あるBOX(改)

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「小学館版学習まんが人物館」を読む

2013年12月17日 | 漫画
知っておきたい日本と世界の人物をまんがと解説で紹介する・・・というシリーズ。

貴重な資料、時代考証のすえ、それぞれの偉人の生涯を
シナリオライターとまんが家の共同作業で作品化・・・という触れ込みで。

「図書館で借りて、ちびスケに読ませてやるか」と思って調べたら
「宮沢賢治」さんがあったよ。
副題は「銀河を旅したイーハトーブの童話詩人」と来たよ!

しかも絵が・・・村野守美さんだよ!!!

私が大好きな絵を描く人だよ。
何が好きか、どう好きかなんて説明できませんよ。
ただ、この人の絵が好きなんですよ。



小学館の解説は、
「賢治の生涯を、童話や詩の作品も織り込みながら、まんがでつづる。
自然を愛し、農業を大切に考え、大地とともに生きた賢治の一生をわかりやすく解く」
・・・というもの。

あまり村野さんを全面に押し出したものじゃないが、村野ファンには堪らない要素満載です。
最初から賢治の童話で始まってるし。村野さんの柔らかな線は見事に童話を再現してるし。

結局、私がハマって読んでしまいました。



子供向けに作られた本なので内容は小難しくないのが良い。
家族との関わり、人生の歩み、功績、さらに仏教に傾倒した後の人生観、
死生観など様々な思いが時系列で描かれていく・・・。

そして村野さんの絵の特徴と言えば、女性の素晴らしさ。
賢治には2才下のトシという妹がいて、賢治の才能を疑わない最高の理解者だったとか。

実在のトシさんも、才色兼備だったそうだが、村野さんが描くトシは
やさしく清潔で美しい。

彼女が結核で病床に伏せるシーンでも、村野さんの描線は美しく儚い。
そして、24才というトシの若い死に際し「オイオイ」と頭を押し入れに突っ込んで泣く賢治。

私も読んでて泣きました。
(我ながら涙もろくなったなぁ・・・・)

樺太の鉄道で北上しながら、トシを想う賢治。
そこから「銀河鉄道の夜」が生まれたという。

そして最後は賢治も胸を病み、出版した作品が日の目を見る事を知らぬまま亡くなった。
※死後、高村光太郎らの文人が全集を編んだりして、賢治の才能を世に広めた。

ここでワタクシまた泣きました。
偉人は早世しちゃうんだもんな。昔は薬も無かったしなぁ・・・。



そして「高村光太郎・智恵子」。
智恵子の心の病にもめげず、変わらぬ愛を貫いた光太郎の人生をつづるストーリーまんが。

こちらも村野守美さん。
シナリオがカッチリ固められてたら漫画家・村野さんに自由度は少なかったかも知れないし
御本人が、どれぐらいの充実度で描かれたかは分からない。

しかし、それでも私の胸には迫ってくるんですよ。
光太郎の芸術家としての思いと、智恵子の存在感が・・・。

智恵子は「もう一人の主人公」だから、
村野さんの筆致も冴えてます。

やっぱり智恵子さんの臨終では泣かされてしまいました。
※みんな死んじゃうんだもんなぁ・・・

それをウェットに描かず、かといって淡々とも描かない。
さすが村野守美さんですよ・・・。
やはり虫プロ出身ですよ。

手塚治虫に師事しながら『鉄腕アトム』や『ジャングル大帝』
『カムイの剣』などのアニメ作品に作画や演出として参加した方ですよ。

漫画家・アニメ作家・絵本作家・イラストレーターとして活動は多岐に渡った村野さんですよ・・・。

この「小学館版学習まんが人物館」シリーズは、村野さんにとって晩年のお仕事で

村野さん自身は、2011年3月7日に心不全のため東京都府中市の病院で死去されました。
享年69才。

漫画家さんは若い頃ムチャして仕事するから短命なんですよね。

例によって全ては読んでいないから、今からでも「オサムとタエ」シリーズは集めてみようかなぁ・・・。

少年を甘やかさなかった漫画:「ウルフガイ」

2013年12月17日 | 漫画
掲載は、講談社の少年誌「週刊ぼくらマガジン」
少年誌を青年が読むようになって内容が子供向けには厳しくなってきた・・・として
「再度マンガを子供向けに」と創刊された雑誌。

しかし、そんな雑誌も子供を甘やかさなかった!(笑)

ウルフガイシリーズの原点です!
原作は、あの平井和正。作画は坂口尚!



孤高の人狼=犬神明の宿命の戦いを描いたSFアクション小説の傑作、
「狼の紋章」「狼の怨歌」の原点といわれる漫画。

平井和正といえば「幻魔大戦」も石森章太郎の作画でスタートし、
これまたライフワーク的な小説に成長させたが
「ウルフガイ」主人公の孤高ぶりは印象深かった。

連載されたのは1970年から1971年まで、全31回。
作画の坂口尚は、当時アニメーターとして実績を持ち(虫プロ)、漫画家としても頭角を現し始めていた時期。

アニメーターらしい流麗なタッチで(描くの速かったろうなぁ・・・)
犬神明の苦悩を表現されています。

主人公が、狼の特性を持った人間ですから。
その時点で悩み満点です。

脅威の生命力に目を付けた勢力に追われ、鎖に繋がれるウルフガイ。
理解者である女性教師は囚われの身となり、救いに向かうウルフガイ。



鎖を引き抜こうとして、逆に血まみれになって苦しがるウルフガイの姿が痛々しかった。
しかし「オレはウルフガイ。この程度の事で・・・」と立ち上がる。

そんなシリアスな絵を描いた坂口さんですが
実験的な作品を描いたり、アクション物じゃないSFを手掛けられたり、
柔らかな線でファンタジー的な漫画を発表されたり・・・と多岐に渡って活動されてました。

全て読んだ訳じゃないけど、ふんわりした絵も好きでした。
私の中じゃ、「村野守美」さん「向後つぐお」さんと同じ系列にあるんですよねぇ・・・。



坂口さんは、1995年12月22日に急性心不全により49歳の若さで逝去されているが
手塚治虫の元に集まった「天才」の一人として、ファンの心に残り続ける事でしょう・・・。

※ある意味「大天才の周辺で天才が消耗する」虫プロ入りしたのが
 不運の始まりでもあったのだが、それはまた日を改めて・・・