’08/08/26の朝刊記事から
五輪後 試練の中国
【北京25日高山昌行】中国が威信をかけた北京五輪が24日、閉幕した。
治安維持を最重視した胡錦濤政権は厳重な警備で、テロを抑え込み、人権活動家らの締め付けを強化した。
一方で、急成長を続けてきた中国経済は、変調の兆しも見え始めた。
国際社会の関心の高い治安・人権問題と、経済の「五輪後」を探った。
<治安・人権>
テロなお予断許さず
3月のチベット騒乱に端を発し、雲南省や新疆ウイグル自治区などで続発したテロや暴動。
五輪後の見通しについて、北京の公安関係者は「大半が国際社会の視線が集まる五輪に照準を合わせたものであり、アピール効果が落ちる五輪後は、おおむね収束するだろう」と推測する。
ただ8月だけで3度のテロがあった新疆ウイグル自治区については「五輪後、当局がウイグル独立派の掃討作戦を展開するのではないか」(中国紙記者)とみる向きもあり、逆に抗争が激化する虞も否定できない。
中国当局は五輪に向け、人権活動らを徹底的に締め付けた。
国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団(本部・パリ)」によると、自宅で軟禁されたり、北京を追放されたりした活動家は50人以上に上る。
地方政府の腐敗や横暴を訴えに上京した農民らも根こそぎ拘束されるか地元に追い返された。
こうして排除された人々が五輪後に、どこまで自由を取り戻せるかが中国の民主化を占う一つのバロメーターとなりそうだ。
<経済>
特需消え景気減速
上海株式市場の株価は五輪期間中に急落し、上海総合株価指数は開幕前に比べ12パーセントも値下がりした。
高騰を続けた不動産価格も北京など都市部を中心に、下落に転じ始めた。
業界関係者は「五輪特需がはげ落ちる北京では、マンションなどの賃貸料が値崩れする可能性が大きい」とみる。
中国経済は2007年まで5年連続で国内総生産(GDP)成長率10パーセント以上を達成した。
中国国家発展改革委員会マクロ経済研究院の王一鳴副院長は「五輪後も大勢は変わらない」と強調する。
だが、現実には減速懸念が強まり、食料品を中心としたインフレや失業問題も深刻。
一部の中国紙は政府が近く減税、財政支出などで6兆円規模の景気対策を打ち出すとの見通しを伝えた。
北京在住の経済ジャーナリスト、陳言さんは「道路や鉄道、港湾など公共工事が中国経済を引っ張る時代は終わった。
人民元高で輸出も期待できず、日本のマイクロエレクトロニクス(ME)革命のような新たな経済の『牽引役』が必要だ」と指摘している。