今日のひとネタ

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2009年6月のブックレビュー

2009年07月18日 | ブックレビュー
6月のブックレビューです。なにしろ「オリンピックの身代金」と「天皇論」がすごいボリュームだったので、数は少ないです。ではさっそくレビューをば。

◇リオ 今野敏
<図書館で借りた>背景が紫で黒いセーラー服に赤い血がついてるような表紙ですので、さすがに電車で読んでるときは人目が気になりま した。その印象でショッキングなセーラー服殺人事件路線を想像しましたが、実際はリオという不思議な少女を捜査する 刑事の内面に焦点を当てたもので、割と安心して読めます。まぁもちろん殺人事件の話ではありますが、基本的に人間 ドラマですね。ちょっと刑事の心情の説明がくどいかなぁ。そこが魅力かもしれないけど。いずれにしても今野さんの作品 を他のも読んでみたいと思わせるものでした。アッパレ。

◇オリンピックの身代金 奥田英朗
<ハードカバー 自分で買った>吉川英治文学賞受賞作です。奥田ファンの私としては昨年から読みたかったのですが、エコノミー&エコロジーとして文 庫しか買わないのが通常であって、今回は例外として決心しやっと買いました。感想は「面白い!!」の一言に尽きます 。オリンピックとはいえ、これは東京オリンピックを妨害しようとした男のピカレスクロマンともいえるもの。捜査陣と犯人と の駆け引きだけなら普通の小説ですが、主要な登場人物それぞれの背後にあるドラマが濃厚で読み応えありました。 警察の大物の息子でテレビ局勤務の一見軽薄でちょこっとひねくれてる若者が登場するあたりが奥田さんならではでし ょうか。私の中では今年のN0.1の予感。もっと売れてもいいと思うのですが、このボリュームが敬遠されるのでしょう か? 読もうかどうしようか迷ってる人がいたら絶対買いです。考えてみれば、文庫になったとしても最低上下巻に分か れるでしょうから、そんなに割高ではないんですね。いや、それにしてもこれでさらに「奥田ファン」と声を大にして言えま す。しばらくヒットがなかったので。

◇シネマシネマシネマ 梁石日
<図書館で借りた>大筋では実話を基にした小説でしょう。氏の小説を映画化しようとする人たちや、氏を映画に引っ 張り出そうとする人たちの熱いドラマが展開されます。しかし、そこはそれ。随所にいつもどおりビールばっかり飲んでは ウダウダする姿が見られるのでした。映画やるのは相当大変ですね。面白いかといえば、まぁ面白い話ではあります。 いつもの梁さんといえばそうですが。

◇ゴーマニズム宣言SPECIAL天皇論 小林よしのり
<自分で買った>ご存知「ゴーマニズム宣言」です。私は小林さんのファンですので大体読んでますが、今回さすがに「 天皇論なんてのは面白いのか?」と思いながら読んだら、あら不思議。これは相当面白いです。そもそも天皇という存 在については知ってるようで知らないことが多かったので、目からうろこが落ちる思いでした。「天皇とは祭祀王である。 」とキッパリ言われるとスッキリします。国民のために今日も祈って下さってるんですね。私も各種セレモニーは大事にし たいと思いました。折角日本に生まれたんですし。

◇黒頭巾旋風録 佐々木譲
<図書館で借りた>この黒頭巾は、幕末の京都に現れて勤皇の志士を助ける山鹿素行ゆかりの「怪傑黒頭巾」とは違 います。(いや、私も勘違いして借りてきたのですが) ここではアイヌを苦しめる圧政とその腰ぎんちゃくの悪徳商人た ちを懲らしめるため、颯爽と馬に乗ってやってくるのが黒頭巾なのですが、無茶苦茶かっこいいです。使う武器はなんと 革のムチ。元々新聞の日曜版での連載小説だったため、バッタバッタと切り殺して解決するのはやめてクリと言われて の苦肉の策だったそうですが、それがかえって大当たりしました。主役は武家に生まれたのに今は仏門に入ったお坊さ んというのも意外性ありますし。シリーズ物にすればもっと稼げそうだし時代劇の人気ドラマにもなりそうな予感がありま すが、案外あっさり終わりました。最初に黒頭巾が出てきたあたりはワクワクしましたね。これはお薦めです。アッパレ。

◇ケータイ紛失 吉村達也
<図書館で借りた>携帯を紛失するとどんな目に遭うか…というのを悲観的に突き詰めてみた感じでしょうか。結構期 待して読み始めたのですが、なんか2時間サスペンスドラマを見てるような感じでした。多分その辺を狙っての作風なの でしょうが、私はもういいいなぁ。

◇まほろ駅前多田便利軒 三浦しをん
<知り合いから借りた>調べてみたら直木賞受賞作品なんですね。面白いといえば面白いのですが、割と話がうまく行 き過ぎるというか人物像がイマイチ深みがないというか、そういう感じがありました。妙な同居人が随所にいい味を出し てるので、もっと弾ければすごく面白くなりそうなのに「なんとなく惜しい」という感じ。(生意気言ってるなぁ) 雰囲気とし ては重松清氏だったり石田衣良氏だったり、そういうのが頭に浮かんできてしまったのも私的にはマイナスだったかも。 借り物で文句言うのはなんですが。


 今月のベストは間違いなく「オリンピックの身代金」。これを考えると吉川英治文学賞や文学新人賞の作品を辿って読んでみたい気になります。もっとも私の好きな垣根涼介氏の「ワイルドソウル」や今野敏氏の「隠蔽捜査」なども新人賞の受賞作だったんですね。それに対して直木賞受賞作は最近とんと関心がありません。審査員の顔ぶれの問題でしょうか。まぁこの辺は「文学賞めった斬り」にまかせるとして。

 では今後もいい本に出会えますように。ちょっとは自分で買う分も増やさないといけませんわね。作家の人に敬意を表するという意味で。