備 忘 録"

 何年か前の新聞記事 070110 など

080331 現代資本主義の限界

2013-09-02 20:07:17 | 経済
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’08/03/31の朝刊記事から

現代資本主義の限界
京大大学院教授 佐伯 啓思     


過剰な資金 世界揺るがす


アメリカのサブプライムローン問題をきっかけとして世界的な景気の悪化が懸念されている。
サブプライムローンとは、プライムローン(優良貸し付け)に「サブ」がつくように、信用度の低いものへ向けた住宅ローンである。
したがって、当然リスクは高くなる。

住宅価格が上昇している間は、無理をしてローンを組んでも住宅を売れば過重ローンは返済できる。
しかし、ひとたび住宅価格が下落すれば、不良債権が続々と発生することとなる。

これは、バブル崩壊後の1990年代の日本で生じたことと基本的には同じであるし、95年ごろの住専問題とも同じ構造を持っている。
しかし、それがどうしてアメリカだけの問題にとどまらないのか。
それは、ローンを金融商品化してグローバルな市場で取引し、リスクを世界中に分散したからである。

つまり、不良債権化した場合のリスクを分散することで貸し付けに伴うリスクを軽減しようとした結果が、むしろ先進国中にリスクをばらまいてしまったのである。
しかもどこにどれだけの不良債権が存在しているかが不明なので、投資家は株式市場からもいっせいに資金を引き揚げる。

ではその資金はどこへ向かっているかといえば、金の市場であり、さらには原油や穀物などの先物市場である。
原油や穀物の先物市場が、当座はもっとも確実に利益がかせげる市場ともみなされているからだ。

かくして、この影響は日本にも波及し、株式市場は全面安、ドル安の結果としての円高、資源や穀物価格の高騰となり、経済に著しい悪影響を及ぼしている。


実体なき経済
一体、何が起きている、と考えればよいのだろうか。
まず住宅パブルとその崩壊があり、またそれと連動して資源や穀物の商品先物市場で投機が生じた。
これらはいずれも実体に基づいた生産や取引ではなく、経済の実体から離れたところで、資本が動くことで価値を生み出す。
しかも、その影響が為替市場や株式市場の変動を通じて世界経済全体に即座に波及する。

要するに、過剰な資金が世界をかけめぐり、バブルや投機を起こすことで利益を生み出しているわけだ。
それこそが今日の経済の実相にほかならない。

このような動向が一時的なものならよい。
だがサブプライムローンの問題は、ただ金融規律の一時的な混乱とか、ずさんな融資というだけの問題ではない。
そもそも、通常ならほとんど市場へは登場し得ないようなリスクの高い融資をし、住宅バブルをつくり出さなければ利益を上げることができない、というところまで今日の経済活動は追い込まれていることになる。
世界経済を牽引したアメリカの好景気が、不動産バブルと無理な融資と株式市場や商品市場での投機によってかろうじてささえられているとすれば、これは今日の資本主義そのものの限界を示しているのではなかろうか。

リスクを内包
確かなモノ作りによって、長期的に人々の必要とするものを提供する、という経済活動に代わって、グローバルな金融市場を通じた資金の急激な動きによって短期的な利益をあげる。
このようなその場しのぎを続けることによって、経済を成長させるというのが現代の資本主義である。
これは経済活動としては本末転倒だ。

先進国において、今日のような豊かな社会ができてしまえば、人々はそれほど新しいモノには飛びつかない。
そうすると、経済活動で利益をあげるためには、たえずバブルを起こし、投機的利益を無理につくりださねばならない。
この「逆立ちした経済」にたよらなければ利潤機会が確保できないとすれば、サブプライムローンのような経済の不安定は一時的な現象ではなく、たえず繰り返される、しかももっと大規模に繰り返される、ということにもなりかねない。

金をつぎ込んで不良債権を処理するばかりではなく、グローバルな金融市場によって経済を牽引するという今日の資本主義のありかたそのものを、問題としなければならない時期にきているのではなかろうか。

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080314 円 12年ぶり99円台

2013-04-30 15:53:47 | 経済
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’08/03/14の朝刊記事から

円 12年ぶり99円台
ドル全面安の様相 東証2年半ぶり安値


外国為替市場の円相場は13日、12年4ヶ月ぶりに1ドル=100円の大台を突破した。
米国景気先行き不安を背景とするドル売り円買いが加速し、日本時間同日夕に一時99円77銭まで急騰、1995年11月10日以来の円高水準となった。
ドルはユーロや英ポンドなど主要通貨に対して「全面安」の様相だ。

円急騰を受けて13日の東京株式市場の日経平均株価(225種)終値は、前日比427円69銭安の1万2433円44銭と、約2年7ヶ月ぶりの低水準まで大幅下落した。


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080220 東芝「HD」撤退

2012-12-06 20:02:15 | 経済

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’08/02/20の朝刊記事から

東芝「HD」撤退 正式に発表

東芝は19日、「HD DVD」規格による次世代DVD事業から撤退する、と正式に発表した。プレーヤー(再生専用機)やレコーダー(録画再生機)の生産を中止し、販売は3月末をめどに打ち切る。機器購入者へのアフターサービスは当面継続される。東芝の撤退で、次世代DVDの規格争いはソニーなどの「ブルーレイディスク(BD)」が勝利する形となった。

日本ではオンキョーが製造中止の検討を始めており、日本メーカーが機器製造から全面撤退する見通しとなった。米マイクロソフトも機器販売を中止する方向という。

海外でも、HD方式を単独で採用していたパラマウント・ピクチャーズなどの映画会社がBDへ乗り換えていくとみられる。HD陣営が実質的に崩壊することになる。

記者会見した西田厚聡社長は事業を継続すると消費者と経営に大きな影響が生じると判断したと説明し、「苦渋の決断」だったと述べた。

撤退の理由について西田社長は、1月初めに米映画大手ワーナー・ブラザーズがHD陣営からの離脱を表明した影響が大きいと強調した。


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080205 自給率向上に追い風? ギョーザ中毒

2012-08-10 11:42:36 | 経済

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’08/02/05の朝刊記事から

自給率向上に追い風? ギョーザ中毒
国産 量、価格ネック 業界は依然海外に依存


中国製冷凍ギョーザによる中毒問題は、海外に食料の多くを依存する日本の食卓の危険性をあらわにし、食料自給率論議に一石を投じる形になった。国産品への注目度アップは自給率向上を掲げる農林水産省にとって思わぬチャンス。外食産業では中国以外から調達する動きが出始めたものの,国産品は量と価格の点で中国産の代替となるのは難しく、海外依存脱却は容易ではない。


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080116 クローン牛肉 安全

2012-05-14 21:13:49 | 経済

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Kodak DC4800


’08/01/16の朝刊記事から

クローン牛肉 安全
米当局発表 日本に輸出の可能性


【ワシントン15日共同】米食品医薬品局(FDA)は15日、クローン技術で生まれた牛、豚、ヤギとその子孫から生産した肉と乳製品について、通常の家畜と同様に食べても安全だとする最終報告書を正式発表した。

FDAはクローン食品の流通自粛を業界に求めてきたが、報告書と同時に発表した企業向け指針で「通常の食品以上の規制は必要ない」との見解を示しており、販売への事実上のゴーサイン。

米国内で将来、クローン牛などの流通が始まれば、日本に輸出される可能性も出てくる。だが米メディアによると、クローン食品が実際に市場に出回るには数年はかかるとみられる。FDAはまた、クローン食品に特別な表示は必要ないとの立場で、この点は米内外で論議を呼びそうだ。

クローン技術は、成長した動物の体細胞から同じ遺伝子を持つ動物をつくる手法で、報告書は1000ページ近い膨大なもの。

米紙ワシントン・ポストによると、FDAはクローン技術が使われた牛肉や牛乳、豚肉などの脂肪、タンパク質、ビタミン類などを検査し、値は通常のものと変わらないと結論付けた。また3カ月以上にわたり実験動物にこれらのクローン食品を与えたが、異常は見られなかったとしている。

クローンヒツジについては、安全性を判断するための十分な情報が得られなかったという。

ポスト紙などによると、欧州連合(EU)当局は先週、オーストラリアやニュージーランドに続く形でクローン食品は安全との報告書案を発表。米国もそれに追随した形だ。



輸出の際は表示を
クローン動物に詳しい今井裕京都大教授(生殖生物学)

安全性評価をめぐる科学的な判断はおおむね妥当と言えるのではないか。ただ、日本ではクローン家畜の安全性評価はまだ行われていないため、もし何の表示もないままクローン牛肉が対日輸出されるような事態になると、大変な混乱を招くことになる。消費者の選択を守る観点からも表示は必要だと思う。日本としては、今回のFDA報告書も参考に、政府の食品安全委員会でクローン牛などの安全性評価を急ぐべきだ。
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