――美味しい実だけが私の存在価値ではありません。
大好きな樹が今の私に何か語りかけてくれるとしたら
そんな風に伝えてくれるかもしれない。
今この瞬間を最高に楽しむということ。
「今」という時間は未来の為に我慢したり犠牲にする時間ではないの。
毎年、いろんな果物の皮でフルーツピールを作ってきた。
今年のレシピで大切にしてみたのは温度。
お鍋のなかのお砂糖液に甘夏の皮を静かに沈める。
そっと低温で数分温めて止める。
ゆっくり下がる温度を利用して甘い透明の液体と皮が仲良くなり始める。
そしてまた火を入れては止める。
このあたりからわくわく感が絶好調になってくる。
一日おいてまた前日の作業を繰り返すと
3日目にはワタの部分まで琥珀色になるのです。
これを寒風干し。
ぎゅっと引き締まった肉厚の甘夏ピールができた。
高温でぐつぐつやると出来たては美味しいけれど、
時間が経てばただ甘いだけのピールになりがち。
低温でゆっくりモードだと
フルーティーのふくよかな香りが鼻をぬけ
ほのかな苦みが残る。
アニスシード、キャラウェイシードと合わせて
フルーツフォカッチャに仕上げるなんてすごくいいかも。
こんなに美味しいフルーツピールができても
また来年は違うレシピなんだと思う。
だから私にとってレシピとは今この瞬間を楽しむためのもの。
自身を含め全てのことが
今を楽しみながらどんなふうに変容していくのかを楽しみます。
今年も最高に愉しんで美味しくできた未完成。
それがイイ。