徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

スーパーで購入できる“かぜ薬”より効く食材

2025年01月25日 08時31分24秒 | 小児科診療
「風邪薬は効かない」という情報が散見されます。
古い薬はいわゆる“エビデンス”が不十分なまま認可された経緯があるからです。
しかし、厚生労働省の許可は下りていますので使っていけないということではありません。

小児科医の中にも「風邪薬は処方しない」という意見の方がいらっしゃいます。
そこでは院外薬局の仕事がなくなり撤退したという話も耳にしたことがあります。

そんな先生方が咳止めとして処方しているのが“はちみつ”です。

食品の“はちみつ”、実は医薬品として登録されています。
効果は以下の通り;
・矯味の目的で、又は丸剤の結合剤、栄養剤として調剤に用いる。
・また、皮膚・粘膜の保護剤として用いる。
この中に咳止め効果の記載はありません。
だから“咳止め”としてハチミツを処方することはルール違反で保険診療から外れます。

ただ、彼らの主張では「咳止め効果があったという論文が存在する」とのこと。
それを扱った記事を紹介します。

私も10年以上昔に調べたことがあるのですが、
その論文の協力者にハチミツ業者が紛れ込んでいるため、
客観的な評価はされていないと判断しました。


▢ 病院でもらう咳止め薬よりも断然効果が高い…医師の間では常識「ひどい咳がラクになるスーパーで買える食材」なぜ医師はそれでも「かぜに効かない薬」を出すのか
木村 知:医師
2025.1.13:PRESIDENT Online)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・
▶ 処方薬と同じ成分、用量であっても効果はほぼ同じ
・・・圧倒的に多い「かぜ」の患者さんについていえば、市販薬が効かない理由は、それが市販薬だからではない。さらに言ってしまえば、医療機関で「かぜ」の患者さんに私たち医師が処方する薬にも、「効く」といえるものはない。
 市販の総合感冒薬に含まれている成分を見てみると、解熱鎮痛剤、去痰剤、抗ヒスタミン剤、中枢性鎮咳剤などが一般的だが、これらの市販薬に含まれている成分と、医師が処方する薬の成分はほぼ同じであることが、その理由だ。
 最近では解熱鎮痛剤や去痰剤などの用量を処方薬と同じレベルに増やしたものを“売り”にしている商品もあるが、これとて効果はほとんど変わらない。そもそもこれらの成分一つひとつに、症状を緩和させるエビデンスを持つものも、ほとんどないのである。

▶ 咳止め薬を飲むならハチミツのほうが断然いい
 たとえば鎮咳薬として処方薬でもよくつかわれる「デキストロメトルファン」(メジコン)は、海外の小児の咳を対象にした研究で、プラセボ(偽薬)と比較しても改善推移、有効性はほとんど変わらないという結果がすでに20年以上前に複数出ているし、むしろハチミツのほうが「効く」とされているのは、医師の間ではよく知られている。
 市販薬にはこれよりもさらに「強い」とされるコデインが含まれているものもあるが、市販薬では効かないという患者さんの実感どおり、これとて「かぜ」の咳にはほとんど効かないと考えてよい。
 むしろ痰のからんだ咳を薬の力で強力に抑えてしまうことは、それこそ危険だ。咳は炎症によって増えた汚い痰を、体外に弾きだす「生体防御反応」だからである。この重要な咳の反射をこれらの「強い薬」で脳の中枢に働きかけて止めてしまうと、この汚い痰が気管支から体外に排出できなくなってしまうのだ。
 「かぜ」であっても、インフルエンザやコロナであっても、多くの患者さんがつらいと言う症状は、このような咳や痰がらみだ。医師としても、なんとかしてあげたいと思う気持ちはあるものの、この生体防御反応と自浄作用とを、薬という人間が作り出した人工物で抑え込むことは不可能だし、そもそも抑え込んではならないのだ。

▶ すべて知っているのに医師が薬を出す理由
 それを知りつつ「症状緩和のため」との方便で医師が処方するのが、鎮咳薬であり去痰薬なのである。そして先述したように、その成分は市販薬ともほぼ同じ。むしろ市販薬は、あらゆる症状を網羅すべく各成分が1錠に盛り込まれている「フルスペック」。医師が個別の症状に応じて処方するのを「アラカルト」とすると、市販薬はラーメンでいうところの「特製全部盛り」だ。
 つまりいかなる薬にも「かぜ」を早めに治す効果はいっさいないばかりか、症状を緩和させるという効果についても、きわめて怪しいと言えるのである。医療機関で市販薬を凌駕する「かぜ薬」など出てくるはずがないことを理解いただけただろうか。つまり、咳、痰、鼻水といった「かぜ」の諸症状は、薬ではなく時間でしか解消できないものなのである。
 医師ならこの事実を当然知っているのだが、医療機関に行けば「かぜでしょうね」との“診断”とともに「ではお薬を出しておきましょうね」と医師は言い、患者さんもその言葉に納得する、という状況が常態化している
 つまり医師は自分が処方する薬が「かぜ」に効かないこと、偽薬と同等のものであることを知りつつ処方しているのである。それはなぜか。もちろんカネ儲けのためではない。たんに患者さんに納得してもらう時間がないからだ。

▶ 「休んでください」と言われて納得する患者さんは少ない
 さて読者の皆さんは、本稿をここまで読むのにどのくらいの時間を要しただろうか。そして納得できただろうか。
これまで縷々私が書いてきた内容を、一人ひとりの患者さんにわかりやすい言葉で相手の理解度を確認しながら語り、そのうえで「かぜに効く薬はありません。市販薬も処方薬も成分はほぼ同じ。処方薬のほうが効くわけではありません。かぜの諸症状を改善させるのは薬ではなく、時間です」と説明するには、ゆうに15分はかかる。
 しかもこのような説明をされ、いっさい薬を処方せずに帰そうとする医師に納得できる患者さんは、いったいどれくらいいるだろうか。
 冒頭でも述べたが、現在発熱外来には非常に多くの患者さんが詰めかけている。患者さん一人ひとりにかけられる時間は1~2分ていど。問診も診察もそこそこに検査し、型どおりの処方をするという流れ作業で人数をさばかざるを得ず、「事実」を患者さん一人ひとりに理解してもらうために、15分もかけていられないというのが実情だろう。
 だから「かぜ」と“診断”した患者さんに効きもしない薬をつぎつぎと処方することになっているのだ。驚かれるかもしれないが、そもそも「かぜ」にたいする投薬は、医師の本来の仕事ではない。

▶ 「休むことが許されない社会」を変えるべき
 先にも述べたが、「市販薬で治らない」という人のなかには、ときに「かぜ」ではなく抗菌薬の処方が必要な人もいる。私たち医師の本来の仕事は、この一見「かぜ」のように見える患者さんのなかから「かぜ」ではなく、治すための適切な処方が必要な人を見抜くことである。
・・・
かぜ」を治すのは薬ではなく、時間。休むことこそが治療。「咳を止めないと出勤できないので、咳止めを飲まないと」という、休めない社会構造がもしもあるなら、そんな社会をまず「治す」ことから始める必要があるだろう。


・・・この記事を書いた医師は「風邪に効く薬はない」と嘆いていますが、
私は漢方薬が効くと実感しています。

風邪には数十種類の漢方薬を使い分けます。
風邪の初期・中期・後期・回復期、
風邪の症状である咳、痰、鼻水・鼻閉、咽頭痛、嘔吐、食欲不振、腹痛、下痢、
患者さんの体質である、体力充実、虚弱体質・・・
等々を考慮して使い分けるのです。
選択した漢方薬が患者さんに合うと、確実に効きます。

漢方医学の教科書は約2000年前に完成しました。
その後歴史の波にもまれて、有効な漢方薬が生き残ってきたのですから、
上手く使えば有効なのです。

年末年始にマイコプラズマ感染症が流行し、
薬を飲んでも咳が止まらない患者さんが他の医療機関から流れてきました。
漢方薬の中でも最強レベルの咳止めとされる越碑加半夏湯を処方したところ、
半分以上の患者さんに手応えがあり感謝されました。
ただ、この越碑加半夏湯も乾いた咳(乾性咳嗽)と痰絡みの咳(湿性咳嗽)で内容が異なるのです。

「漢方薬が効かない」という意見は、
漢方薬を使いこなせない医師の言い訳に聞こえてきます。

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ワクチン反対派の根拠を検証

2025年01月21日 13時48分42秒 | 小児科診療
ワクチン反対派はいつの時代にも存在します。
単なる不安から反対、
非科学的な妄想にとらわれて反対、
はては金儲けのための反対・・・
いろいろなパターンが混在しています。

ワクチン反対派の主張を検証した記事が目に留まりましたので紹介します。

ワクチン反対!を唱えている人たちに記者が取材の申し込みをし、
主張の根拠を尋ねても黙殺されてばかり・・・
反対派の中には医師もいるから始末に悪いですね。

妄想にとらわれた悲しい人々の姿がそこに見え隠れします。


▢ 「コロナワクチンで50万人が死亡」「日本で人体実験している」…反ワク派の主張を専門家と徹底検証した結果
2025/1/18:President ONLINE)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 新型コロナワクチンに関するネガティブな情報が出回っている。その中には、「日本人の超過死亡の大半がコロナワクチン関連死」「mRNAワクチンのスパイク蛋白は毒」「レプリコンワクチン接種者は周囲の人に感染させる」といった科学的根拠に乏しい情報も多い。ジャーナリストの岩澤倫彦さんが取材した――。 
・・・「コロナワクチンは危ない」という反対運動が展開され、SNSなどで拡散された。これによって、ワクチンに対する不信感や忌避感が強まり、接種率が低調になっている影響と見られている。 
 果たして、ワクチンに反対する人々の主張は、信用に値するのだろうか? 
 ワクチン問題に詳しい大阪大学免疫学フロンティア研究センター・宮坂昌之招へい教授の協力を得て、ワクチンに反対する主な主張をファクトチェックした――。 

▶ 「50万人も自国民を殺してるんだよ!」  
 「厚生労働省の職員、出てこい! 人殺し!」 「ワクチン薬害を認めろ!」
 2024年12月、厚生労働省が入る中央合同庁舎に向かって、集まった人々が激しい言葉を浴びせていた。その中には、ワクチン接種後に亡くなった人の家族もいる。 
 騒然とした雰囲気の中、「コロナワクチンが人を殺している」、とプリントされた横断幕が風になびく。ワクチンに反対する抗議活動だった。 
 「50万人も自国民を殺してるんだよ、お前ら分かってんのか、厚労省!」 
 こう叫んだのは、コロナ禍で注目されるようになった長尾和宏医師である。なぜ、「50万人を殺した」ということになるのだろうか?

▶ 超過死亡数の大半はワクチンが原因? 
 後日、長尾医師にメールで質問すると、次の返信があった。 
---------- 過去3年間の日本の「超過死亡数」は、累計40〜60万人。多くの専門家は「大半」がワクチン関連死と推定しています。私自身も「9割以上」と思います。 (※抜粋・要約) ----------
  超過死亡とは、過去のデータに基づく予測値を超えた死亡数を指す。 
 長尾医師が述べた「50万人」は、累計40〜60万人の中間をとったらしい。だが、大半がワクチンによる死亡である、という根拠は示されていなかった。再質問したが、回答はなかった。 

▶ 確かに死亡リスクはゼロではないが… 
 “50万人の超過死亡はワクチンが原因”という主張について、大阪大学免疫学フロンティア研究センター・宮坂昌之招へい教授は、論理が飛躍していると指摘する。 
 「ワクチン接種と超過死亡がよく重なったのは、7回の定期接種のうち1回のみでした。“超過死亡説”が本当なら、接種のたびに超過死亡が起きたはずです。したがって超過死亡はワクチンではなく、新型コロナ感染症によって起きた、と考えるべきでしょう。 
 中東カタールでは、約700万回のワクチン接種が行われ、138人が接種後30日以内に死亡しました。このうち112人はワクチンとの関連は無し、あるいは可能性が低いと判断されています。世界的にワクチンが原因で死亡する頻度は、100万回接種に数回でした。 
 ワクチンは決してゼロリスクではありませんが、接種のメリットとデメリットを冷静に判断する事が必要です」 
 ワクチン接種後、心筋炎が起きるケースが報告されているが、確率は100万回に10回程度で、新型コロナ感染で心筋炎が起きる確率に比べてずっと低いことが分かっている。

▶ 情報不足で評価できないケースが多い 
 2021年に行われたコロナワクチンの第1回と第2回の接種は、いずれも日本人の約8割が受けたが、3回目以降の接種率は低下の一途を辿った。7回目の接種(2023年9月20日から2024年3月31日)は、約14%にとどまった。 
 ワクチン接種後に死亡したケースが、センセーショナルに報道されるたび、恐怖感を覚えた人は多いはずだ。ただし、死亡原因がワクチンだと明確になったケースは、ごくわずかでしかない。 
 ワクチンに関連した死亡者数は2種類ある。1つは医療機関や製薬企業からの副反応疑い報告で、現時点の死亡者数は「2261人」だ(※2024年10月29日の厚労大臣記者会見)。 
 このうち「ワクチンと死亡の因果関係が否定できない」と専門家が判断したのは、わずか「2人」のみ。残りは「情報不足で評価できない」ケースが大半を占める。接種から最大28日間が報告対象なので、ワクチン接種とは関係のない死亡が含まれてしまうのだ。  もう一つが、ワクチン被害救済制度で、国が認定した死亡者数である。厚生労働省の疾病・障害認定審査会によると、2025年1月10日時点で「累計940人」。認定された人の遺族に、死亡一時金と葬祭料が支給された。  ただし、その全ての死因がワクチンと確定したわけではない。「厳密な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象」と厚労省が定めているためだ。 

▶ 接種と突然死のタイミングが重なった可能性 
 なぜ、ワクチンと死亡の厳密な因果関係を、認定条件にしていないのか。その理由について、宮坂招へい教授は次のように解説する。  
日本人は、剖検(※死因を調べる解剖)に抵抗感が強いので、接種後に亡くなった方の大半が死因を特定できません。だからといって、厳密な因果関係が分からない方を救済対象から排除すると、ワクチン接種に国民が不安を抱くことになります。 
 実はコロナ禍の前から、日本では心臓病が原因で年間約9万人、1日あたり約250人が突然死していました。コロナワクチンは短期間に国民の約8割が接種したので、たまたま突然死と重なってしまったケースが多いと考えるのが自然です」 
 断っておくが、筆者は厚労省やワクチンの製薬企業から記事の執筆などで報酬を得たことは一切ない。むしろ、問題点を厳しく追及して疎まれる存在である。

▶ mRNAワクチンのスパイク蛋白は危険? 
 コロナワクチンには、新しいmRNA(メッセンジャーRNA)の技術が使われている。通常の新薬は10年前後の臨床試験を経て承認されるが、コロナワクチンは約1年間で開発されて(※)緊急承認された。そのため、安全性の確認が不十分だという主張がある。 
 ※ mRNAワクチンは、がん治療を目的に約10年前から研究が行われていた。 
 京都大学の福島雅典名誉教授は、コロナワクチンに反対する理由として、「スパイク蛋白の毒性」を挙げた。  「mRNAワクチンのスパイク蛋白が強い毒性を持っていて、血栓を形成して血管が詰まり、ワクチン自体も強い炎症を起こします。同時にワクチンは、全身に行き渡ってスパイク蛋白をいつまで作るか分かりません。ブレーキがない自動車をハンドルなしで走らせたようなものです。スパイク蛋白が毒であることに間違いありません」 

▶ 反対派がスルーする研究論文の特異な条件  
全国有志医師の会」という団体も、権威ある医学誌『Circulation Research』に“スパイク蛋白の毒性”を示した研究論文が掲載されているとして、コロナワクチンに反対している。 
 この主張について、宮坂招へい教授は“重要な点に触れていない”と指摘した。 
 「この研究で用いたスパイク蛋白質の濃度は、ワクチン接種後に体内で検出されるスパイク蛋白質の500倍以上です。現実には起こりえない条件なので“スパイク蛋白質が体内で毒素になる”という主張には論理の飛躍があります。“血管内で炎症が起こった”という記述もこの論文に見当たりませんでした。 
 生体内のスパイク蛋白質は一定時間で消えることは、多くの実験で確認されています。“いつまでも体内に残ってスパイク蛋白が作られる”という主張は、裏付けのない仮説に過ぎません

▶ レプリコンワクチンは「人体実験」?
 現在、65歳以上や基礎疾患のある人を対象に、コロナワクチンの8回目となる定期接種が実施されている(※自治体によって終了時期は異なる)。ネガティブな情報が広まっている影響か、接種率は極めて低い。 
 今回の定期接種では、次世代型mRNAのレプリコンワクチン(商品名:コスタイベ)が、世界に先駆けて承認された。  mRNAが体内で一時的に複製される新しいタイプのワクチンで、既存のmRNAワクチンよりも強く免疫が誘導され、抗体の持続時間が長い。接種後の強い倦怠感や発熱などの副反応も、大きく改善されたという。 
 販売が日本の製薬企業(Meiji Seikaファルマ)なので、今後のパンデミックに備える意義も大きい。 
 だが、このレプリコンワクチンに対して、激しい反対運動が起きている。 
 世界に先駆けて承認されたことを“日本での人体実験”と揶揄、レプリコンワクチンを接種した人に対して、入店拒否や診療拒否の動きまで起きているのだ。 

▶ 「シェディングが起きる」というデマが拡散 
 東京都内のあるクリニックでは、レプリコンワクチン接種者の立入さえも拒んでいるが、医療機関としての適格性を疑う理由を掲げている。 
---------- ・レプリコンワクチンはmRNAの複製が際限なく続く可能性がある ・複製されたスパイク蛋白質が周囲に“シェディング(感染の意)”する ・レプリコンワクチンの接種者は「歩くバイオハザード」 (※クリニックがインターネット上に公開している資料より抜粋・要約) ----------
  “シェディング”という現象は、コロナワクチンでは確認されていない。荒唐無稽なデマだが、SNSなどで拡散された結果、“ゾンビワクチン”という俗称まで付けられた。
  懸念した日本感染症学会などが、シェディングを否定する声明を出したが、一度ついた悪いイメージを払拭するのは難しい。 
 このクリニックでは、ワクチン後遺症の治療と称して、高額な自由診療を行っている。 
 また、「細胞力復活点滴」、「脳神経返り咲き点滴」などの医療機関とは思えない治療や、“がん治療支援”と称して「高濃度ビタミンC点滴」を実施していた。いずれもエビデンスがない、エセ医療である。 
 レプリコンワクチンに反対する一方で、エビデンスのない高額な自由診療を行う姿勢には疑問が残る。クリニックに取材を申し入れたが、拒否された。

▶ 製薬会社が現役の国会議員を提訴した理由 
 コロナワクチンに反対する政治家として、存在感を発揮しているのが、立憲民主党の原口一博衆議院議員(佐賀1区)だ。レプリコンワクチンについて「生物兵器まがい」と発言して、Meiji Seikaファルマから名誉毀損で東京地裁に提訴されている。 
 2024年10月の衆院選では「ワクチンを3回以上打っている国も日本だけ(原文抜粋)」と、選挙公報に記載していた。結果的に原口氏は当選しているので、その主張を信じた人も多かったに違いない。 
 だが、厚労省の調査では、アメリカ、イギリス、ドイツなどでの欧米諸国で少なくても5回以上のワクチン接種が行われ、現在も接種が実施されている。原口氏はどのような根拠で主張したのだろうか?
 事務所に取材を申し入れたが、回答はなかった。 
 HIVを発見してノーベル医学・生理学賞を受賞した、フランスのリュック・モンタニエ博士は「新型コロナワクチンを打てば2年以内に死亡する」と警告していた。今となっては、彼の警告は虚しく響く。(高橋徳・中村篤・船瀬俊介『コロナワクチンの恐ろしさ』〈成甲書房〉より) 
 社会的に高い地位や、素晴らしい肩書きを持つ人の発言が、必ずしも信用に値するとは限らないことを、コロナの時代が教えてくれた。 

▶ 「非専門家」の意見を鵜呑みにする代償 
 厚労省は国民の死因について、毎月5カ月後に公表している。そのデータから、新型コロナ感染症で死亡した人数を2024年と2023年で比較したのが、図表1だ。 
 1月を除いて、2024年のほうが、新型コロナでの死亡が明らかに多い。ワクチンに対する忌避感が広まり、接種率が低下したことが影響している可能性が考えられる。 
 宮坂招へい教授は次のように警鐘を鳴らす。  
「新型コロナウイルスの変異によって、ワクチンの感染予防効果は当初よりも低下しました。しかし感染した場合、ワクチンを接種していない人の死亡率は、接種した人よりも数倍高いことが分かっています。  
 ワクチンに反対する医師の大半は、感染症や免疫の専門家ではありません。接種のリスクだけでなく、ベネフィット(恩恵)についても冷静に判断して下さい」

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インフルエンザ脳症、再襲来!

2025年01月15日 14時59分03秒 | 小児科診療
新型コロナ禍以降、最大級のインフルエンザ流行が猛威を振るっています。
それに伴い、子どものインフルエンザ脳症発生がニュースで流れるようになりました。
紹介する記事でも、地域基幹病院の小児科医師が、
脳炎・脳症の患者がこれほど多いシーズンは経験したことがない
とコメントしています。

診療経験のある私にとって、
「アッという間に命をさらわれる」
という印象の合併症です。
発熱後、1日のうちに進行して意識障害・けいれんが出てきます。
タミフルなどの抗インフルエンザ薬は間に合わないのです。

罹ってからではもう遅い、有効なのはワクチンだけです。

以前にも書きましたが、1990年代後半に多発した頃と今の状況が似ています。
その当時、インフルエンザ脳症を発症すると、
・3割は死亡
・3割は後遺症
・3割は助かる
とされていました。

あれから四半世紀が経過して医療が進み、
現在では死亡率1割未満、後遺症3割未満と改善していますが、
やはり恐い合併症です。


▢ インフル感染原因で子供らに「急性脳症」発症相次ぐ  幼児死亡例や重い後遺症  脳炎も注意
2025/1/11:産経新聞)より一部抜粋(下線は私が引きました);

全国で猛威をふるっている季節性インフルエンザだが、医療現場では感染が原因で「インフルエンザ脳症」などを発症する子供らが相次ぐ。・・・熱が下がった後も意味不明な言動が続くなど症状が悪化するケースもあるとされ、医師らは、迷わず医療機関を受診するよう促している。 

【ひと目でわかる】インフルエンザ脳症を疑って受診する目安 

 

静岡県静岡市の県立こども病院では、インフルエンザの流行に伴い、昨年12月中旬から、発熱してけいれんや意識障害での救急搬送が増加している。小児救急輪番日では一晩で4~5人が運ばれてくるとし、インフルエンザ脳症の症状の有無を慎重に評価する。 

▶ 基礎疾患なく
 小児感染症科の荘司貴代医長によると、運ばれてくる多くは短時間でけいれんが止まる「熱性けいれん」。だが、けいれん後に意識が戻らない、もしくはけいれんが続いて呼吸状態も不安定になる場合は中枢神経合併症を疑われ、緊急で処置が始まる。先月中旬から今月6日までに乳幼児3人がインフルエンザ脳症と診断され、うち幼児1人が死亡した。 幼児は生来健康で、ワクチンは未接種での初感染だった。ウイルスから体を守ろうと、免疫が過剰反応し、脳が急激にむくみ血液循環の悪化で脳の一部が壊死する「急性壊死性脳症」だった。インフルエンザ脳症の中でも重症で死亡率が高く、後遺症が出ることが多いという。 
 国立感染症研究所のまとめによると、昨シーズン(令和5~6年)のインフルエンザ脳症の患者数は189人(昨年10月8日まで)で、少なくとも8人が死亡。元~2年は患者が258人、死亡が16人だった。 荘司氏はインフルエンザで療養中に受診する目安として、
・けいれん
・意味不明な言動
・異様に興奮している
―といった神経症状などを挙げ、「インフルエンザでは高熱でうわごとを言う熱せん妄が出やすいが、解熱剤を使っても持続する場合は迷わず受診してほしい」とする。
 
▶ 通常診療に影響
 治療の緊急度が高いインフルエンザ脳症患者が急増している影響で、小児集中治療室(PICU)で神経機能を検査する脳 波計などの検査機器が占有され、通常の予定されている診療が難しくなってきているという。
 加えて、感染症の治癒過程でウイルスに免疫が過剰に反応するなどし、中枢神経に炎症が起きて歩行障害などが出る「急性散在性脳脊髄炎」などの脳炎の患者も多く、荘司氏は「脳炎・脳症の患者がこれほど多いシーズンは経験したことがない。機器もマンパワーも足りていない」と訴える。
 さらに、総合診療科の入院患者の半数がインフルエンザによる肺炎や喘息(ぜんそく)などの症状で、家庭内感染が目立ち、ほぼ全員がワクチン未接種だという。荘司氏は「多くの患者が入院しているが、ワクチンを接種した方の重症化はまれだ。チャンスがあればワクチンを打ってほしい」と話した。


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コロナ対策は効果があった?なかった?

2025年01月14日 15時27分55秒 | 小児科診療
こちらの動画で検証していました。
解説は愛知県立医大の清水宣明先生。
「飲食店の感染対策が解除されずにずっと続けてしまったのは罪深い」
とコメントしています。

▶ 手指のアルコール消毒は無意味だった。
・環境の表面などにウイルスがついていてそれを触ることによって、
 口や目に持っていって感染してしまうことは、
 まず確率的に考えられない。
・新型コロナウイルスが接触感染することは確率的に考えられない。
・常識的な手洗いや消毒はエチケット的によいと思うが、
 コロナに特化した過剰な消毒など必要なかった。

▶ パーティションは無意味だった。
・新型コロナ感染はパーティションやシールドでは止められない。
・新型コロナ感染は、最初「飛まつ感染」だと言われたが、
 その後さらに細かい粒子の「エアロゾル」による空気感染であることが判明した。
・エアロゾルはパーティションでは止められないこと、
 アクリル板が空気の流れが妨げられ、逆にウイルス滞留時間を長くした可能性が実験で明らかになった。

・・・パーティションは無意味だったと私も理解していますが、
手指のアルコール消毒はどうでしょう?

接触・飛沫感染する病原体に対する手指消毒は感染対策の基本です。
動画に登場する医師は、
「コロナは接触・飛まつ感染よりエアロゾル感染がメインである」
と言いたかったのかもしれません。

ここではマスクに言及していません。
マスクはエアロゾル〜空気感染対策として換気と共に最強です。
一般の方が使用している布マスクやサージカルマスク(不織布マスク)は目が粗いので限界がありますが、
それでも感染リスクを確実に下げてくれます。

私は小児科医として日々コロナやインフルエンザ患者と対峙していますが、
サージカルマスクを常用していても時に風邪をもらってしまいます。

私自身がコロナに感染してから、
サージカルマスクをN95マスクに変更しました。
それから数年、風邪を一回も引かずに診療を続けています。




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インフルエンザにかかる人・かからない人の違い

2025年01月11日 06時15分15秒 | 小児科診療
インフルエンザが猛威を振るっています。
12月中はA型が中心、年が明けてからはB型も出現。
おそらくこれから、学級閉鎖が相次ぐと思われます。

また、小児の重症例もニュースで報道されています。
私も昨年末、インフルエンザ脳症患者さんを救急車搬送しました。

その際、1990年代後半を思い出しました。
インフルエンザワクチン定期接種が中止され、
小児のインフルエンザ脳症、高齢者施設での死亡例が社会問題になりました。

今シーズンは、新型コロナ禍が一旦落ちついて感染対策が緩み、
インフルエンザワクチンに対する関心が低く接種率も低い・・・
1990年代後半の再来になるのではないかと懸念していましたが、
残念ながら予想が当たってしまいました。

さて巷には、
「何も対策をしていないけど、インフルエンザに罹ったことがない」
という人がたまにいます。

インフルエンザ患者さんをたくさん診療している医師も、
「なぜ罹らないんですか?」
と聞かれることも時々あります。

そんな謎に答える記事が目に留まりましたので、紹介します。

<ポイント>
・感染しても発症しない人。初期の免疫である“自然免疫”が強力な人。これは抗体を産生する“獲得免疫”とは異なる免疫能力である。
・“自然免疫”は基本的には持って生まれた生物多様性の一つ。後天的には、運動しながら規則正しい生活と良いタンパク質を摂ることで、ある程度日常から免疫力を上げていくということはあり得るが、それがウイルスを防御できるかどうかは別の問題。
・医師の養生法の例:『移動するたびに手を洗う』『診察ごとに飲み物を飲む』『海藻・きのこ等を食べて腸活する』『高速でぶくぶくうがい』

・・・風邪を引かない人は、持って生まれた“自然免疫”が強力である、という結論ですね。
よく通販やTV番組で「免疫力アップ」を謳った商品や健康法が紹介されますが、
まあ「やらないよりまし」くらいに捉えた方がよさそうです。

ちなみに私の感染予防法は、
・手指消毒:患者さんの触れる前後でアルコール消毒あるいは手洗いをしています。
・マスク:サージカルマスクを装着していたのにもかかわらずコロナに感染したので、それ以降はN95マスク(密閉して息が苦しくなる医療用マスク)を装着しています。変更してから数年間、1回も風邪を引いていません。

文中に受験生の対策や学校での感染対策も出てきますが、
皆さん、コロナ流行中の感染対策を思い出してください。
数年間、インフルエンザの流行はありませんでした。

あのくらい(生活に支障が出るくらい)感染対策を徹底すると、
インフルエンザには罹らないことを証明してくれました。
ただ、振り返ると無駄な対策(アクリル板、レストランでの手袋など)もありました。
今は、その教訓・エッセンスを活かす時です。


▢ 「インフルにかかる人・かからない人の違いは?」「医師はどう予防?」
〜インフルエンザの疑問を専門家に聞く【ひるおび】
2025/1/10:TBS NEWS)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・
Q.  同じ予防をしていても、インフルエンザにかかる人とかからない人がいるのはなぜ ? 
A.  免疫力の強さやワクチンの有無、疲れや睡眠などの体調による。
 インフルエンザのウイルスは、口や鼻などから侵入し、喉の粘膜に定着します。このとき、免疫力が低いとウイルスが増殖して発症しますが、免疫力が高いと増殖せずに発症しないのです。 

恵俊彰:  家族で同じ環境で過ごしていても、パパはかかるけどママはかからないとかあるもんね。 この免疫力っていうのはどうやってわかるんですか?「元気」とは違うんですか? 
東邦大学 小林寅喆教授:  違いますね。
 発症しないというのは「自然免疫」という初期の免疫が非常に強いケースなんです。 後で抗体ができて免疫力が上がるのではなくて、最初から入ってきた病原体をうまく抑えることができる免疫を持っている人がいるんです。 
コメンテーター 眞鍋かをり:  それは普段の頑張りなんですか?それとも持って生まれた・・・ 
小林寅喆教授:  基本的には持って生まれた生物多様性の一つだと思います。 後天的には、多少度合いの問題ですけども、運動しながら規則正しい生活と良いタンパク質を摂ってというような形で、ある程度日常から免疫力を上げていくということはありますただそれがウイルスを防御できるかどうかはちょっと別の問題になってくる、難しい話です。 コメンテーター 眞鍋かをり:  かかりやすいからといって普段不摂生なんだって反省しなくてもいいんですね。よかった… 

Q.  毎日多くの患者を診察する医師は、どう予防している? 
・・・
東邦大学 小林寅喆教授 ⇒『移動するたびに手を洗う』 
ひなた在宅クリニック山王 田代和馬院長 ⇒『診察ごとに飲み物を飲む』 
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長 ⇒『海藻・きのこ等を食べて腸活する』
すずらん歯科矯正歯科 照山裕子院長 ⇒『高速でぶくぶくうがい』 

小林寅喆教授:  手を洗うのはもう基本です。 流行期には、どこかを触るということはたくさん人が触れている場所に自分の手が触れるわけですから、やはり外へ出たときには必ず手を洗う。 基本的に手が鼻・口にいかなければいいので、一番のリスクは食事をするときには一番触れやすいので、そこはもう必ず手を洗う。それと人混みに行ったときには必ず手を洗うことです。 

田代和馬院長:  喉の粘膜を乾燥させてしまうと、そこが脆弱になって菌やウイルスが入ってきやすくなる可能性があります。 本当に僕らもしょっちゅう言われるんですよね。これだけ診ているのになんでかからないんだって。やっぱりプロは自分の身を守れてこそプロ。小林先生がおっしゃるように侵入経路を防ぐ基本的な対策をしています。 田代院長によると、「口の中が汚いとばい菌が増えてしまい、インフルエンザ後の肺炎のリスクが高まると言われている。口の中も綺麗に保つことは大切」。 そこで有効なのが、歯科医の照山院長も行う『高速ぶくぶくうがい(毒出しうがい)』です。 

≪毒出しうがいのやり方≫ 
〔1〕口に含んだ水を上の歯に向けて強く早くぶつけ、10回ぶつけたら水を吐き出す
〔2〕同じように下の歯、右の歯、左の歯にぶつけるようにうがいを行う。 
※口に含む水は30ml(ペットボトルの蓋2配分)程度 

Q.  ワクチンを接種したのに40℃の高熱が・・・ワクチンは意味がない? 
A.  インフルエンザ以外の風邪も同時にり患している可能性がある 

Q.  去年10月にワクチンを接種、まだ流行しているので2回目を受けたほうがいい? 
A.  基本的に1シーズン1回の接種でいい。
ワクチンの効果の期間を見ると、接種から1か月ぐらいで最も有効性が高くなり、そこからゆっくりと落ちていきます。大体5が月ぐらいが目安だということです。
小林寅喆教授:  3、4か月ぐらいから緩やかに落ちていきますので、インフルエンザの1シーズンは基本的には乗り越えられるだろうと。ですから、1と0という関係じゃなくて、どれぐらい残っているかによって防御効果を発揮するかを考えます。 

Q.  来週末に大学共通テスト 勉強する環境はどうすればいい? 
◆ 室温は20℃以上 
◆ ひざ掛けなどで体を冷やさない工夫をする 
◆ 加湿器などで湿度を50%以上にする 
◆ こまめな水分補給をする 
◆ あめなどでのどを潤す 

教育アドバイザー 清水章弘: 換気はどうですか? 
小林寅喆教授:  基本的には風邪、コロナ、呼吸器疾患全て、やはり換気は非常に重要ですので、ある程度の時間をあけて空気を入れ替えてまた暖かくして湿度を保つ。これは基本ですね。 
田代和馬院長:  やはり加湿をして、空気中のウイルス飛沫、ウイルスの塊に水分を含ませて重くして下に落とすとか、あるいは換気して外に流す。そうしたこまめな基本的な対策が受験生を守り、本番で十分実力を発揮していただくことにつながると思います。 

田代和馬院長に学校での感染対策を聞きました。 
◆ ワクチンの接種率を上げる 
◆ 休み時間に換気をする 
◆ 人混みではマスクを着用する 
◆ 体調が悪いときは無理して学校に行かない 
◆ 食事前・トイレの後は石鹸を使って手を洗う 
◆ 給食やお弁当は間隔を空けて食べる 

田代和馬院長:  一番重要なのは私はワクチンの接種率だと思っています。 やはり集団でインフルエンザが一番広がりやすいので、そこでの集団免疫を高めておけば感染拡大を防ぐのに効果的ですし、それこそお弁当の時間にわざわざ前を向いて食べる必要性も低くなっていくと思います。 発症を予防する効果ももちろんありますけど、重症化を予防したり感染拡大を抑える、そういった効果まで含めて行うのがワクチンですので。 
恵俊彰: 今からでも間に合うんですか? 
田代和馬院長: (免疫ができるまで)2週間ぐらいかかると言われています。 まだまだ流行る時期だと思いますので、今からでも打っていない方は打たれてもいいのかなと思います。
小林寅喆教授:  論文で、ウイルスはやっぱり高温多湿で早く死んでいくというデータがきちんと出ていますので、温度を上げながら湿度を高くするということが非常に重要なポイントです。 今おっしゃったように、ワクチンを打って、あとは環境を整えて乗り越えていくことがやはり大事な点だと思います。 
(ひるおび 2025年1月9日放送より)

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