「風邪薬は効かない」という情報が散見されます。
古い薬はいわゆる“エビデンス”が不十分なまま認可された経緯があるからです。
しかし、厚生労働省の許可は下りていますので使っていけないということではありません。
小児科医の中にも「風邪薬は処方しない」という意見の方がいらっしゃいます。
そこでは院外薬局の仕事がなくなり撤退したという話も耳にしたことがあります。
そんな先生方が咳止めとして処方しているのが“はちみつ”です。
食品の“はちみつ”、実は医薬品として登録されています。
効果は以下の通り;
・矯味の目的で、又は丸剤の結合剤、栄養剤として調剤に用いる。
・また、皮膚・粘膜の保護剤として用いる。
・また、皮膚・粘膜の保護剤として用いる。
この中に咳止め効果の記載はありません。
だから“咳止め”としてハチミツを処方することはルール違反で保険診療から外れます。
ただ、彼らの主張では「咳止め効果があったという論文が存在する」とのこと。
それを扱った記事を紹介します。
私も10年以上昔に調べたことがあるのですが、
その論文の協力者にハチミツ業者が紛れ込んでいるため、
客観的な評価はされていないと判断しました。
▢ 病院でもらう咳止め薬よりも断然効果が高い…医師の間では常識「ひどい咳がラクになるスーパーで買える食材」なぜ医師はそれでも「かぜに効かない薬」を出すのか
木村 知:医師
(2025.1.13:PRESIDENT Online)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・
▶ 処方薬と同じ成分、用量であっても効果はほぼ同じ
・・・圧倒的に多い「かぜ」の患者さんについていえば、市販薬が効かない理由は、それが市販薬だからではない。さらに言ってしまえば、医療機関で「かぜ」の患者さんに私たち医師が処方する薬にも、「効く」といえるものはない。
市販の総合感冒薬に含まれている成分を見てみると、解熱鎮痛剤、去痰剤、抗ヒスタミン剤、中枢性鎮咳剤などが一般的だが、これらの市販薬に含まれている成分と、医師が処方する薬の成分はほぼ同じであることが、その理由だ。
最近では解熱鎮痛剤や去痰剤などの用量を処方薬と同じレベルに増やしたものを“売り”にしている商品もあるが、これとて効果はほとんど変わらない。そもそもこれらの成分一つひとつに、症状を緩和させるエビデンスを持つものも、ほとんどないのである。
▶ 咳止め薬を飲むならハチミツのほうが断然いい
たとえば鎮咳薬として処方薬でもよくつかわれる「デキストロメトルファン」(メジコン)は、海外の小児の咳を対象にした研究で、プラセボ(偽薬)と比較しても改善推移、有効性はほとんど変わらないという結果がすでに20年以上前に複数出ているし、むしろハチミツのほうが「効く」とされているのは、医師の間ではよく知られている。
市販薬にはこれよりもさらに「強い」とされるコデインが含まれているものもあるが、市販薬では効かないという患者さんの実感どおり、これとて「かぜ」の咳にはほとんど効かないと考えてよい。
むしろ痰のからんだ咳を薬の力で強力に抑えてしまうことは、それこそ危険だ。咳は炎症によって増えた汚い痰を、体外に弾きだす「生体防御反応」だからである。この重要な咳の反射をこれらの「強い薬」で脳の中枢に働きかけて止めてしまうと、この汚い痰が気管支から体外に排出できなくなってしまうのだ。
「かぜ」であっても、インフルエンザやコロナであっても、多くの患者さんがつらいと言う症状は、このような咳や痰がらみだ。医師としても、なんとかしてあげたいと思う気持ちはあるものの、この生体防御反応と自浄作用とを、薬という人間が作り出した人工物で抑え込むことは不可能だし、そもそも抑え込んではならないのだ。
▶ すべて知っているのに医師が薬を出す理由
それを知りつつ「症状緩和のため」との方便で医師が処方するのが、鎮咳薬であり去痰薬なのである。そして先述したように、その成分は市販薬ともほぼ同じ。むしろ市販薬は、あらゆる症状を網羅すべく各成分が1錠に盛り込まれている「フルスペック」。医師が個別の症状に応じて処方するのを「アラカルト」とすると、市販薬はラーメンでいうところの「特製全部盛り」だ。
つまりいかなる薬にも「かぜ」を早めに治す効果はいっさいないばかりか、症状を緩和させるという効果についても、きわめて怪しいと言えるのである。医療機関で市販薬を凌駕する「かぜ薬」など出てくるはずがないことを理解いただけただろうか。つまり、咳、痰、鼻水といった「かぜ」の諸症状は、薬ではなく時間でしか解消できないものなのである。
医師ならこの事実を当然知っているのだが、医療機関に行けば「かぜでしょうね」との“診断”とともに「ではお薬を出しておきましょうね」と医師は言い、患者さんもその言葉に納得する、という状況が常態化している。
つまり医師は自分が処方する薬が「かぜ」に効かないこと、偽薬と同等のものであることを知りつつ処方しているのである。それはなぜか。もちろんカネ儲けのためではない。たんに患者さんに納得してもらう時間がないからだ。
▶ 「休んでください」と言われて納得する患者さんは少ない
さて読者の皆さんは、本稿をここまで読むのにどのくらいの時間を要しただろうか。そして納得できただろうか。
これまで縷々私が書いてきた内容を、一人ひとりの患者さんにわかりやすい言葉で相手の理解度を確認しながら語り、そのうえで「かぜに効く薬はありません。市販薬も処方薬も成分はほぼ同じ。処方薬のほうが効くわけではありません。かぜの諸症状を改善させるのは薬ではなく、時間です」と説明するには、ゆうに15分はかかる。
しかもこのような説明をされ、いっさい薬を処方せずに帰そうとする医師に納得できる患者さんは、いったいどれくらいいるだろうか。
冒頭でも述べたが、現在発熱外来には非常に多くの患者さんが詰めかけている。患者さん一人ひとりにかけられる時間は1~2分ていど。問診も診察もそこそこに検査し、型どおりの処方をするという流れ作業で人数をさばかざるを得ず、「事実」を患者さん一人ひとりに理解してもらうために、15分もかけていられないというのが実情だろう。
だから「かぜ」と“診断”した患者さんに効きもしない薬をつぎつぎと処方することになっているのだ。驚かれるかもしれないが、そもそも「かぜ」にたいする投薬は、医師の本来の仕事ではない。
▶ 「休むことが許されない社会」を変えるべき
先にも述べたが、「市販薬で治らない」という人のなかには、ときに「かぜ」ではなく抗菌薬の処方が必要な人もいる。私たち医師の本来の仕事は、この一見「かぜ」のように見える患者さんのなかから「かぜ」ではなく、治すための適切な処方が必要な人を見抜くことである。
・・・
「かぜ」を治すのは薬ではなく、時間。休むことこそが治療。「咳を止めないと出勤できないので、咳止めを飲まないと」という、休めない社会構造がもしもあるなら、そんな社会をまず「治す」ことから始める必要があるだろう。
・・・この記事を書いた医師は「風邪に効く薬はない」と嘆いていますが、
私は漢方薬が効くと実感しています。
風邪には数十種類の漢方薬を使い分けます。
風邪の初期・中期・後期・回復期、
風邪の症状である咳、痰、鼻水・鼻閉、咽頭痛、嘔吐、食欲不振、腹痛、下痢、
患者さんの体質である、体力充実、虚弱体質・・・
等々を考慮して使い分けるのです。
選択した漢方薬が患者さんに合うと、確実に効きます。
漢方医学の教科書は約2000年前に完成しました。
その後歴史の波にもまれて、有効な漢方薬が生き残ってきたのですから、
上手く使えば有効なのです。
年末年始にマイコプラズマ感染症が流行し、
薬を飲んでも咳が止まらない患者さんが他の医療機関から流れてきました。
漢方薬の中でも最強レベルの咳止めとされる越碑加半夏湯を処方したところ、
半分以上の患者さんに手応えがあり感謝されました。
ただ、この越碑加半夏湯も乾いた咳(乾性咳嗽)と痰絡みの咳(湿性咳嗽)で内容が異なるのです。
「漢方薬が効かない」という意見は、
漢方薬を使いこなせない医師の言い訳に聞こえてきます。