アーク・フィールドブック

四万十フィールドガイド・ARK(アーク)のブログ

風と風とが出会うところ

2011-03-11 | 四万十川 早春

 最高気温12度。

 「水と水とが出会うところは、風と風とが出会うところでもある」

まだ春浅い四万十川が僕に教えてくれたコト。

 

 早春のある日(3月9日)。

僕らは、カヌー(カナディアン)に・テーブル・イス・昼食・飲み物を積んで、リバーピクニックに出掛けました。

ひとあし早い春のおとずれを、水の上でも感じたくなったのです。

コースは、津大橋(西土佐網代)~口屋内沈下橋(口屋内村)まで。漕行11キロ。

 

 晴れた川は北風が強く、流れる雲が陽を隠せば、風の冷たさをヒシヒシと感じます。

カヌーを押しスバヤク乗りこみ、少し波立つ水面にスイーッと滑りだす。

長靴をわすれた僕は、のりこむ時、うかつにも水に足をぬらしてしまいました。

「うーん、足がひやい・・・。でも、アタマのうえが広いのは、キブンがイイね!」

久しぶりに水面から見渡す川景色は、とてもシンセンに感じられます。

カヌーの上から川に手を浸してみる。春先の川の水は、まだとても冷たく、20秒ほどで指先がいたくなってきます。

川面の水温は10度くらいか?やせた川の水の透明度は、まぁまぁといったところ。

 

 北風に押されながら、カヌーはゆっくりと川を下ってゆきます。

早春の川岸をいろどるのは、芽吹きたてのヤナギ(春告げ木)の萌葱。菜の花の黄。

あと10日ほどでサクラも咲きはじめれば、まだハダカの落葉樹の芽もつぎつぎとほころぶでしょう。

じこじこと色が増えてゆく春の岸べ。僕らは、明るい春を漕いでゆく。

ガラガラ。ん?音のした方をみる、と白いお尻をふりふりシカが斜面を登っていきました。

 

 6キロほど下って川原に上陸、ランチタイムです。 

メニューは・パン(リエイロさん、サンキュー)・シチュー・コーヒー。

時折ごうごうと吠える風にテーブルごと川に吹き飛ばされそうになり、ややアセル。

昼食後、再びカヌーに乗りこんで出発!口屋内沈下橋まで、あと5キロ。

 

「風と風とが出会うあうところ 」

 

 「むかい風がきつくなったにゃー」前部漕者の平塚さん。

「きついっすねぇー」後部漕者の僕がこたえる。

もうすぐゴールの口屋内沈下橋。

その手前の長いとろ場の途中で、トツゼン風向きが南にかわってしまいました。

それまでは北風が、僕らの背中とカヌーをぐいぐいと下流に押してくれてたのに。

 

 キツイむかい風にぐらつくカヌー。平塚さんが右ナナメ前方を指差して言う。

「あそこに黒尊の谷があるろ、この向かい風は、黒尊の谷を吹き抜けてきた強い風が

本流にでて対岸の山にあたる。そこで分かれた風の一方が上流(かみ)に吹きつけてるんよ」

四万十川の支流黒尊川の水は、口屋内村で四万十川本流の水に合流しています。

「水と水とが出会うところは、そうか、風と風とが出会うところでもあるんだ・・・」

そんな小さな発見を、僕は少し嬉しく思いました。

 

 ゴール手前のきつい向い風のとろ場を、

わっせわっせと漕ぎ、午後のはやい時間に、口屋内沈下橋にブジ到着。

ふと見上げた川岸には、フジツツジの花も咲きはじめていました。

 

*平塚さん:シマムタ共游国(レンタルカヌー)

*とろ場:水の流れがゆるいところ

*タイトルは、レイモンド・カーヴァー詩集「水と水とが出会うところ」より