'07/09/20の朝刊記事から
鹿児島県議選冤罪 元警部補を在宅起訴
福岡高検「踏み字」を強要で苦痛
12人の被告全員が無罪となった鹿児島県議選の公選法違反事件で、任意取り調べ中の男性に家族の名前を書いた紙を踏ませる「踏み字」で自白を強要し精神的苦痛を与えたとして、福岡高検は19日、特別公務員暴行陵虐罪で鹿児島県警の浜田隆広・元警部補(45)=8月に依願退職=を在宅起訴したと発表した。
高検によると、直接的な暴力や猥褻行為ではなく、取り調べにより精神的苦痛を与えたことで特別公務員暴行陵虐罪に問うのは異例。
高井新二次席検事は記者会見で「踏み字は取り調べで許されない行為だ」と述べた。
強制捜査路経ずに在宅起訴とした理由については「被害者の厳しい処罰感情と浜田被告が辞職したことなどを総合考慮した」と説明した。
浜田被告が鹿児島県から福岡市に転居しているため、高検の指揮を受け福岡地検が福岡地裁に起訴した。
浜田被告は、踏み字をさせた行為自体は認めている。
県警は、浜田被告が禁錮以上に当たる刑で起訴されたことから、条例に基づき、退職金を支払わないことを決めた。
起訴状などによると、県警捜査二課の捜査員だった浜田被告は2003年4月、県議選で初当選した中山信一さん(62)の支援者だったホテル経営川畑幸夫さん(61)を、有権者に酒を配った疑いがあるとして志布志署で任意で取り調べ。
供述を拒まれたため。川畑さんの父や孫の名前と共に「おまえをこんな人間に育てた覚えはない」「早く正直なじいちゃんになってください」などと紙に書き、足をつかみ踏ませた。
鹿児島の公選法違反事件
2003年4月の県議選に立候補し初当選した同県志布志市の中山信一県議らが選挙前の同年2-3月、支援者宅で4回の会合を開き、11人に現金計191万円を渡して投票を依頼したとして、買収と被買収双方の計13人(公判中に1人死亡)が公選法違反の罪で起訴された事件。
捜査段階で一度自白した6人を含む被告全員が公判で否認。
鹿児島地裁は今年2月、「客観的証拠は全くない」と被告全員に無罪を言い渡した。
鹿児島地検は控訴を断念し、判決が確定した。