カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

物語その12・黒い廃太子

2019-11-19 21:37:26 | 不等号の関係性
たかあきは、神学生と黒猫に関する退屈の物語を創作してください。

 礼拝堂裏に住み着いた薄汚い黒猫は自分の事を誇り高き魔王の息子と称し、神の奴隷の世話になどならんと僕の手を引っ掻いた。魔王のご子息が何故このような場所で暮らしているのかと尋ねるとまあ色々あったとしか言わず、ある雪の日に死にかけていたのを見かねて家に連れ帰って以来一切喋らなくなった。きっと普通の猫として第二の人生を送ると決めたのだろう。
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物語その11・少年の目線

2019-11-18 18:26:54 | 不等号の関係性
たかあきは、大商人と貧乏画家に関する日常の物語を創作してください。

 彼は絶えず屋敷に押し掛けては父に自分が描いた絵を押し付けて酒盛りに興じる貧乏画家が大嫌いだった。だから家督を継いですぐ、貧乏画家を屋敷から締め出し野垂れ死ぬに任せた。その後処分されることになった大量の絵は偶然目利きの画商に見いだされ、高額で買い取られたのだが、彼の心は未だ晴れることがない。
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物語その10・横切る黒猫

2019-11-17 21:36:55 | 不等号の関係性
たかあきは、富豪の愛娘と黒猫に関する日常の物語を創作してください。

 運転手が飛び出してきた黒猫を轢いた日、屋敷に戻ると娘が黒猫を拾って来ていた。捨てなさいと言っても聞かないので娘が留守の間に何度も捨てさせたが必ず戻ってきて何度も喧嘩になった。やがて会社が倒産した私は全てを失ったが、家を出て行った娘は安アパートで黒猫と幸せに暮らしているらしい。
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物語その9・彼の旅は未だ終わらず

2019-11-15 22:16:35 | 不等号の関係性
たかあきは、老騎士と苦学生に関する友愛の物語を創作してください。

 老騎士の元に現れた学生は彼が参加した戦いについて詳しく話して欲しいと言った。もはや誰も顧みない敗残の英雄は何日もかけて学生に戦場を駆け巡った若い頃の話を聞かせてやり、記念にと学生に黄金造りのメダルを渡した翌日に亡くなった。やがて博士となった学生は老騎士の名誉を回復する著書の表紙に彼から貰ったメダルの意匠を使った。
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物語その8・大魔王が描かせた夢

2019-11-14 19:17:28 | 不等号の関係性
たかあきは、大魔王と貧乏画家に関する退屈の物語を創作してください。

 英雄になりたかったが世界や魔界の住人がそれを許さなかった偉大なる魔王は仕方なく貧乏画家に己の雄姿を描かせて慰めとした。貧乏な画家は文才もあったので緻密な架空の戦記を捏造して魔王を楽しませた。その為、数千年後の魔界考古学者は時代にそぐわぬ大魔王の存在について頭を悩ませる事になった。
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物語その7・天使の翼の行方

2019-11-13 20:35:31 | 不等号の関係性
たかあきは、地方領主と一人ぼっちの少年に関する栄光の物語を創作してください。

 館で働いていた身寄りのない少年は領主にその才能を見出されて絵画を学び、やがて都に出て善き師匠の下で学んだ末に国内でも評判の画家となった。彼は優しく絵画の素養がある領主を己の父のように慕っていたが、それがあながち的外れではない感情であると知っていたのは当の領主ただ一人だった。
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物語その6・齧られた果実

2019-11-11 20:43:01 | 不等号の関係性
たかあきは、お嬢様と孤児院の幼女に関する退屈の物語を創作してください。

 大きな屋敷に住む令嬢と街外れの施設で暮らす少女の境遇は何もかもが違っていたが、二人にはとてもよく似た点が二つあった。一つはその顔立ち、そしてもう一つは裡に抱えた退屈の大きさだ。そして出会ってはならなかった二人が己の退屈のままに犯してはならない罪を犯した時、惨劇の扉は開かれた。
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骨董品に関する物語・占いカード「グラン・ジュー・ド・ルノルマン」

2019-11-08 20:34:34 | 突発お題

 彼女は美しく彩られた絵柄のカードを白く細い指で卓に並べ、実に容赦のない託宣を行うのが常だった。当人はカードに現れる内容を可能な限り正確に言語化しているつもりらしかったが、重すぎる真実に背骨を折られぬ人間は数少ないことを理解しておらず、故にあの日の悲劇が発生した。
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物語その5・慈悲深き女帝と夜鳴鶯

2019-11-08 20:22:13 | 不等号の関係性
たかあきは、白銀の女帝と夜啼鶯(ナイチンゲール)に関する追憶の物語を創作してください。

 白銀の女帝が愛でた夜鳴鶯はその美しい声で彼女を喜ばせたが、女帝の申し出た庇護を拒んだ。自分は森に棲むものであり、黄金造りであろうと籠の中では暮らせないのだと。寂寞の念と共に夜鳴鶯と別れた彼女はそれから二度と夜鳴鶯と再会することは無かったし、その最期がどうなったかも知らないままだ。
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物語その4・ある愛の詩(一応)

2019-11-07 22:29:52 | 不等号の関係性
たかあきは、妖精王と貧乏詩人に関する愛憎の物語を創作してください。

 詩才のない妖精王が妖精の娘を口説く為、人間の詩人に愛の詩作を依頼した。貧乏な詩人は乞われるままに詩を用意して妖精王はそれを娘に囁きかけた。やがて妖精王の妻となった娘は初めて共にした閨で愛の歌を要求し、当然のことながら厄介な事態を引き起こしたが結局離婚までには至らなかったらしい。
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