男は虹の根元に埋まっているという宝を生涯追い求め、人生の全てを捧げ尽くした末にようやく辿り着いた虹の根元から宝の入っている箱を掘り出し、その蓋を開けた途端に宝を追い求める事なく平凡に暮らし、妻子と共にささやかな生涯を送ったもう一人の自分の人生を体感する事になった。己の手にするべき宝が何であったかを知った直後に虹が消え、同時に男の寿命も尽き果てた。
産まれてすぐに母親を亡くし、山羊の乳で育てられた彼は、長じて勇敢な戦士となって草原を駆け巡り、無差別で容赦のない戦いの果てに己の国を建てるに至った。やがて彼は妻を亡くし息子に背かれ、最後に残された唯一の財産である山羊を牽いて自分の国を離れる事になった。
お気に入りのCDをエンドレスで聴きながら、刺繍枠に張った布地にアイコンのドット絵を思わせる×で埋まった升目で構成された図案を延々と刺繍していく。大概は途中で意識が飛んで升目を一つ、あるいは1列間違えて泣く泣く解く事になるが、ある日開き直ってそのままにしたら、それはそれで味になった。