あるBOX(改)

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「封印作品の謎」、そして「サイボーグ009(移民編)」 

2012年12月27日 | 漫画
現在、「はだしのゲン」は一部改訂されての発行・・・と書いてて
思い出したのが安藤健二という人が書いた「封印作品の謎」。

amazonの紹介では
ウルトラセブンからブラック・ジャックまで
『ウルトラセブン』『怪奇大作戦』『ノストラダムスの大予言』
『ブラック・ジャック』『O‐157予防ゲーム』これらの作品は、
なぜ、どう禁じられたのか。粘り強い取材で意外な真相を明らかに
する新世代ルポルタージュ
・・・と説明されている。

いわゆる「被爆者、精神障害者に対する偏見あり」「当事者の心に痛手を残す」と見做され、再録や再放送が自粛されている作品群だ。
(一部は著作権問題で作者と出版社などが険悪になり再版できないパターン)

「封印作品・・・」に関しては、
私も充分に読んだワケじゃないので何とも言えないが、
まぁ「ゲン」に関しても生々しい描写があるから出版サイドの
自主規制、または然るべき団体からの抗議を受けての対応が
あったのだろう。

そして
先日帰省した私が実家で読んだ石森先生の「サイボーグ009」。
この古い単行本(第8~9巻)は、改訂前のモノだった。



ここに収録されている「移民編」は、
現在発行されている内容とは大きく異なる。
現行のストーリーは石森先生自身が書き換えたモノらしいが、
「封印されないため」の苦肉の策なのか、被爆者への誤認を
改める為なのかは分からない。

物語の概要は改訂前も後も同じ。
未来(1982年!?)、米国と中国の間で第3次世界大戦が始まり、
核爆弾が使用される。
その放射能に汚染された地球には住めないと、未来人たちは
タイムマシンで現在の地球に移民しようとする。

ただし、これは友好的なものでは無く、水面下で政治・経済を
牛耳る人物になり代わるという実質的には侵略行為であった。

そして、それを阻止しようとするサイボーグ009たち。
事情を知った009は平和的解決を求めるが、
未来人からは「人種や国境の事で争いあってるオマエたちが
我々を受け入れる訳がない!」と、厳しい反論が返ってくる。



ここで、改訂前の未来人は叫ぶ。
「ましてや、我々はモンスターだ!」

古い単行本では、放射能のために人間自体の容姿が怪物化して
いるという設定なのだ。
核戦争後に生まれてくるのは、手足が無かったり、鱗が生えて
いたり、指が多かったりの子供。五体満足な人間は生まれてこない。

これ以上、放射能に汚染された地球に居たら人類は滅んでしまう。
古代に移り住みたいが、タイムマシンの性能上、限界がある・・・。

この「被爆モンスター」の表現が引っかかったと思われる。
広島・長崎で原爆症に苦しむ人はいるが、モンスターは居ない。

よって、「放射能の影響で巨大化した凶暴な昆虫や植物が人間を
襲う世界となり、襲われた未来人は皆が手足がなかったりする
不遇の人たちである」という設定に改訂されている。

作者は核戦争の悲惨さを描こうとしたが、現実に核の被害に
遭った人からすると苦痛としか感じられない。

じゃあ、放射能に汚染された土地でそのような悲劇が無いかと
いうと、私は修学旅行で原爆博物館を訪れ、「無脳児」の写真を
見ている。
「はだしのゲン」では放射能を浴びた後、年月を経てから吐血して
死亡する被爆者の描写がある。

核の被害者が差別されないように気を使っても、
「放射能による人への影響」を過小に伝える結果になってしまう。

これは現在の「フクシマ」にも当て嵌まる事だ。
すっかり各原発の再稼動に動きは移っている気がするが、本当の
被害が明らかになるのはこれからだ。

生前、石ノ森先生も相当に葛藤があったのではなかろうか。
「移民編」改訂後の設定を知るにつれに、そんな事を考えさせられた。