徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

「5類相当」時代の新型コロナ感染対策

2023年10月01日 16時25分27秒 | 小児科診療
新型コロナの感染症法の位置づけが、
2023年5月8日に「2類相当」 → 「5類相当」に格下げされ、
日本全体の感染対策が緩和されました。

それと共に、息を潜めていた病原体達が、
「やっと出番が来た!」
とばかりに猛威を振るっています。

冬の風邪である「RSウイルス」「インフルエンザ」のみならず、
夏の風邪である「プール熱」「ヘルパンギーナ」「手足口病」、
そして新型コロナも潜在的に流行し「第9波」に突入しました。

まあ、これらの現象は予想されたことです。
ただ、規模が大きいため、かぜ薬が品薄になり処方できない事態が発生しています。
ここまでは読めませんでしたね。

回避するには、5月8日以前の感染対策に戻ればよいことは明白です。
しかし一度自由の味を知ってしまった我々は、
なかなか元に戻ることができません。

感染症流行の現状を受け入れながら、
経済活動を元に戻していくのが日本政府の方針です。

さて、ここで立ち止まって、
新型コロナ感染対策を再確認しておきたいと思います。

どこまで感染対策をすればよいのか?
正解はありませんが、
各々の置かれた立場で遵守すべきレベルを考える材料となれば幸いです。

ちなみに小児科開業医である私は、
新型コロナもそれ以外の感染症も押し寄せて集まる場所が職場なので、
現在も感染対策を弛めていません。

こちらの本を参考にしました。

★ 診療所における感染対策の考え方〜新型コロナ5類移行後の対応
 中山久仁子(マイファミリークリニック院長)

 新型コロナウイルスの感染経路
1.飛まつ感染
2.接触感染
3.エアロゾル感染

…従来の病原体と比較して「エアロゾル感染」が加わったことが最大の特徴です。
「エアロゾル感染」とは「飛まつ感染」と「空気感染」の中間の概念です。
飛沫はふつう、すぐに床・地面に落ちて感染力がなくなります(2m離れていれば安全)が、
空気感染は水分がなくなった飛沫の核が長時間漂い、感染源になります。
エアロゾル感染とはエアロゾル(飛沫より小さいが飛沫核より大きい)が、
閉鎖空間ではしばらくの間(数時間)浮遊しているため、
それを吸い込んで感染してしまうのですね。

 医療機関における新型コロナウイルスの感染経路と対策
1.飛まつ感染 → サージカルマスク
2.接触感染  → 手指消毒、手洗い、手袋、ガウン
3.エアロゾル感染  → N95マスク、換気、空間・時間分離

…実は私自身、2022年8月に新型コロナに感染してしまいました。
その頃、乳幼児の新型コロナ患者が多く来院し、
マスクができず、また泣き叫ぶため、飛沫とエアロゾルが飛びまくる状態を想像してください。
当時私はサージカルマスク+フェイスシールドを着用していました。
しかし上記のごとく、
サージカルマスクは飛沫対策にはなっても、
エアロゾル対策としては不十分なのです。
その頃感染したのは当院スタッフの中で私だけでした。
診察介助する看護師スタッフは、
みなN95マスクを着用していたのでした。
…それ以降、診療中はサージカルマスクではなくN95マスクを着用しています。私が得た教訓は、
「エアロゾル感染対策にはサージカルマスクでは不十分、N95マスクが必要」
ということでした。

 一般生活の感染対策
1.飛まつ感染 → サージカルマスク
2.接触感染  → 手指消毒、手洗い
3.エアロゾル対策 → サージカルマスク、換気

…マスクの効果を示したイラストを提示します(忽那先生のサイトから)


※ 不織布マスク=サージカルマスクです。



マスク着用がふつうだった5月8日までは、
ウイルス飛沫量を70%減らせていたのですが、
現在は100%に戻ってしまっていますから、
流行再燃は仕方ありませんね。

新型コロナ感染者が他人にうつす可能性のある期間
①発症2日前から発症後7〜10日間は感染性のあるウイルスを排出。
②特に発症後5日間は他人に感染させるリスクが高い。
③発症後10日間は感染が広がらないように、マスク着用・手指衛生を心がける。

感染した場合の外出自粛
・発症後5日間が経過し、かつ解熱及び症状軽快から24時間経過するまで、
外出を控えることが推奨される。

…現在隔離期間は「症状が出た翌日から数えて5日間」まで短くなりました。
でも上記の通り、その後も感染力は残っていますので、
フリーになったと考えると流行拡大が止まりません。

濃厚接触者の取り扱い
・保健所から新型コロナの「濃厚接触者」として特定されることはない。
・「濃厚接触者」として法律に基づく外出自粛は求められない。
・対応はその施設で個別に判断する。

…医療機関、とくに高齢者施設では感染すると重症化しやすい人が集まっているので、厳しくせざるを得ません。
一方、一般生活者は行動を制限されることがなくなりました。
しかし感染している可能性はあり、無症状期からウイルスを排出して周囲に拡げる可能性も持ち合わせることになり、この点が流行拡大の大きな原因になっています。

 家族が新型コロナに罹った場合は?
・患者の発症日を0日として、とくに5日間は体調に注意して過ごす。
・7日までは発症する可能性を考慮し、手指衛生・不織布マスク着用・換気など、周囲に配慮する。
・その間は高齢者など、重症化リスクのあるヒトとの接触を避ける。
・感染した家族とは部屋を分けて過ごす(空間隔離)。
・体調不良を感じたら集団生活・仕事を休む。

…濃厚接触者扱いがなくなったので、家族が新型コロナを発症しても、行動制限はありません。
しかし感染している可能性はありますので、周囲に拡げないよう、ハイリスク者にうつさないよう、社会常識としての配慮が必要です。

新型コロナの株による特徴の変化
・潜伏期:武漢株6.57日 → オミクロン株3.42日
・重症化までの日数:武漢株7日 → オミクロン株2-3日

 オミクロン株の感染力:基本再生産数(R0)
・季節性インフルエンザ:1.3
・新型コロナオミクロン株:5.5-24

…季節性インフルエンザよりも感染力が圧倒的に強い!

手指衛生の5つのタイミング(医療機関)
①患者に触れる前
②清潔/無菌操作の前
③体液に暴露するリスクの後
④患者に触れた後
⑤患者の周りのものに触れた後

…当院では高濃度アルコールで手指消毒をしています。
患者さんを守るため、そして自分を守るためです。


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