徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

子どもの花粉症、急増中!

2025年02月15日 16時14分06秒 | 小児科診療
先日、「8歳児の6割がスギ花粉症(山梨県)」という記事を書きました。
もう一つ、わかりやすい解説記事を紹介します。

子どものスギ花粉症患者さん、1998年には7%だったものが、20年後(2019年)には30%と3倍以上に増えている事実は衝撃的です。
その先に山梨県の60%があります。
日本の花粉症の急増・・・ど、どうなってしまうのでしょう?

この記事は、子どもへの点鼻・点眼の説明もされていて親切ですね。

それからスギ花粉症に対する「舌下免疫療法」にも言及しています。
この治療法、人気が出て薬(実際に手作業で集めたスギ花粉を加工して作る)が足りなくなり、
現在新規開始は制限中、つまりできない状態です。

製薬会社から「2025年10月頃再開予定」との情報提供がありました。
興味のある方は、10月頃に検索してみてください。


▢ 子どもの花粉症が増加 治療薬の正しい使い方 塗り薬も…リンゴを食べたら口や喉にかゆみや腫れが出ることも
 坂本昌彦(小児科医)
2025年2月12日:読売新聞)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・
▶ もはや珍しい病気ではない
 スギ花粉の増加に伴い、子どもの花粉症も増えています。2019年に行われた「鼻アレルギーの全国疫学調査」によると、特に5~9歳では、スギ花粉症の有病率が、
1998年:7.2%
2019年:30.1%
ーと、大幅に増えています (1) 。小児科でも花粉症の子どもを診察する機会が増えており、もはや珍しい病気ではありません。
 子どもの花粉症の原因として最も多いのはスギですが、ヒノキや、カモガヤ、ブタクサといった雑草の花粉も症状を引き起こすことがあります。スギ花粉症が春に多い一方で、他の花粉症は初夏や秋にも発症するものもあるため、1年を通じて症状に悩む場合もあります (2) 。
 花粉症はアレルギー性鼻炎の一種で、遺伝の要素も関係していますが、それだけではありません。例えば、ぜんそくやアトピー性皮膚炎など他のアレルギー疾患がない子どもでも、突然、花粉症になることがあります。これは、環境の影響も大きいと考えられます。
一番つらいのは「鼻づまり」
 花粉症の症状には鼻水、くしゃみ、目のかゆみなどがありますが、子どもが一番つらいと感じるのは「鼻づまり」だというアンケート調査が報告されています (2) 。子どもの 鼻腔は大人より狭く、軽い症状でも詰まりやすいためです。花粉症の症状が続くと、集中力の低下や睡眠の質が悪くなることにもつながります。 
 さらに、体育の授業や部活動などで外に出る機会が多い子どもは、花粉に触れる頻度が増えます。これによって、運動パフォーマンスが低下し、思うように成果を出せなくなることもあります。このように、花粉症は子どもの日常生活や学業に大きな影響を与える病気なのです。

▶ 内服薬
 花粉症の治療の中心は薬です。症状の種類や強さに応じて、内服薬、点鼻薬、点眼薬などを組み合わせて使用します。それぞれの薬には特徴があり、使い方や注意点を理解しておくことが重要です。
 内服薬としては、抗ヒスタミン薬を処方することが多いです。その際には、学習面の影響も考慮し、鎮静作用が弱く、眠気や集中力低下などの副作用が少ない「第2世代抗ヒスタミン薬」を処方することが多いです。ただ、効果が出るまで少し時間がかかることがあります。そのため効きにくいと感じる方もいますが、毎日飲み続けることで症状をしっかり抑えられるようになります。
 また、花粉症の薬を「症状がよくなったら、すぐやめてもいい」と思う方もいますが、それは間違いです。薬が効くまで少し時間はかかりますが、効き始めるとしばらく効果が続くので、毎日使うことで症状が改善しやすくなります。そのため花粉が飛散する前から、早めに服用することで症状を抑え込めます。ただし、薬の効き方は人それぞれです。お子さんに合う薬、合わない薬もありますので、気になる場合には遠慮せず医師にご相談ください。

▶ 点鼻薬
 鼻に使う薬の中で、最初に選ばれるのは「ステロイド点鼻薬」です。この薬はとても効果が高いのですが、体にほぼ吸収されないため、副作用がほとんどありません。ただし、効果が出るまでに1~2日かかることがあり、毎日使い続けることでだんだん効いてきます。そのため、使い始めたばかりの時に「あまり効かない」と思って途中でやめてしまう人もいます。また、この薬には独特のにおいや味があり、それが苦手と感じる人もいます (3) 。
正しく使うためのポイントとして、以下のことが挙げられます (4) 。

〈1〉薬を使う前に、鼻をしっかりかんでおく。
〈2〉下を向き、ノズルを鼻の穴に差し込んで、左右の鼻に薬を1回ずつスプレーする。
〈3〉薬をスプレーした後は顔を少し上に向け、鼻からゆっくり息を吸って、口から吐き出す。
〈4〉スプレーした後、しばらくの間は鼻をかまない。

▶ 点眼薬(目薬)
 目のかゆみがひどいときは、抗アレルギー薬の目薬を使うことがありますが、中には目薬が苦手なお子さんもいます。
〈1〉さすコツ
 目薬をさすとき、目を開けたままではなくても大丈夫です。まず、子どもに「大丈夫だよ」と声をかけてリラックスさせ、目を閉じてもらい、下まぶたを軽く引っ張って「あかんべえ」の状態にします。その状態で、目の中に1滴、目薬を落とします。このとき、子どものまぶたは軽く閉じたままでOKです。強くまぶたを閉じてしまう子には、「痛くないよ」と優しく伝えて、不安を取り除いてあげてください。
 それでも嫌がる場合は、子どもをあおむけに寝かせて、まず目の周りを清潔にしてから行います。次に、目頭(目の内側のくぼんでいるところ)を押さえ、そのくぼみに1滴、目薬を垂らします。すると、子どもが目を開けたタイミングで薬が自然に目に広がります。
〈2〉保管方法
 目薬は、一度開けたら1か月以内に使い切ることが大切です。長く保存すると、雑菌が増えることがありますので注意してください。また、冷蔵庫で保管しても使用期限は変わりません。冷蔵庫に入れた目薬は冷たくて、さすときに刺激になることがあるので、できるだけ室温で保存するのがよいでしょう。

▶ 塗り薬も登場
 昨年から、1日1回まぶたの上に塗る「エピナスチン眼瞼クリーム」が登場しました。このクリームは、まぶたに塗ると1日効果が続き、塗ってから数時間で目全体に薬がしみ込みます。寝る前に塗れば、翌日起きた後も1日効果が続くので、目薬が苦手なお子さんにも使えます。気になる方はかかりつけ医とご相談ください。

▶ 「舌下免疫療法」の始め方と注意点
 最近、日本では、国内でスギ花粉症と診断された患者さんに対して「舌下免疫療法」が行われるようになり、保険適用となっています。これは、体をスギ花粉(アレルゲン)に慣らすことで症状を和らげ、根本的な体質改善を目指す治療です。治療薬はスギ花粉のエキスを錠剤にしたもので、1日1回舌の下に投与します。
 これを続けていくと、スギ花粉に対して体が過剰に反応しなくなります。つまり、スギ花粉を無害と認識するようになり、花粉症の症状が出なくなります。数年間にわたり(3年以上が推奨)継続して服用する必要がありますが、成人同様子どもでも十分な効果があり、くしゃみや鼻水、目のかゆみなど花粉症の症状を改善することができます。
 ただし、スギ花粉が飛んでいる時期に治療を開始すると、治療薬のスギ花粉エキスと飛散している花粉が足し合わさり、多くの花粉エキス(アレルゲン)が取り込まれることになります。そのため副反応が強く出るリスクが高くなります。治療はスギ花粉の飛散が収まってから開始します。
 なお、治療開始当初に口内炎や口の中のかゆみなどが生じることがありますが、この症状は続けるうちになくなっていきます。基本的には安全な治療法ですが、まれに強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こる可能性もあるため、治療は舌下免疫療法の専門の知識を持った医師が行う必要があります。

▶ 舌下免疫療法をやる? やらない? 迷った時は?
 2018年から治療の年齢制限がなくなりましたが、実際には5歳以上のお子さんが治療を受けることが多いです (5) 。治療を3~5年ほど続けると、その後も長期間効果が続くことが分かっています。
 なお、舌下免疫療法を始める目安として「とにかく毎日、舌下免疫療法をしてでもこの症状を何とかしたいと思っているか」が判断材料の一つです。薬を毎日続けるのは大変なことですが、それでも治療したいかどうかを本人とご家族でご相談いただければと思います。わからないことは小児科で相談してください。

▶ 果物でかゆみや腫れが起こることも
 花粉症の人が特定の果物や野菜を食べた際、口や喉にかゆみや腫れなどのアレルギー症状を引き起こすことがあります。これを「花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)」と呼びます。
 例えば、シラカバやハンノキの花粉症を持つ人が、バラ科の果物(モモやリンゴなど)を食べると症状が出る場合があります。それらの果物には、花粉症の原因となるたんぱく質と似たたんぱく質が含まれているからです。ちなみに、このたんぱく質は加熱に弱いという性質があるため、生の摂取では症状が出ても、ジャムやアップルパイなど加熱したものでは症状が出なかったりすることもよく経験します。子どもの花粉症が増えるにつれ、このアレルギー症状も増加しており、注意が必要です。・・・


〈参考文献〉
(1) 松原篤ほか.鼻アレルギーの全国疫学調査.日本耳鼻咽喉科学会会報.2020;123:485-90.
(2) 大久保公裕.インターネットを用いたアレルギー性鼻炎患者に対するアンケート調査結果.アレルギー・免疫.2004;11:100-15.
(3) 宮之原郁代.アレルギー性鼻炎治療における鼻噴霧用ステロイド薬の新たな位置づけ.日本耳鼻咽喉科学会会報.2020;123(1):30-5.
(4) 上荷裕広.【アレルギー疾患-最新治療と生活からの視点】アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜疾患 花粉症の薬物療法における服薬指導.小児科診療.2023;86(秋増刊):144-9.
(5) 日本アレルギー学会.SLITの施行法.アレルゲン免疫療法の手引き.2022:21-3.

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