’07/10/31の朝刊記事から
金大中事件で韓国「遺憾」
日韓 関係重視し妥協
金大中事件について、韓国政府の報告書が政府機関の組織的犯行と認定したことを受け、韓国政府は30日、日本政府に「遺憾の意」を表明した。
これまで韓国側は事件の責任を認めず、「謝罪」とみなされる行為への反発もあったが、11月にも行われる日韓首脳会談を前に、両国政府は早期に火種を除き、外交関係のさらなる悪化の回避を優先させた。
明確な文言断念 日本
日本政府は、報告書が「日韓両政府が事件の真相を隠蔽したことの責任を免れることはできない」と日本の責任論にも言及したことについて不快感を隠さなかった。
韓国政府は先週末に「遺憾の意」の伝達を望んだが、「向こうが勝手に報告書を発表したのだから、一日も早くこちらが説明を受けなければならないという話ではない」(外務省幹部)として、日程の調整を先送りしていた。
しかし、問題に一定の区切りをつけなければ、安倍晋三前首相の韓国訪問で改善された両国関係が再び悪化に転じかねない。
来月、シンガポールで開催される東アジア・サミットでは、福田康夫首相と盧武鉉(ノムヒョン)大統領との初顔合わせが予想されることもあり、妥協点を探った。
日本画は当初、韓国に対し、日本への主権侵害について明確な謝罪を要求したが、韓国側は拒否。
韓国の「遺憾の意」を「陳謝」と受け止め、対外的に発表することで落ち着いた。
30日の柳明桓(ユミョンファン)駐日大使との会談後、高村正彦外相は「外交は最後まで殴り合うのがいいというものではない」と大人の対応を強調したが、明確な謝罪は勝ち取れず、割り切れなさが残った。
世論にらみ苦慮 韓国
韓国政府は「あくまでも遺憾表明であって公式謝罪ではない」(政府当局者)と強調する。
背景には根強い反日感情があり、中央日報は29日、「金大中事件で、36年間に及ぶ(植民地支配による)主権剥奪と同レベルの謝罪を要求するのはおかしい」と世論を代弁した。
もともと事件の報告書は昨年秋に発表されるはずだった。
だが、公権力による主権侵害を認定した報告書の内容をめぐって、「外交問題化」を懸念する声が噴出し、公表が遅れた経緯がある。
報告書をまとめた「過去事件の真相究明委員会」の安秉旭(アンビョンウク)委員長は、「日韓両政府から発表の延期や中止などを求める働きかけを直接、間接に受けた」と明らかにした。
盧武鉉政権は、事件当時の朴正煕(パクチョンヒ)政権を批判する立場から、事件の真相究明を進めた。
過去の軍事政権の問題とはいえ、報告書で「国家の犯罪」を明確に認めたのは事実だ。
盧大統領としては、なんらかの形で対応せざるを得ず、世論を刺激しないように「遺憾の意」という表現を選択した。
「私の人権を無視」金前大統 領報告書に不満
韓国の金大中前大統領は30日、京都市内で記者会見し、韓国政府が発表した1973年の金大中事件の報告書が、殺害目的と朴正煕大統領(当時)の明確な指示を認定しなかったことについて不満を表明した。
金氏は「日韓両政府が事件の収拾を図る中で私の人権は無視された」と批判、両政府は真相を究明する義務があると訴えた。
また、今回の来日にあたり、警視庁から事情聴取の要請を受けたが、断ったことを明らかにした。
その理由について「過去に一度応じたことがあるが、捜査は進展しなかった」と説明。
日本側が捜査を進展させる気があるなら、事情聴取に応じる用意はあると述べた。
韓国政府の「過去事件の真相究明委員会」は24日、当時の野党指導者だった金大中氏が東京都内のホテルから拉致された同事件について、韓国中央情報部(KCIA)の組織的犯行だったと、政府機関の関与を初めて認める報告書を発表した。