札幌の市電に乗り、電停「行啓通」下車、徒歩五分ほど。
「とらや」は、敢えてカテゴリーに当てはめるなら、やはり「大衆食堂」。外観も、まさに地元に愛されてるような佇まい。
でも、後にそんなカテゴリーにはハマらないポテンシャルを思い知ることになります。
年季の入った渋い色合いの暖簾を潜り、引き戸を開けたら案の定。
「いらっしゃい!!!!!」と言う、威勢のいいご主人の声。
決して、ススキノにありがちな、観光客の皆さんをピンポイントで狙う海鮮居酒屋の店員のように、ただ単に勢いだけで闇雲に大声を張り上げている訳ではありません。
気持ちのこもった、しっかり客を迎えると言う覚悟すら感じる力強い声。その気迫、清々しい。否応なしに、こちらもこれからいただくお料理に期待が高まるというもんです。
カウンターに目をやれば、これまた案の定。常連さんらしきお客さんがお二人。
ご主人や女性の店員さん(娘さん?)と実に楽しそうに談笑しながら、ゆったりと瓶ビールなどをやってらっしゃる。地元からの愛され具合を感じます。
「どうぞテーブルでゆっくり過ごしてください!」
と促されて、四人掛けのテーブルへ。もちろん、こちらは一人。
初めての店なので、お昼時を避けた時間に伺ったとは言え、ありがたいお気遣い。どっかり座らせていただきました。
ますば瓶ビールを注文。小皿のお通しをアテに、冷たいビールで喉を潤しつつ壁のメニューに目をやれば…
ラーメン、餃子などの中華に丼もの各種、カレーに定食。清く正しく潔い「食堂」のメニューが勢揃い。これを見ただけで大興奮(笑)。あぁ、全部食べたい。
でも、最初から食べるものは決めていました。
ポークソテーライス。
一枚目の写真です。
カリッとした表面の豚肉は、噛むとしっとり軟らか。そこにトマトベースで酸味の利いた爽やかなソースが。野菜もたっぷり。マカロニサラダも盛られています。
これをつまみにビール。予想通り、最高。
ソースをたっぷり絡めて、熱々を口の中へ。このソースが素敵。デミグラスと言うよりかは、デミグラス寄りのトマトソースとでも言いましょうか。甘辛具合が丁度よい。白飯をかっ込む速度を激しく加速させる味わい。
残ったソースは、添えられた千切りキャベツで残さず絡め取っていただきました。
横に鎮座していたマヨネーズをさらに絡ませて一緒に食べると、これまた幸せな味。
マカロニサラダは、豚肉の相棒としての役割をしっかり果たしていました。
この一皿。
老舗洋食屋さんと同じか、それ以上。
あちこちの洋食屋さんでポークソテー(ポークチャップ)を食べてきましたが、むしろ、ここまでしっかり手間をかけた逸品は、昨今の洋食屋でも中々出会えないかも。
手間をかけたことが、端々に滲んでます。
料理が出てきた早さは"食堂"ならではのスピード感が。このスピードは、熟練された手際の良さと技の賜物かと。
丁寧かつダイナミックに、手間隙と技を注いだ「ご馳走」をご主人は出してくださいました。ゆっくり、しっかり噛み締めましたよ。
丼に盛られたご飯や味噌汁にも、丁寧さを感じました。シャキッと炊かれたご飯。研ぎ具合と水加減の良さの証しです。味噌汁は懐かしさすら感じる、優しい家庭の味。すなわち、正しき定食の味噌汁。
料理が全部出たあとに「お客さん、トロロは大丈夫ですか?」と聞かれたので、大丈夫ですと答えたら、下ろし立てのトロロを小鉢で出してくださいました。期せずしてトロロご飯。嬉しさのツボを次々突かれます(笑)。
あぁ。
こんなお店が自宅近くにあったらなぁ…、なんて考えながら箸もビールも止まらず。
そしてあまりの興奮からか、やがて食欲のリミッターが外れました(笑)。
醤油ラーメンを追加(ビールも追加)。
チャーシューにナルトにメンマ、青菜にたっぷりのネギ。食堂ラーメンの横綱降臨。
最先端のラーメンより、こういうラーメンの方がホッとします。元々、ラーメンって気軽な食べ物。やれ○○系だの、スープは(以下略)…な、難しいラーメンは疲れます。
(^_^;)
でも、このラーメンも必要な手間はしっかりかかってますよ。
聞けば、スープにしても熟成させたスープと、まだ若い、ひいたばかりのスープを合わせているとのこと。
注文後には麺の堅さの好みも聞いてくださいました。いやはや、ありがたい。堅めでお願いしました。
スープも飲み干しましたよ。あっさりしつつもコクがある。塩梅もちょうどいい。要点を押さえた一杯。だからスープも飲み干したくなるんです。
そして。
カレーも追加(ビールも追加。)
豚バラのカレー。カレーの正義を貫いています。しかも、ふと見ると卵が。オムカレーがデフォルトのようです。
これも、本当に人懐っこいカレーですよ。真紅の福神漬けも輝いてます。こうでなくては。カツカレーに踏み込む勇気がなかったのが悔やまれます。
ちなみに。
ラーメンのスープを飲み干す手前でカレーを注文したら、さすがにご主人が一瞬「え?!」と言う表情をして、横に居たお客さんも軽く吹きました(笑)。
当然ですよね。
(^_^;)スミマセン
こちらのお店を知ったきっかけは、とあるFMラジオの番組で紹介されていた「いとしの大衆食堂」と言う一冊の本。食べ歩きが好きな方にはお薦めの一冊。
北海道各地の大衆食堂を取り上げた本でして、まさに大衆食堂への愛に溢れる本でした(※ラーメンのスープの作り方などは、こちらの本から得た情報です)。
ご主人は人の道理を知る方だと、常連さんの話としてこの本に書いていました。それを裏付けるエピソードなども。短い時間で会話らしい会話もしていませんが、その素敵なお人柄は、清々しい接客や料理などから僕も感じ取れました。納得です。
人の道理を知る方は、味の道理もご存知なのでしょう。
丁寧な仕事をしっかり施す実直な味。
質実剛健。
帰り際は「美味しかったです」と、僕もご主人の目をしっかり見てお礼を言い、それにご主人は満面の笑みで応えてくださいました。
食べることの喜びを全身に浴びた昼下がり。感謝の気持ちが、ふわりふわりと胸に湧き上がりました。
間違いなく、またこの店に来たくなる。
そんな確信を抱きつつ、三人前の料理と三本のビールを収めた腹をさすりつつ(笑)電停へ歩くのでした。
「とらや」は、敢えてカテゴリーに当てはめるなら、やはり「大衆食堂」。外観も、まさに地元に愛されてるような佇まい。
でも、後にそんなカテゴリーにはハマらないポテンシャルを思い知ることになります。
年季の入った渋い色合いの暖簾を潜り、引き戸を開けたら案の定。
「いらっしゃい!!!!!」と言う、威勢のいいご主人の声。
決して、ススキノにありがちな、観光客の皆さんをピンポイントで狙う海鮮居酒屋の店員のように、ただ単に勢いだけで闇雲に大声を張り上げている訳ではありません。
気持ちのこもった、しっかり客を迎えると言う覚悟すら感じる力強い声。その気迫、清々しい。否応なしに、こちらもこれからいただくお料理に期待が高まるというもんです。
カウンターに目をやれば、これまた案の定。常連さんらしきお客さんがお二人。
ご主人や女性の店員さん(娘さん?)と実に楽しそうに談笑しながら、ゆったりと瓶ビールなどをやってらっしゃる。地元からの愛され具合を感じます。
「どうぞテーブルでゆっくり過ごしてください!」
と促されて、四人掛けのテーブルへ。もちろん、こちらは一人。
初めての店なので、お昼時を避けた時間に伺ったとは言え、ありがたいお気遣い。どっかり座らせていただきました。
ますば瓶ビールを注文。小皿のお通しをアテに、冷たいビールで喉を潤しつつ壁のメニューに目をやれば…
ラーメン、餃子などの中華に丼もの各種、カレーに定食。清く正しく潔い「食堂」のメニューが勢揃い。これを見ただけで大興奮(笑)。あぁ、全部食べたい。
でも、最初から食べるものは決めていました。
ポークソテーライス。
一枚目の写真です。
カリッとした表面の豚肉は、噛むとしっとり軟らか。そこにトマトベースで酸味の利いた爽やかなソースが。野菜もたっぷり。マカロニサラダも盛られています。
これをつまみにビール。予想通り、最高。
ソースをたっぷり絡めて、熱々を口の中へ。このソースが素敵。デミグラスと言うよりかは、デミグラス寄りのトマトソースとでも言いましょうか。甘辛具合が丁度よい。白飯をかっ込む速度を激しく加速させる味わい。
残ったソースは、添えられた千切りキャベツで残さず絡め取っていただきました。
横に鎮座していたマヨネーズをさらに絡ませて一緒に食べると、これまた幸せな味。
マカロニサラダは、豚肉の相棒としての役割をしっかり果たしていました。
この一皿。
老舗洋食屋さんと同じか、それ以上。
あちこちの洋食屋さんでポークソテー(ポークチャップ)を食べてきましたが、むしろ、ここまでしっかり手間をかけた逸品は、昨今の洋食屋でも中々出会えないかも。
手間をかけたことが、端々に滲んでます。
料理が出てきた早さは"食堂"ならではのスピード感が。このスピードは、熟練された手際の良さと技の賜物かと。
丁寧かつダイナミックに、手間隙と技を注いだ「ご馳走」をご主人は出してくださいました。ゆっくり、しっかり噛み締めましたよ。
丼に盛られたご飯や味噌汁にも、丁寧さを感じました。シャキッと炊かれたご飯。研ぎ具合と水加減の良さの証しです。味噌汁は懐かしさすら感じる、優しい家庭の味。すなわち、正しき定食の味噌汁。
料理が全部出たあとに「お客さん、トロロは大丈夫ですか?」と聞かれたので、大丈夫ですと答えたら、下ろし立てのトロロを小鉢で出してくださいました。期せずしてトロロご飯。嬉しさのツボを次々突かれます(笑)。
あぁ。
こんなお店が自宅近くにあったらなぁ…、なんて考えながら箸もビールも止まらず。
そしてあまりの興奮からか、やがて食欲のリミッターが外れました(笑)。
醤油ラーメンを追加(ビールも追加)。
チャーシューにナルトにメンマ、青菜にたっぷりのネギ。食堂ラーメンの横綱降臨。
最先端のラーメンより、こういうラーメンの方がホッとします。元々、ラーメンって気軽な食べ物。やれ○○系だの、スープは(以下略)…な、難しいラーメンは疲れます。
(^_^;)
でも、このラーメンも必要な手間はしっかりかかってますよ。
聞けば、スープにしても熟成させたスープと、まだ若い、ひいたばかりのスープを合わせているとのこと。
注文後には麺の堅さの好みも聞いてくださいました。いやはや、ありがたい。堅めでお願いしました。
スープも飲み干しましたよ。あっさりしつつもコクがある。塩梅もちょうどいい。要点を押さえた一杯。だからスープも飲み干したくなるんです。
そして。
カレーも追加(ビールも追加。)
豚バラのカレー。カレーの正義を貫いています。しかも、ふと見ると卵が。オムカレーがデフォルトのようです。
これも、本当に人懐っこいカレーですよ。真紅の福神漬けも輝いてます。こうでなくては。カツカレーに踏み込む勇気がなかったのが悔やまれます。
ちなみに。
ラーメンのスープを飲み干す手前でカレーを注文したら、さすがにご主人が一瞬「え?!」と言う表情をして、横に居たお客さんも軽く吹きました(笑)。
当然ですよね。
(^_^;)スミマセン
こちらのお店を知ったきっかけは、とあるFMラジオの番組で紹介されていた「いとしの大衆食堂」と言う一冊の本。食べ歩きが好きな方にはお薦めの一冊。
北海道各地の大衆食堂を取り上げた本でして、まさに大衆食堂への愛に溢れる本でした(※ラーメンのスープの作り方などは、こちらの本から得た情報です)。
ご主人は人の道理を知る方だと、常連さんの話としてこの本に書いていました。それを裏付けるエピソードなども。短い時間で会話らしい会話もしていませんが、その素敵なお人柄は、清々しい接客や料理などから僕も感じ取れました。納得です。
人の道理を知る方は、味の道理もご存知なのでしょう。
丁寧な仕事をしっかり施す実直な味。
質実剛健。
帰り際は「美味しかったです」と、僕もご主人の目をしっかり見てお礼を言い、それにご主人は満面の笑みで応えてくださいました。
食べることの喜びを全身に浴びた昼下がり。感謝の気持ちが、ふわりふわりと胸に湧き上がりました。
間違いなく、またこの店に来たくなる。
そんな確信を抱きつつ、三人前の料理と三本のビールを収めた腹をさすりつつ(笑)電停へ歩くのでした。