アメンボのような痩身の老婆は、今日も孫の為にタルトを焼く。苺、桃、葡萄、パイナップル、キウイ、マンゴーなど季節ごとに色彩豊かな果物で彩られたタルトは、しかし、彼女の本当の孫が食べる事はない。彼女を訪ねてくる人は、もう一人もいない。
だから彼女はいつの間にやら出来ていた自宅壁にぽっかりと穿たれた虚(うろ)にタルトを一つずつ放り込むのだ。そこから聞こえる箍の外れた、しかし賑やかな笑い声を聴く為に。
だから彼女はいつの間にやら出来ていた自宅壁にぽっかりと穿たれた虚(うろ)にタルトを一つずつ放り込むのだ。そこから聞こえる箍の外れた、しかし賑やかな笑い声を聴く為に。