちょっとまえに学校から帰るとちゅう、道でにんぎょうを売っていたおじさんがいたの。
にんぎょうといっても白い紙に仮面ライダーとかウルトラマンとかの絵がかいてあって、手と足だけ紙でつくったばねみたいにぐにゃにゃなの。んと、紙のほそいテープを二つじゅんばんにたたんでつくるばね、知ってる?あ、よかった。

それでね、おじさんのまえにはしらない子だけどボクのほかに三にんいて、おじさんは『これはまほうのにんぎょうだよ』っていうの。じぶんで立ってうごくんだって。
みんなで『うそだー』っていったんだけど、おじさんは仮面ライダーを一つとってボクたちのまえで手をはなしたの。
そうしたらほんとうにキックとかのポーズをとりはじめたから、みんなすごいってびっくりしてた。

でもね、そんなのあたりまえだったよ。だっておじさんの横にいたおばあさんがうごかしてたんだもん。
こうにんぎょうをもってさ、手とか足とかうごかすの。

それでもほしがった子がねだんをきいたら一こ五百円だっていうから、お金がたりなくてがっかりしてたらおじさん、『なら、明日坊やのオトモダチを連れてきたらまけてあげるよ。一人連れてきたら百円、五人連れてきたらただにしてあげる』っていったの。その子、ものすごくよろこんでたんだけど、ボクいっちゃったの。
『でも、にんぎょうをうごかしてるの、おばあちゃんでしょ』って。

そしたらおじさん、いきなりおどろいた顔してにんぎょうをおいてたビニールシートをにんぎょうといっしょにまるめて走ってもっていっちゃったの。それでボク、ほしがってた子におこられたんだけど、その子、あのおばあちゃんが動かしているにんぎょうでもほしかったのかな?

人形を動かしてたおばあちゃん?ふつうのおばあちゃんだったよ。あのおじさん、まだどこかであのにんぎょうを売ってるのかなあ。 
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