カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

七十冊目・『輝きし孤島の悲哀』

2018-06-15 19:31:44 | サスペンスはお好きですか?
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 昔どこかで読んだ物語。周囲には島影一つ見えない孤島で暮らす少年は何処からか流れ着く木の実を食べながら日々を過ごしていた。ある日、木の実と一緒に流れ着いた瓶に入っていた手紙に返事を書いて海に流すと新しい手紙が届くことを知り、少年の孤島は未だ見ぬ島と繋がるのだが、孤島の正体は自宅に引きこもった少年の部屋だったのだ。
 新しい世界へ繋がる道を見つけた少年が一体どのような生活を送るようになったのか、物語には記されていなかった。
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六十九冊目・『汚れし裏切りの構図』

2018-06-14 20:49:23 | サスペンスはお好きですか?
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 いつも一緒に遊んでいた幼馴染が僕に対して一度も「ありがとう」と言ってくれたことがないと気づいた辺りから、たぶん終わりは始まっていたのだろう。そして奴が僕に対して見せびらかすように遊びに連れてくる彼女もまた、幼馴染の横暴さに疲れ果てていた。やがて僕と彼女は幼馴染に別れを告げて一緒になったが、奴と僕、先に相手を裏切ったのは一体どちらだったのだろうか。
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六十八冊目・『清き寒村の密室』

2018-06-13 19:41:12 | サスペンスはお好きですか?
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 恋人だと思っていた女と、親友だと信じていた男の手酷い裏切りに耐えかねて、誰もいない場所で死のうと迷い込んだ山の廃村には、雪女を名乗る娘が一人で暮らしていた。人の姿を取れる短い間に誰かが本当に愛してくれれば自分は人間になれるのだという娘と僕はしばらくの間一緒に暮らし、やがて一夜を共にした。

 翌日、誰もいなくなった廃村を後にした僕は街に戻ることにした。いつの日か必ず、人間となった彼女と再び巡り会うために。
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六十七冊目・『焦がれし親子の殺戮』

2018-06-12 18:25:06 | サスペンスはお好きですか?
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 僕は産まれてすぐに捨てられ、物心がつく以前から施設で暮らしてきた。やがて優しい養親に恵まれて幸せに育ったが、ある日、僕を産んだと言う女性が家に訪ねてきて追い返されたので、こっそり会うことにした。
 見るからにみすぼらしい身なりの女性が涙を浮かべながら何か言いかけるのを遮り、僕は貴女が居なくても幸せに生きてきました。だから貴女の言葉は何もいりませんと答えてから、その場に突っ伏して号泣を始めた女性に構うことなく僕の両親が待つ家に帰った。
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六十六冊目・『大いなる出来心の凶行』

2018-06-11 22:00:48 | サスペンスはお好きですか?
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 積極的に人を殺したいと思ったことはないが、例えば駅やデパートの長すぎるエスカレーター、または観光地になっている断崖に立つ人間の背中を押してみたくなることはある。できれば背中を押された人間が踏みとどまることなく綺麗に、或いは幾人もの巻き添えと共に転げ落ちていく姿を想像すると、明日への活力が湧いてくる気がするのだ。
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六十五冊目・『迅き一族のセレナード』

2018-06-09 21:04:49 | サスペンスはお好きですか?
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 この地方で代々続いた名士の家に生まれた先輩は勉強やスポーツ、更に芸術関係に至るまで多彩な才能を発揮する天才だが、当人に言わせると、それは呪いなのだそうだ。経緯は教えてもらえなかったが先輩の一族は代々ある年齢に達すると高い能力か短命を自ら選び取ることを迫られ、先輩の代まで誰一人長生きすることを選んだ者はいないという。
 
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六十四冊目・『沈める密室の悔恨』

2018-06-08 19:51:48 | サスペンスはお好きですか?
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 生きたまま棺に詰められる夢を見るようになって以来、乗組員として使いものにならなくなった俺の代わりに親友が乗り込んだ潜水艦が、事故で海底に沈んだ。捜索は難航し、実に十年近くの歳月を経て引き上げられた艦内に遺された躯は、海底の低温と希薄な空気の中で朽ちもせず昔の姿であり続けた。
 名を呼んでも答えぬ親友は、新鮮な空気と夏の高温に晒された途端に腐り始めてその姿を変えていった。
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六十三冊目・『白き寒村の孤独』

2018-06-06 20:39:25 | サスペンスはお好きですか?
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 その集落は、冬の間中ずっと雪と氷に覆われ続ける。冬を乗り切る蓄えのないものは元より、どのような理由であろうと雪に埋もれて動けなくなったものたちは白く凍った姿のまま冬を過ごし、春になるとようやくその変わり果てた姿を現す。そして凍り付いたように息をひそめてようやく冬を乗り切ったものたちは、そこでようやく暖かい涙を涙を流しながら愛したひとの亡骸を黒い土に埋めるのだ。
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六十二冊目・『清き古の部隊』

2018-06-05 21:02:25 | サスペンスはお好きですか?
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 夜の世界を覆う闇が今より遥かに深かった時代。国家鎮守を目的として秘密裏に結成された能力者の集団が存在した。
 彼らは闇に潜む怪魔を狩ることを主な任務としていたが、その中には人の子に焦がれ、結ばれるに至った怪魔の末裔も少なからず含まれていて、それ故に発生する大小さまざまな悲劇や喜劇には事欠かなかった。
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六十一冊目・『朱き偽物の構図』

2018-06-04 20:22:31 | サスペンスはお好きですか?
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 英雄を求め、しかし英雄が現れなかったその国は、とうとう自ら英雄を作り出すことにした。人々が望む英雄の姿は実在の人物の特性を組み合わせながら完成に近づいて行ったが、やがて完成した腎臓の英雄の前に素体となった人間はすべて英雄の偽物として処分され、優れた人間を根絶やしにした国は亡びた。
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